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多世代で支え合う 地域循環型の子育て

西東京市にあるNPO法人「ワーカーズ・コレクティブちろりん村」では、地域の子育てをさまざまな角度から支える挑戦をしている。

「待つ」だけでない直接支援

利用者の子どもと一緒に遊ぶビジターの安田晶子さん

「こんにちは」という声とともに玄関から安田晶子さんが入ってくると、心地よい「風」が舞い込んだようにその場の空気が変わった。安田さんは子育てを一人で抱える親たちのもとを訪れる「ホームビジター」だ。

「誰かに話を聞いてほしい」「引越してきたばかりで、スーパーや公園の場所がわからないから教えてほしい」「外出したいけど、子どもがいて大変なので誰か一緒にいってほしい」といった、子育て中であれば誰もが抱えるであろう悩みや不安。そういった家庭に寄り添い、子育てのよりよい環境をつくるために支援する活動の一つに、「ホームスタート」がある。

ホームスタートは、1973年にイギリスで始まった家庭訪問型の子育て支援で、現在、世界の22カ国でその仕組みが活用されている。日本では2009年からNPO法人「ホームスタート・ジャパン」が普及を開始。研修を受けたホームビジターが、1回2時間、週1回で2~3カ月かけて定期的に家庭を訪問しながら親の悩みや不安に寄り添い、子育てを支援する。利用は無料で、現在、全国98市町村で展開、うち半数は自治体からの委託を受け、NPO法人や社会福祉法人が事業を運営している。

NPO法人「ワーカーズ・コレクティブちろりん村」では、13年より市の委託を受けない独自事業で「ホームスタート・西東京」を開始した。ちろりん村は、多摩きた生活クラブ(本部・東村山市)に所属する「まち西東京」の組合員を中心に00年から地域の子育て支援活動を始め、07年、ワーカーズとして発足、事業を開始した。「生活クラブ保育園ぽむ」(東京都認証保育所)の立ち上げと運営に尽力しつつ、就園前の子どもとその親のための出張型の親子ひろば「ミトンの会」や親向けの子育て連続講座、食育講座など独自の子育て支援事業を展開してきた。ホームスタート事業について、事務局長の吉田朋子さんは以下のように話す。 

 NPO法人「ワーカーズ・コレクティブちろりん村」事務局長 吉田朋子さん
「西東京市では、待機児童が今年度146人、特に0歳児を育てる家庭の7割以上が、子どもを家庭で育てています。ちろりん村では、事業化する7年前より、そのような親子を支援したいと地域の公共施設等で子育て支援活動を継続してきました。しかし親が来るのを『待つ』支援だけでは、子育ての孤立感や不安感を軽減するには十分とはいえません。来られない人たちもたくさんいて、実際にはそうした人のほうが困っている場合が多く、直接支援する手段はないかと模索した結果、ホームスタートを選びました」

厚生労働省によると、全国の児童相談所が16年度に対応した児童虐待の件数は12万2,578件で過去最多。集計を始めてから26年連続で増加している。社会全体での支援体制の充実が急がれる一方、制度のはざまで見落とされがちな親子もいる。

吉田さんは「直接訪間することで、支援が行き届いていない親子に寄り添えれば」ときめ細やかな支援を目指す。

子育ての伴走者

「メールか電話で連絡をいただいた後、まず私たちオーガナイザーがご家庭を訪問しお話を伺います」と吉田さん。オーガナイザーは、利用者の要望を聞き、訪問するビジターをコーディネートする役割を担う。「例えば、双子の子育てに悩む親には、双子を育てた経験のあるビジターに訪問してもらうこともあります。先輩ママであるビジターは、育児や家事のノウハウも豊富で、利用者さんからは『ビジターさんの話は実際の生活で役に立つヒントがある』と喜んでいただけます」

ホームスタートのビジターは、研修を受けて守秘義務を守るボランテイア。基本姿勢は、「傾聴」と「協働」だ。スーパーで一緒に買い物をしたり、洗濯物を一緒にたたみながら、相手の話にじっくり耳を傾け、気持ちを受け止める。 一口に子育ての悩みといっても、子どもの成長や夫婦のコミュニケーションの問題など多種多様な悩みがあり、プライベートな話に踏み込む場合も多い。

「2時間、たっぷりお話をお聴きします。傾聴にどのくらいの効果があるのか、初めは半信半疑でしたが、訪間を重ねるうちに、利用者が本来の元気を取り戻していく様子を見て驚きました。別人と思うこともあります。こんなに明るい方だったんだ、支援ができてよかったと心から思います」と吉田さんとともにオーガナイザーを務める真鍋五十鈴さんは話す。

ちろりん村のホームスタート事業は、今年で4年が経過し、養成講座を受けたボランテイアのビジターは34人、家庭への訪問回数はのべ550回を超える。利用者のニーズは、1位が「親自身の心の安定」、2位「孤立感の解消」、3位「子どもの成長・発達を促す機会を作る」とつづく。充足度としては、「孤立感の解消」が97%、「子育てサービスの利用方法を知ることができた」が97%、「親自身の心の安定」が92%と高い効果をあげている(利用者のアンケートより)。

利用者は、30代が最も多く、全体の75%を占める。第一子を持つ人の申し込みが約半数で、二人目は約30%。子どもの年齢でみると、0歳児を持つ利用者が半数で、そのうち生後3カ月以内の、生まれて間もない子どもを持つ人の申し込みが多い。全国の調査では0歳児の虐待死数が最も多いというデータがあり、ちろりん村では早期から関わりを持つことが、親の不安や孤立感を軽減し虐待予防に効果があると考え、16年の12月から、妊婦の家庭訪間にも対応し始めた。

長女が生後3~4カ月のまだ首も座らないときに、ちろりん村のホームスタート利用を申し込んだ女性は「ホームスタートのいいところは、子育ての伴走者となってくれる点。こちらがサポートを指定したり提供されるサービスを享受するだけという支援と違い、ビジターさんと相談しながら物事を決められ、 一方向でない関係性がつくれます」と、実際に経験して感じた良さを話す。さらに「ビジターさんからはママ友とは違ったアドバイスをもらえ、子育てを俯敵できて、気持ちが楽になります」とも。

ビジターの年齢は40~60代が9割。現役で子育てをしている人にとって、異なる世代の人は、うつうつとした気分に風穴をあけてくれる貴重な存在。同女性は、「子育てに一段落がついたら、今度はビジターとして、同じ地域で子育てをしている人のお役に立ちたい」と語る。ちろりん村は、こうした次世代への「恩送り」の支え合いの形を目指している。

撮影/鈴木貫太郎  文/平井明日菜

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