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繊細、芳醇、華やか、 葡萄から生まれる多彩な味と香り


「アルプス」のワイン蔵。右から代表取締役専務の矢ヶ崎弘道さん、代表取締役社長の矢ヶ崎学さん、企画開発部マネージャーの野村泰久さん

長野県塩尻市にある株式会社アルプスは、生活クラブ連合会のジュースとワインの提携生産者。長野県内の契約農家と自社農園で栽培するブドウをはじめ、海外で有機栽培されたブドウでワインを造り、さまざまな表情を見せるその魅力を伝える。

原料は農産物

 代表取締役社長の矢ヶ崎学さん。「原料のブドウの品種や産地を知って、ワインを楽しんでください」

「ワインの原料となるブドウの品種は何種類もあります。同じ品種でもブドウは農産物ですから、産地や醸造の仕方によって味も香りもまったく違うワインができあがります。飽きずに楽しめるお酒ですよ」と、株式会社「アルプス」の代表取締役社長、矢ヶ崎学さんはワインの魅力を語る。「ビールや日本酒のようにそれほど日常的に飲まれていないのは、なんとなく敷居が高くて、かしこまって飲まなくてはいけない、と思われているからではないでしょうか」 

それにしてもさまざまな種類がある。「今、一般に人気があるのはフルーティーなコンコードです。それをきっかけに、メルローなどのもう少し渋いワインを試してはどうでしょう」 コンコード、メルローはワインの原料となるブドウの品種の名前。その他に、アルプスは自社農園と契約農家で、ナイアガラ、シャルドネ、カヴェルネソーヴィニヨン、竜眼など、20種以上のブドウを栽培する。 
① メルロー。1980年代より日本でも栽培されるようになった赤ワインの原料 ② ブラッククイーン。日本で育つブドウ。野性味のあるワインになる ③ コンコード ④⑤ 樽(たる)はフランスの樫(かし)の木で作る。樽のメーカーや内部の焼き具合によってもワインの仕上がりが違う

国産ブドウで造る


アルプスの創業は1927年。 ブドウの垣根の端にバラが植えてある。ブドウと同じつる科の植物で、ブドウより先に病気になるため、病気発生の指標になる 

アルプスは、1927年に「アルプス葡萄酒醸造所」として創業した。工場がある塩尻市南部の桔梗ケ原は火山灰地で、冬の寒さも厳しく作物があまり育たない土地だった。明治初期より開拓が始まり、二十数種類のブドウの苗木が植えられたが、残ったのは寒さに強い米国原産のコンコードとナイアガラだけ。葡萄酒醸造所はそれでワインを造っていた。しかし当時の和食中心の食卓にはあまり受け入れられず、ブランデーなどを加えて加工する、甘味果実酒の原料として使われるほうが多かった。

コンコードとナイアガラは、もともとはジュース用の品種。戦後はこれらを用いてジュースも作り始め、90年代までは同社の製品の7割を占め、生産量も日本一になっていた。 その後食生活が洋風に変わり、赤ワインに含まれるポリフェノールには抗酸化作用があり、動脈硬化を予防する効果があることが知られるようになると、ワインの生産量は大幅に伸びた。矢ヶ崎さんは「ジュース用の原料もかなりワインに使われるようになりました」と振り返る。

75年、アルプスは、ワインとジュース用の良質なブドウを安定的に確保するために、長野市、松本市、安曇野市など長野県内の広範囲のブドウ栽培農家と「アルプス出荷組合」を立ち上げ、以後契約農家は約400軒にまで広がった。

一方、塩尻市では高齢化が進み、水田や野菜の畑などを手放す人も増えてきた。そこでそれら耕作放棄地をブドウ畑にし、自社農園として管理するために08年、農事法人「アルプスファーム」を立ち上げた。10年より自らブドウ栽培を始め、現在は合わせて40ヘクタールの畑に15種類のブドウが育っている。

アルプスファームの6人のスタッフの一人、矢口剛さんはブドウの栽培を始めて4年目。塩尻市出身で、小さいころからブドウは身近にあり、この仕事に就きたいと思っていた。「ゲヴェルツトラミネールという品種が好きです。まだ試験栽培ですが、ライチのような独特の香りがする白ワインができます。みなさんに飲んでいただけるようになるとうれしいです」 

「年に1回だけ、夜が明けない暗いうちにヘッドライトをつけて収穫します」と風味豊かなワインを造るための「ナイトハーベスト(夜摘み)」について話す矢口さん

「日本ワイン」って?

今年から来年にかけてワインをめぐる新たな動きが二つある。 一つは、今年10月30日から始まる「果実酒等の製法品質表示基準」、いわゆる「ワイン法」の適用だ。

これまでは、国内で収穫されたブドウを使用し日本国内で製造された果実酒だけでなく、輸入原料ブドウ果汁を用いても日本国内で醸造した果実酒であれば「国産ワイン」といわれていた。ワイン法が適用されると、前者のみが「日本ワイン」、後者は「国内製造ワイン」となる。海外で製造され日本に輸入されたワインは「輸入ワイン」と区分される。消費者にとっては原料の違いがよりわかりやすくなる。

アルプスがもっとも力を入れる製品、いわゆる「フラッグシップ」となるブランドが「ミュゼ・ドゥ・ヴァン」シリーズだ。自社農園を中心に、長野県内の契約農家で栽培されたブドウを原料として、発酵から熟成までを責任をもって管理製造する。ミュゼ・ドゥ・ヴァンはフランス語で「ワインの博物館」という意味。産地や原料ブドウの品種に応じて赤、白が合計21種類、博物館にふさわしい多種多様な日本ワインが並ぶ。 

長野県塩尻市の南部、桔梗ケ原にある、アルプスの自社農園。左から野村マネージャー、経理部・業務部長の百瀬正雄さん、「アルプスファーム」の矢口剛さん。ブドウは主に垣根仕立てで栽培する。「平棚栽培に比べて収量が半減しますが、日がよく当たり風通しが良く、病気になりにくいです」と百瀬さん

EPAの影響は?

もう一つの動きは、今年7月17日に成立した、欧州連合(EU)と日本との経済連携協定(EPA)だ。19年3月下旬までには発効が予定されており、発効すると、EU諸国との貿易の際の関税が撤廃されるか、または引き下げられる。

現在、ワインの関税は、1リットル当たり125円、または15%の、どちらか安い方が適用されている。通常の750ミリリットルびん1本当たりの関税は、約93円より高くなることはない。EPAが発効すると、この関税がなくなる。

「ワインに関しては、もともと関税がそれほど高くないのでEPAの影響はあまりないのです」と矢ヶ崎さん。「最高でも93円しか安くならないので、低価格帯の輸入ワインなら実感できますが、それ以外は大きなメリットは感じないでしょう。けれどいい輸入ワインを少しでも安く買えると思う消費者が増えればワインがさらに日本に広がるきっかけになります」。日本人が一人当たり1年間に飲むワインの量はボトル4本分。米国人は15本飲む。国内の消費量はまだまだ伸びる可能性がある。

また、企画開発部のマネージャー、野村泰久さんも、「日本で消費されるワインのうち、日本産のブドウを使っているのはたったの6%、ワイン全体の消費量が伸びれば日本ワインの良さに気づく人も増え、生産者も活気づきます」と前向きに受け止める。

違いを楽しんで

アルプスのワインの生産量は1年に350万本。その3分の2は海外の原料を使う。 契約農家と自社農園で栽培された国産原料を使ってワインを造ることは一つの柱だが、もう一つの柱として、海外の生産者と協力体制を作り、優れた原料で品質のいいワインやジュースを消費者に提供することがある。米国のワシントン州の契約農家で、ブドウを有機農法で栽培してもらい、現地で搾汁し、日本で製品にしている。

昨年からは輸入ボトルワインも始めた。米国やオーストラリアの有機栽培をしている農家のブドウを、現地でアルプス仕様の方法で醸造し、ボトリングして日本へ輸入する。そこにはスタッフが出向き、原料から製品ができあがるまで立ち合い責任をもって提供する。「同じ品種のブドウで造ったワインでも、海外と日本では栽培地の環境が変わり、醸造方法もそれぞれで、味や香りに違いが出てきます。消費者の皆さんにはそんな違いをみつけながら飲んでほしいと思います」。矢ヶ崎さんは、それもワインの楽しみ方の一つだと言う。

国産のブドウを国内で醸造する日本ワインは、風土も変わり歴史がある海外のものとは違いがある。「近年、それが一つの個性として評価されるようになりました。飲んだ時に気持ちが動かされ、幸せを感じる、そんなワインを造っていきたいと思っています」

撮影/田嶋雅已  文/本紙・伊澤小枝子
 


 

シャルドネを楽しむ


左から、「ヴァン・ドゥ・ツーリズム 有機ワイン シャルドネ」「ミュゼ・ドゥ・ヴァン シャルドネ」「ミュゼ・ドゥ・ヴァン マエストロ シャルドネ」「ミュゼ・ドゥ・ヴァン エトワール シャルドネ」

今秋、シャルドネを原料とする白ワインが4種類そろう。 シャルドネは、フランスのブルゴーニュ地方原産の、白ワイン用の代表的な品種。世界各国で栽培され、生産地の気候や醸造方法によって、さまざまな特徴を持ったシャルドネワインが生まれる。日本でも長野、山梨、山形県はじめ各地で生産されている。

まず「ヴァン・ドゥ・ツーリズム 有機ワイン シャルドネ」。提携しているオーストラリアのワイナリーが所有する有機栽培農園のブドウを、「アルプス」監修のもとに現地で醸造、ボトリングした輸入ワインだ。降水量が少なく、長い日照時間に恵まれた環境で有機栽培されたシャルドネを原料に用い、アルプスと地元のワイナリーの技術を結集して造った。ナチュラルでフレッシュな香りと酸味、風味を残すため、発酵・熟成にはオーク樽ではなく、ステンレスタンクを使う。さわやかな風味とすっきりした口当たりのワインができる。

次は「ミュゼ・ドゥ・ヴァン シャルドネ」。松本市から塩尻市にかけて広がる松本平の契約農家と自社農園で栽培されたシャルドネを、フレンチオークの樽で発酵・熟成させる。柑橘かんきつ系の香りとほのかな樽の香りが特徴の上品な口当たりの白ワインになる。

松本平は、年間降水量が比較的少なく冷涼な気候で日照時間が長いため、シャルドネの生育にはとてもいい環境だ。なかでも南部の桔梗ケ原周辺では、収穫期の昼夜の温度差が10度以上にもなり、糖度が高く十分な酸味も残る良質のブドウが育つ。

さらに「ミュゼ・ドゥ・ヴァン マエストロ シャルドネ」。原料は、塩尻市にある数カ所の特定の自社農園で収穫された、よりすぐりのシャルドネ。樽発酵させたあと、時間をかけて熟成させる。

ワインの原料となる白ブドウの果汁は、ブドウ自身の重さにより搾られる「フリーラン果汁」と、圧力をかけて搾る「プレスラン果汁」がある。フルーティーな香りのフリーラン果汁と、しっかりとした香味のあるプレスラン果汁の比率により、ワインの味が変わる。マエストロ シャルドネは、プレスラン果汁の比率が高い。さらに熟成途中に、樽にたまったおりを取り出してし、不溶物を取り除いてもう一度樽に戻すので、しっかりとした味のシャルドネができる。

もうひとつは「ミュゼ・ドゥ・ヴァン エトワール シャルドネ」。塩尻市にある自社農園の太田場で栽培されたシャルドネを、夜明け前に収穫する。光合成を開始する前の午前3時から6時に収穫するブドウには、夜間に蓄積された香り成分が残り、風味豊かなワインができる。収穫後、すぐにワイナリーへ運び樽で発酵させ、熟成を経ると、より繊細で華やかなシャルドネワインとなる。

「エトワール」はフランス語で「星」という意味。毎年9月、夜明け前の、まだ星がきらめく夜空の下で、シャルドネとソーヴィニヨンブランの2品種の「ナイトハーベスト(夜摘み)」が始まる。

ブドウの生産地に思いをせ、造る人のワインに対するおもいを知り、熟成の時を待ったワインを大いに楽しみたい。
 

撮影/田嶋雅已  文/本紙・伊澤小枝子
 

『生活と自治』2018年11月号の記事を転載しました。

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