【放射能検査なるほどコラム】「ゲルマニウム半導体検出器」って どんな機械?どう使ってるの?
2016年度から生活クラブに導入された新しい放射能測定器「ゲルマニウム半導体検出器」について、いろいろな角度からご紹介していきます。
精度の高い検査が可能な「ゲルマニウム半導体検出器」
生活クラブでは6台目の放射能測定器となる「ゲルマニウム半導体検出器」。既存の5台の測定器(NaIシンチレーションカウンター、CsIシンチレーションカウンター)とはしくみの異なる、非常に精度の高い放射能検査ができる機械です。このゲルマニウム半導体検出器は、ゲルマニウム半導体に放射線が当たると流れる電気を測るしくみで、放射線のエネルギーを正確に測定できるのが大きな特徴。自然界に元々存在しているウランなどの放射性物質から出る自然放射線と、原発などによる人工放射線を完全に識別して測定できる機械です。
検出下限目標値の厳しい食品をゲルマニウム半導体検出器で検査
このゲルマニウム半導体検出器は、生活クラブ連合会の検査室(大宮)に配備され、6月から検査を開始しています。ではこの機械では、どのような食品の検査を行っているのでしょうか。
生活クラブでは2016年4月から、放射能の自主基準値を大幅に引き下げ、同時に検査の精度をあらわす検出下限値の目標を公開しました(コラムVOL.1参照≫)。この中で、検出下限値の目標を1Bq/kgともっとも厳しく設定している「すくすくカタログ掲載食品(乳児用食品含)」「飲料水」「牛乳(原乳)」「米」は、基本的にすべてこのゲルマニウム半導体検出器で検査を行います。また、検出下限値の目標が次に厳しい2.5Bq/kgの食品の多くも、ゲルマニウム半導体検出器で検査しています。
2016年4月からの生活クラブ放射能新自主基準と検出下限目標値
1)飲料水には、国の基準と同じ「緑茶」だけでなく、「麦茶」や「抹茶」などの茶類を含みます。
2)旧基準の「乳製品②」を「乳製品①」に結合し、新基準の「乳製品」とします。
3)新基準の「青果物」には、「生椎茸」を除く「きのこ類」を含みます。
4)検出下限値を目標としている理由は、測定する消費材の比重等により、検査結果にバラつきが生じるためです。
厳しい検出下限値での検査でもより短い時間で測定が可能
ゲルマニウム半導体検出器による検査に必要な時間はどれぐらいかというと、検出下限値1Bq/kgで測る検体の場合は、2ℓの容器を使い約1時間かかります。検出下限値2.5Bq/kgの場合なら、2ℓの容器で約20分となります。1ℓの容器でも約1.5時間で測れるようになりました。
ゲルマニウム半導体検出器導入前は、検出下限値2.5Bq/kgで測る場合、2inch NaIシンチレーション検出器を使って1ℓの容器で約20時間かけていました。ゲルマニウム半導体検出器なら一ℓの容器で1.5時間で検査可能です。厳しい検出下限値の設定でも約1~1.5時間で1検体の検査が済むゲルマニウム半導体検出器は、極めて性能が高いことがわかるかと思います。
現状では、この機械で日中に検査する検体の数は1日6検体ほど※。月曜から金曜までの5日間で30検体前後というのが標準の検査数です。
※夜間は別の機器で検査した検体の確認検査を8時間ほどかけて行っています。
放射能が減ってきた今だからこそ大きな意味がある
このように精度の高い検査を行うことができるゲルマニウム半導体検出器。「なぜ、今このタイミングでの導入なのか?」には理由があります。
まずひとつには、2016年4月から、生活クラブの放射能自主基準を引き下げ、検出下限値の目標も公開したこと。これまでも高精度の検査は外部に委託して行っていましたが、生活クラブの内部にゲルマニウム半導体検出器を配備することで、厳しい基準での検査をより多くの回数や頻度、行う体制が整いました。また、東京電力福島第一原発事故から5年が経過し、セシウム134の半減期が2回過ぎて、放射能セシウムは事故直後の半分以下に減ってきているので、少ない放射線量を正確に測れる感度のよい機械が必要になってきたという理由もあります。事故直後は高い濃度のものを多品目検査しなければいけなかったので、精度の高い機械一台よりも、より安価な機械を多くの台数入れて測ることのほうが急務でした。現在は1Bq/kgや2.5Bq/kgといった厳しい検出下限値の目標で測ることが多くなってきたので、ゲルマニウム半導体検出器を導入することに大きな意味があるのです。
ゲルマニウム半導体検出器での検査も!「不検出」のリストを公開
生活クラブではこれまでも放射能検査の結果をすべて公開してきましたが、それに加え新たにこの6月からは、放射能検査で不検出だった消費材のリストをWEB上に毎月アップする取り組みを始めました。「ひと月の検査の中でどれだけの消費材が『不検出』だったか」を一覧できるリストです。特に表の最初のほうには、1Bq/kgという厳しい検出下限値の目標で測定した結果「不検出」だった消費材が並んでいます。これらはゲルマニウム半導体検出器によって測定された検査結果です。厳しい検出下限値での検査でも多くの消費材が不検出である安心感を、このリストから感じていただければと思います。
不検出リストは放射能検査結果アーカイブからご覧ください。
【2016年6月27日】