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パプアニューギニアのコーヒー産地を視察しました

産地周辺からの「エリンバリ山」の風景。コーヒ-の名称は山の名前に由来します

このほど、消費材のコーヒー「パプアニューギニア エリンバリ」の提携生産者・日東珈琲株式会社のスタッフと生活クラブ組合員を中心とする訪問団がパプアニューギニアを訪れ、コーヒー豆の農場や加工場を視察しました(4月21~28日)。視察に参加したのは日東珈琲のスタッフ2名と生活クラブ連合消費委員会(*)の組合員3名に事務局も含め総勢9名。産地のコーヒー豆製造販売会社「コンゴ・コーヒー社」や生産農家のみなさんと交流を深めました。

提携生産者が産地の地元企業から直接輸入する消費材のコーヒー「エリンバリ」。生活クラブの組合員が共同購入することで、確かな品質のコーヒーを適正な価格で買えると同時に、産地の小規模農家を中心とした地域コミュニティーの暮らしを支えることにつながっています。

(*)生活クラブ連合消費委員会:各地の生活クラブ生協で消費材の利用呼びかけ活動を担う組合員リーダーで構成されます。生活クラブ連合会の消費材政策の全般に渡って討議し活動方針を具体化する委員会です。

海外産品でも生産と流通過程を明確に

収穫した生豆を選別する農家のみなさん

一般的には、コーヒー豆は多数の事業者の介在で流通していて、消費者にとっては豆そのものの産地やその実情などは分かりづらい商品です。しかし生活クラブでは、複雑な流通経路をとらず、豆の産地や流通経路も明らかにできる品質の高いコーヒー豆を共同購入しています。特に「エリンバリ」は、提携生産者の日東珈琲が産地のパプアニューギニア現地の製造販売会社から直接輸入し、高品質な原料豆を生産するのも現地の小規模農家である点で、一般市場の多くの製品にくらべて稀少なコーヒー豆だと言えます。

住民の暮らしを支えるコーヒー豆作り

小学校の子どもたちとも交流。コンゴ・コーヒー社と日本企業の支援で設立された小学校です

日本から飛行機で南に約6時間半、赤道付近に位置する島国、パプアニューギニア。かつてのイギリスの植民地パプアとドイツの植民地ニューギニアが統一してできた国です(1975年独立)。昔の植民地時代、当時のドイツ領ニューギニアに住んでいた人たちによってコーヒー栽培が島に持ち込まれました。

かつては、ほぼ全てのコーヒー豆が外国人所有のプランテーションで栽培されていました。やがて農園で雇われていたパプア人がコーヒーを庭に植え、独自にコーヒー豆を作り始めると、次第に小規模生産者が増加しました。今ではコーヒ豆生産者の約88%が現地住民による小規模生産者、約12%がプランテーションとなりました。

現在でもパプアニューギニアでは、国民の多くが自給自足に近い生活様式で暮らしています。しかし医療や教育には現金も不可欠なため、コーヒー豆の販売を通じて得られる収入が地域住民の生活を支えています。

地元企業「コンゴ・コーヒー社」を訪問

コンゴ・コーヒー社 レイ支店を訪問

今回の視察では、パプアニューギニア内陸部の街、チュアベにあるコンゴ・コーヒー社の工場と周辺の生産農家を訪問しました。同社は高品質のコーヒー豆「エリンバリ」のブランド化に成功した地元企業です。パプアニューギニアの輸出向けコーヒー業者の8割は多国籍企業で、上位4~5社が寡占している状態だということですが、コンゴ・コーヒー社は唯一地元の住民が経営する事業体で、パプアニューギニアのコーヒー豆シェア5~8%にあたる量を取り扱っています。

消費材の「コーヒー(豆・粉)・パプアニューギニア エリンバリ」は、日東珈琲が原料豆の「エリンバリ」をコンゴ・コーヒー社から直輸入して焙煎加工し製品化、生活クラブの消費材として組合員に届けられます。「エリンバリ」はチョコレートのような香りと酸味、程よい甘さが舌に残ると評されます。最高級コーヒーとして、年間3コンテナ分が日東珈琲に供給されています。

コンゴ・コーヒー社の社長であるジェリー・カプカさんは次のように語りました。「昔は小規模生産者の作る豆は、プランテーションのものより安く買い叩かれていました。フェアでない取り引きだと感じ、農家への生産指導や設備を充実させてコーヒー豆の品質を高めてきました。今『エリンバリ』は最高級のコーヒーとして日東珈琲に適正な価格で供給しています。生産農家にもプレミアム価格を支払うことができて、品質を高める意欲につながっています。地域コミュニティーにもお金が回り大変感謝しています。会社としても、地域住民がテレビを見られるようにアンテナを設置したり、学校や教会に寄付をするなど貢献しています」

集荷ポイントに生豆が集められます

コンゴ・コーヒー社の工場には、「チェリー」と呼ばれる熟したコーヒーの実、皮と果肉を剥いた後に水分調整をした豆「パーチメント」の2種類が搬入されます。視察時には、ちょうど「チェリー」の納品に訪れた農家があったため、パーチメントに加工する工程もその場で見学できました。

工場内での生豆の天日干し作業

コンゴ・コーヒー社の検査室。試飲して品質を確かめます

コーヒーの試飲も行ないました。粉の状態を見て熱湯を注いだ後、スプーンでかき混ぜ上澄みを除去、それぞれの工程で香りを確認します。最後にスプーン1杯のコーヒーを吸い込みながら、口の中に広がった味と香りを確かめました。

森の中で栽培されるコーヒーの木

さらにチュアベ区の生産者、ジョージ・ペケさんの農場を視察しました。雑木林の間に約5千本のコーヒーの木が植えられていて、除草剤は一切使いません。ご夫婦の2人だけで栽培から収穫まで全てを手作業で行なっています。現地の小規模生産者ではごく普通のことだそうです。

持続な可能な生産を通じた地域の発展に期待

コンゴ・コーヒー社の社長、ジェリー・カプカさんと記念撮影
連合消費委員会の増田さん(生活クラブ東京)、福住さん(生活クラブ千葉)、大久保さん(生活クラブ神奈川)

現地を離れるにあたり、訪問団の生活クラブ連合会・福岡良行専務理事は「地域への支援活動に共感しました。持続可能な生産に期待するには地域の発展が重要です」と感想を述べました。これに対してコンゴ・コーヒー社のカプカ社長は「パプアニューギニアに訪問してくれて、ありがとうございます。日本人の訪問はすでに地域に口コミで広がっています」と謝意を表明するとともに、「今後、エリンバリを持続可能なコーヒーにするためにも、一層努力していきたい」と抱負を述べました。

今回の視察では、「エリンバリ」を適正な価格で共同購入することによって、コーヒー豆生産に携わる人々のくらしと社会の支えになっていることがあらためて確認できました。コーヒー豆に限らず、将来にわたる持続的な生産を支えるためには、生産者のくらしを支える適正な価格の保証が重要です。複雑な流通経路を避け、生産者と組合員が互いに協力しあうことで品質の高い消費材を手に入れる生活クラブの共同購入は、こうした点でも意義ある取り組みなのです。

訪問団一行とコンゴ・コーヒー社スタッフ、地域の子どもたちと

【2018年6月5日掲載】

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