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最期まで質の高い暮らしを トータルに支えきる「生活クラブ10の基本ケア」

「人生100歳時代」ともいわれる今、心身が弱ってくる晩年をどう暮らすかは誰にとっても切実な課題だ。生活クラブから生まれた三つの社会福祉法人などが2015年に設立した「生活クラブ安心システム連合」では、高齢者が最期まで自分らしく暮らせるように「生活クラブ10の基本ケア」を実践する。

「正しい座位」が暮らしを支える


 島田朋子さん

「車椅子に座ったまま食事をしたりテレビを見ている光景をよくみかけますが、体の機能の維持という意味ではあまりよくないのです」

そう話すのは、社会福祉法人「生活クラブ」が運営する「生活クラブ風の村いなげ」の施設長、島田朋子さんだ。風の村は、千葉市の稲毛地区で高齢者支援から子育て支援まで、多世代、多様な福祉事業を手掛ける。島田さんは「車椅子は腰をかける場所(座面)がたわんでいるので、骨盤が前にずれて足がきちんと床につきません。座っていても寝ているのと同じ状態になります。車椅子はあくまで移動の手段として使い、移動後は座り直して活動することで機能が維持できます」と説明する。「生活クラブ10の基本ケア」の第2項目、「床に足をつけて正しい座位をとる」の実践だ。

「骨盤の上にきちんと体を乗せ、足の裏に圧力をかけることで筋力が保たれます。さらに背もたれとの間を開け、まっすぐ座る姿勢をとれれば、足を使って立ち上がることが容易になり、習慣化します」(島田さん)

もう一つ、足の裏に圧力をかけることで脳が刺激され覚醒が促される意味も大きいと言う。認知症予防や進行の鈍化にもつながる。正しい姿勢は、施設でも家庭でも自立支援の重要なポイントだ。 風の村の高齢者施設では、これに沿って日々のケアが行われる。椅子はその人のひざ下の長さに合わせて3段階のものを用意し、それに合わない場合は足台を置く。食事の時など、常に足の裏が床につくような配慮がなされ、足を使って立ち上がりやすいよう、テーブルの高さもこれに合わせる。1日の暮らしの動作も、少しずつでも立位をとれるよう考えてケアを行うのが基本だ。

「たとえば、体を拭いたり歯磨きをするときも、できるだけ立ってもらいます。してあげるのが介護と思う介護職も多いのですが、立位を促すことで、できるだけ自立した生活が送れるよう支援するのが私たちの方向性です」(島田さん)

自立を促す基本のケア

 生活クラブ10の基本ケアには、これを含む10の項目が掲げられており、それぞれに具体的アプローチ方法や意味合いが4~5点、付随する。島田さんはこれを「一人の人をトータルに最期まで支えきっていくのに必要な介護職の知識、技能、考え方をまとめたもの」と言う。

2015年、生活クラブ安心システム連合設立時に、基本姿勢の一つとして掲げられた10の基本ケアだが、3年の実践経験を経て今年改定された。風の村のほか、同システム連合を構成する社会福祉法人「悠遊」(東京都)、同「いきいき福祉会」(神奈川県)の3団体が話し合い、それぞれの現場での経験を生かし、必要なものを精選してつくられたという。当初から目指していたことではあるが、改訂によって「できるだけ在宅生活を長く楽しむためのケア」という方向性が一層明確になった。

「多くの介護現場では、最初は訪問介護でケアするけれど、いずれデイサービスを経て施設へ入居という流れが当たり前とされていて、最期まで自宅で暮らすという発想に基づくケアは、現状あまり実施されていません」と島田さん。短時間の訪問介護や定期巡回随時対応型訪問介護看護(定期巡回)等も、やり方次第では自立生活を長く維持することは可能で、その工夫が重要だと主張する。たとえば、朝晩の着替えの手伝いや薬の確認。いつまでもパジャマのままでいたり薬を飲み忘れることは高齢者にはありがち。そこを見過ごすと、閉じこもりがちになったり症状が悪化する例は多い。短時間の訪問で要点を確認し毎日の生活のリズムができれば、散歩など自立に向けた次の展開にもつながっていく。 1

0の基本ケアには、こうした、自立を促す必要最低限のケアが定められている。「小規模多機能型居宅介護や定期巡回のしくみが整っている地域であれば、これを実践することで最期まで在宅で一人暮らしをすることも決して不可能ではありません」と島田さんは言う。

自分ごととして福祉への関心を

 正しい座位。「風の村いなげ」のスタッフが実践

生活クラブ10の基本ケアは、生活クラブ安心システム連合が独自に定めたケアの基準でもある。生活クラブ連合会では、取り扱う食材や日常品に対して、組合員と生産者が話し合って「自主基準」を定めている。10の基本ケアは、その「福祉、介護事業版」だ。同連合内の団体で共有し、同じ理念、質の支援をどこでも実践できるよう、日々研修を重ね、現場への定着を図っている。

人手不足や介護保険制度の変更などにも振り回され、人材確保は難しい課題だが、安心システム連合では、同連合内の団体間で連携して採用や研修を行うことで、その解決を目指す。 「利用者さんが立ち上がる際のケアもガイドラインを定めて標準化しています。利用者さんだけでなく介護職の身体的負荷も軽減できる方法です。利用者さんが立ち上がる際も、持ち上げるのでは自分にも負荷がかかるし自立支援にもなりません。10の基本ケアの意味やそれによる利用者さんの変化に気づけば、自分の仕事の面白さを実感でき意欲にもつながります。基本ケアを徹底させ、そうした実感が持てる現場にすることで、定着する人を増やしていきたい」と島田さんは言う。

かつて自身も有償ボランティアグループの一員として福祉に参加し始め、その後「食の不安を解決するのは生活クラブ、老いの不安に応えるのが風の村」との考えに賛同し介護保険スタートと共に本格的に活動を始めた。目指すのは「自分が受けたい支援のある暮らし」だ。「一人一人、自分が最期をどう暮らしたいのか、そのイメージを元気なうちから持って行動することが大事ではないでしょうか」と投げかけ、「福祉は人ごとではなく自分ごと。参加する機会は身近にたくさんある」と、ボランティアなどで福祉の現場に積極的に参加してみることを勧める。もちろん参加せずとも、ただ見学するだけでも発見はある。

「自分や家族がいつ利用者になるかもしれません。10の基本ケアを頭において、その視点から施設を見学すると自分が受けたい支援かどうか、いろいろなことが見えてきますよ」

撮影/諸星美保  文・本紙/宮下 睦


『生活と自治』2018年11月号の記事を転載しました。

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