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「遺伝子組み換えでない」食品は食べ続けられるのか?消費者の選択権を奪わない表示方法を

昨年から消費者庁を中心に遺伝子組み換え(GM)食品の表示制度の改正に向けた動きが進んでいる。生活クラブ連合会ではこの間、GM作物・食品をできる限り扱わないようさまざまな対策を進めてきた。消費者が選ぶ権利を手放すことがないよう、この動きを注視していく構えだ。

不検出のみ表示の方向へ

消費者庁は2017年4月より「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」を設け、表示改正について議論し、18年4月、これを報告書にまとめ公表した。報告書によれば、義務表示の対象となる食品は大豆、トウモロコシ、ナタネなど8作物とそれらを原材料とする33の加工食品と変わらず、表示すべき原材料の条件も現行と同じだ。

しかし大豆とトウモロコシについては、遺伝子組み換え(GM)作物の混入率をめぐって表示のあり方を変更すべきとの内容が示されている。

これまでは、遺伝子組み換えでない(NON-GM)作物に、生産や流通段階でGM作物が意図せず微量に混入してしまった場合でも、5%までは任意で「遺伝子組み換えでない」と表示できたが、今後はできなくなるというものだ。5%混入しているのに「遺伝子組み換えでない」と表示するのは、消費者の誤解を招くというのがその理由で、「遺伝子組み換えでない」と表示できるのは、GM作物が不検出の場合のみとする方向だ。

厳格な分別生産流通管理

日本は、大豆とトウモロコシの7割以上を米国からの輸入に頼る。だが、米国でのGMトウモロコシの作付面積は全体の約92%、GM大豆は約94%に上る(15年)。

こうした状況においてNON-GM大豆やトウモロコシを入手するのは容易ではない。「分別生産流通管理」といって、NON-GMの種子や、特別な契約で栽培してくれる農家を確保するばかりでなく、生産や流通の段階における混入を防ぐために細心の注意が必要になる。それでも偶然によるGM作物との交配や、運搬に使うコンテナの共用などもあり、まったく混入しないという保証はない。そのため、意図しない混入について5%までは「遺伝子組み換えではない」と表示できるとしたのが現行制度だ。

NON-GM原材料を扱う事業者は、米国から輸入する際に、分別生産流通管理が徹底され行われていることを確かめる。17年、消費者庁は混入の実態調査を行った。大豆は最大0.3%の混入があり最小は不検出、平均は0.1%だった。トウモロコシは最大4.1%で最小は不検出、平均値は1.0%。新しい表示方法が施行されると、どちらも「遺伝子組み換えではない」という表示はできなくなるものがでてくる。

食べ続けられるのか?

生活クラブ連合会企画部長の前田和記さんは、今回の変更が実現した場合、分別生産流通管理をする事業者が減少する恐れがあると懸念する。

検討会では、分別生産流通管理された原材料の表示方法について、「遺伝子組み換え大豆ができるだけ混入しないよう、生産・流通・加工の段階で適切な管理を行っています」などの文例を示している。

「消費者はGM作物が少しでも入っていると思われる表示がある製品を避け、表示のない製品を買うでしょう。労力と費用をかけGM作物を区分しても、それが消費者に伝わらないとすれば、事業者にとっては意味がありません」と前田さん。

また、ごく微量の混入は生産加工の現場でも起こりうる。「NON-GM作物の原材料を使い細心の注意を払い製品を作る食品加工工場でも、同じ製造ラインでGM原料を扱った場合、微量に混じってしまう可能性があります。NON-GMの表示をすると、表示偽装に問われることになるかもしれません。事業者はリスクを回避しようと、NON-GM表示をしなくなるでしょう」

そもそも対象品目と含有範囲以外のものに表示の義務はなく、肉類や乳製品など、GM飼料を使って製品化されたものには何の表示もされない。しかし生活クラブ連合会は、国産原料で手配しきれない家畜の飼料などについても、これまでJA全農と連携し分別生産流通管理を徹底してきた。

前田さんは「今の技術の検出限界の0.1%から5%までのGM作物について、どう表示するのかが、これからのNON-GM作物の市場を大きく左右するでしょう。NON-GM作物を食べ続けられるのかどうかもそこにかかっています」と話す。

消費者が選べる表示を

GM食品の表示改正については今後、内閣府の消費者委員会の承認を受けて政令で施行される予定だが、そのスケジュールは確定していない。現在、米国でもGM由来の食品原料表示ルールが検討されていて、その決定が日本のGM表示制度にも大きな影響を及ぼすと予想される。

米国では、16年7月、食品のGM表示を義務付ける連邦法案「全米遺伝子組み換え食品表示法」が連邦議会で可決された。これを受け農務省で表示ルールが検討されている。パブリックコメントも広く求められ、生活クラブ連合会は昨年8月、意見を提出した。すべてのGM原料を表示の対象とすること、QRコードや問い合わせ先だけでなく、包装へ文字で表示すること、広く知られている「GMO」という表示方法を継続することなどだ。

前田さんは「消費者には、食品がどのような原料から作られたかを知り選択する権利があります」と言う。

生活クラブが求めるのはGM作物も含め、選択する権利が奪われない表示方法だ。今後の日米の表示制度の行方に注目したい。

遺伝子組み換えって何?

◆GMひと口メモ

未知の技術「遺伝子組み換え」

遺伝子組み換え(GM)は、遺伝子に手を加えることにより作物の性質を変える技術だ。

たとえば、虫が食べると死んでしまう細菌の遺伝子をトウモロコシの遺伝子に組み込むと、そのトウモロコシを食べた虫は死ぬ。ある除草剤の影響を受けない微生物の遺伝子が組み込まれたGM大豆は、その除草剤をまいた畑では生き残り、他の植物は枯れてしまう。自然交配では何十年もかかるか、または不可能な作業を、短期間で効率よく行うことができる。

「種」の壁を越えて生命を操作するこの技術は、1970年代に米国やカナダで開発され、80年代後半には野外での試験栽培が始まり94年に商品化された。しかしGM作物を食べ続けた場合の人体への影響や、栽培を繰り返した時、環境がどう変っていくかについては、まだ十分にはわからない。

また、GM作物の種子を生産、販売しているのはごく一部の大手企業だ。そこには特許が与えられている。多くの場合、その種子が耐性を持つ農薬などとセットで販売されるため、種子や農薬をその企業から買い続けなければ栽培できなくなる。農薬使用の広がりや食料生産の支配につながる恐れもある。

生活クラブのGM対策

日本の食料自給率はカロリーベースで38%(17年)。多くを輸入に頼っている。

1996年、厚生省食品衛生調査会(当時)は、GMの大豆、ナタネ、トウモロコシ、馬鈴薯ばれいしょ、4作物7品目について食品としての安全性を確認したと発表し、輸入を認めた。

これに対し生活クラブ連合会は97年1月、「遺伝子組み換え食品に対する基本方針」を決定した。一つ目は、GM技術によって生産された作物・食品とその加工品を取り扱わないことを原則とし、二つ目が、やむを得ず使用する場合は情報公開するということ。

この基本方針にもとづき、GM作物の混入の可能性のあるすべての消費材についてその原材料を調査した。調査は、トウモロコシを原料とするコーンスターチを使った菓子はもちろん、最終的には蒸発して製品に残留しないが、香料やエキス類の抽出に使われる醸造アルコールのような微量原料にまで及んだ。

これをもとに、提携生産者間で協力し合い、国産原料に切り替えるなどGM食品を極力扱わない対策をすすめた。

限定的な現在の表示

GM食品の輸入が始まった当時、国は流通のための表示は必要ないとしていた。しかし各地の生活クラブ単協では、消費者がGMかそうでないかを知り食品を選択する権利を保障するためには表示が必要との考えから、GM食品の表示を求める署名活動を展開した。96年12月には東京都議会が、遺伝子組み換え食品の表示義務化の意見書を国会へ提出しており、消費者からの表示の要望は次第に大きくなっていった。

こうして2001年4月1日より、GM食品の表示義務がスタートした。ただし、対象品目は豆腐、みそなど24品目のみ(当時)。しかも、その加工食品の全原材料に占める重量が上位3位までのもので、かつ重量割合が5%以上のもの限定だった。

一方、油を搾るナタネやしょうゆの原料である大豆、水あめやブドウ糖に加工されるトウモロコシは、製品の主原料ではあるが、加工後の製品にはタンパク質や遺伝子が残らないため、GMであっても表示義務がないとされた。また、GMの大豆カスやトウモロコシは肉や乳製品となる家畜の飼料にも大量に使われるが表示義務対象とはされていない。

現在は、新たなGM作物の開発に伴い、アルファルファ、テンサイ、パパイヤ、綿実が加わり8作物が輸入認可となっている。表示義務対象品目はこの8作物とこれらを原材料とする33の加工食品のみだ。店頭に並ぶ食品表示だけでは、GM作物の原料が含まれているかどうか知ることは、ほとんど不可能という状況だ。
 

イラスト/石渡希和子  文/本紙・伊澤小枝子
 

『生活と自治』2018年10月号の記事を転載しました。

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