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高齢期もおいしく健康に食べる 身体の機能変化に対応する「消費材」ジャンルの開発

超高齢社会の日本、多くの人が高齢になってもできるだけ介護を必要とせず健康で過ごしたいと願う。食生活はその基本だ。生活クラブ連合会では、高齢期を迎える組合員がライフスタイルや身体機能の変化があっても利用し続けることができるよう、食材の開発を進めてきた。健康な食生活をサポートする取り組みが今年の5月から始まる。

楽しく食べることが一番

介護を受けたり寝たきりになったりせず日常生活を送れる期間を示すのが「健康寿命」。2018年3月、厚生労働省は、16年の調査をもとに、健康寿命は男性72.14歳、女性74.79歳と推計できると公表した。前回より延びたというものの、平均寿命との差はそれぞれ、8.84年、12.35年と長い。健康寿命を延ばすために必要なのは「社会的な関係」「適度な運動」「栄養バランスのよい食事」と言われる。食生活ではどのようなことに注意すればいいのだろうか。

千葉県にある社会福祉法人「生活クラブ風の村」が運営する高齢者介護施設で、食支援スーパーバイザーを務める木下利枝子さんは、「『食べたくない、作りたくない』と思う気持ちが強くなってくる時が要注意」だという。

高齢期の生活は、そもそも日常の運動量が減り、空腹感を感じることが少なくなるうえに基礎代謝率も低下する。いわゆる「エンジンがかかりにくい体」になるので欲するエネルギー量が低下し、食欲自体もなくなってくる。さらに、子どもの独立や家族の退職など、生活環境の変化に伴い、「食事を作る意欲がなくなってきた」という人も多い。簡単なメニューの繰り返しになったり、おかずの品数も減る。おやつや果物などは今まで通り食べるので、夕食が食べられなくなるというケースもある。その結果、炭水化物の摂取が増え、タンパク質やビタミン・ミネラルなどが不足してくる。食生活の変化は徐々に進むので自分では気づかないうちに、低栄養状態になり、筋力や抵抗力が低下、風邪など感染症にかかりやすく、治りにくい体になってしまうというのだ。

「高齢になってもタンパク質の摂取量は、高校生男子と同じ量が必要」と木下さん。1日70グラム、にぎりこぶし1個分を目安に、肉・魚・豆腐・卵などを3食の中でバランスよく食べていきたいという。また、食べる量や内容が変わると排泄にも影響する。腸の長い日本人が便秘がちにならないためには、ある程度の量を食べることが必要なうえ、油脂分をとることも重要だ。高齢になると、消化酵素の分泌が減り、大量の油脂分には対応しにくくなる。そのため「もう年だから、脂っぽいものは食べない」となりがちだが、適度な油脂分の摂取がスムーズな排泄を促してくれる。

一方、「○○が効く」「××は食べない方がいい」など、健康や栄養に関する情報はさまざまに流れてくる。だが、木下さんは「かつて主流だった栄養データですら研究が進むと変わることがあるのでそればかりに偏るのはよくない」と指摘する。今まで食べてきた食材をバランスよく食べれば十分で、むしろ食事をする環境が重要だという。

「栄養素はあくまでも目安の数字。そこだけに注目しないで、嗜好や食環境などを考慮し、楽しく食べることが一番です。食べることで生きる意欲がわいてきます」

一人で食べる食事では食欲はわかない。独居であっても、昼食だけでも友だちや近所の人と食べたり、週に一度くらいは離れた家族と食事をする機会を持てるといいとアドバイスする。

写真:生活クラブ「高齢者向け消費材開発チーム」のメンバーで管理栄養士の木下利枝子さん

親しんできた消費材を

健康寿命を延ばすための、こうした食生活を支えるにはどのような食材が必要なのか。
生活クラブ連合会では、高齢期を迎える組合員、10万人近くいると推定されるその家族の必要性に応じ、2017年度より高齢者向け「消費材」の開発を検討してきた。

一方、木下さんが働く風の村と、社会福祉法人「悠遊」(東京都)、同「いきいき福祉会」(神奈川県)の三つの社会福祉法人などが15年に設立した「生活クラブ安心システム連合」でも、関連施設におけるより良い高齢者向けの食事の提供は大きな課題だった。

そこで、安心システム連合と生活クラブ連合会、さらに生活クラブスピリッツも加わり三者合同で「高齢者向け消費材開発実行チーム」を結成、17年9月より具体的な活動が始まった。木下さんも生活クラブの管理栄養士として同チームに参加、共に消費材の開発を進めていくこととなった。

開発の視点は、「低栄養状態を回避する」「食べる意欲を促す」「弱くなった食機能をサポートする」の3点だ。

チームでは市場に流通する介護食や先進技術を使った高齢者食も検討したが、どれも生活クラブで扱うには違和感があった。特別な食材ではなく、今元気な人がこれからも元気でいるために、利用してきた消費材の形状や硬さを変えることで食機能をサポートするものにしようとの結論に至った。

栄養面はもちろん、歯の欠損や、舌の動き、噛む力の低下、唾液量の減少など身体機能の低下に対応するには専門性が要求される。まずは木下さんらが今ある食材の中で、高齢者向けに活用できそうなものをピックアップした。
「生活クラブの材は丁寧に作られていて、おいしいことを改めて認識しました。高齢になっても食べ続けたいという組合員の思いをサポートしたい」と言う。

当面は、適度な軟らかさを追求し、「豆腐団子」などそのまま利用できるものと「大正金時煮豆」など提携生産者に協力を求めて再検討するもの、加えて小容量のものやご飯に合う食材などがラインナップされる予定だ。5月の新規品デビューに向けて、今後連合消費委員会や福祉事業推進会議で試食し、意見交換しながら検討していく。さらに、カタログなどを通して、高齢期の食を支える情報の紹介や高齢期向け「ビオサポ講座」なども検討中だ。新たな開発も含めて徐々にアイテムを増やしていくことを計画している。

生活クラブ連合会常務理事の伊藤由理子さんは「食べることは最期までおいしく楽しく。生活クラブで長年、親しんできた消費材を食べ続けて健康に暮らしたいという組合員の声に応えていきたい」と話す。

写真:「生活クラブ風の村」では、入居者の食べる意欲を満たすためにバイキング形式の食事提供も試行。動ける人は自力で取りに来る 写真提供:風の村

撮影・文/中野寿ゞ子

『生活と自治』2019年1月号の記事を転載しました。


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