身近な暮らしから実践、地球生態系のために 「グリーンシステム」が環境大臣賞を受賞
生活クラブ連合会では、扱う調味料やジャムなどのびん容器の規格を統一し、回収して繰り返し使う「グリーンシステム」を進める。1994年にスタートし25年を迎えた昨年、環境省主催の「グッドライフアワード」において、環境大臣賞NPO・任意団体部門を受賞した。プラスチックによる海洋汚染が大きな社会問題として注目を集める中、改めて、日常から継続して取り組むこの活動の意味を振り返った。
深刻化する海洋汚染問題
街角にあふれるペットボトル。これまで多くは海外で処理してきたが、受け入れを禁止する国も出てきた
2012年に日本で翻訳された、米国の海洋環境研究者、チャールズ・モアらによる著書「プラスチックスープの海」には、海にたまった衝撃的なプラスチックごみの写真が掲載されている。プラスチックは20世紀後半から世界に広がり、簡単便利、安価で丈夫という利点から消費量が急増した。ペットボトルや菓子など食品の容器包装だけではなく、紙おむつの吸水ポリマーやマスクの不織布などにも使われる。
問題はプラスチックごみが自然には分解しない点だ。海に流れ込むと波や紫外線によって砕かれ、長い時間をかけ劣化し、細かな破片や粒子「マイクロプラスチック」となって海中に残り続ける。16年には、東京農工大の研究チームが、東京湾で捕れたカタクチイワシの8割近くの内臓からマイクロプラスチックを検出したという報告もされた。人の健康被害につながるかどうかはまだ判明していないが、リスク評価ができないこと自体がリスクともいえる。
こうした状況が明らかになったこともあり、近年は使い捨てのプラスチックストローを使わない企業が増えるなど、プラスチックによる海洋汚染への危機感が高まっている。
問題はプラスチックごみが自然には分解しない点だ。海に流れ込むと波や紫外線によって砕かれ、長い時間をかけ劣化し、細かな破片や粒子「マイクロプラスチック」となって海中に残り続ける。16年には、東京農工大の研究チームが、東京湾で捕れたカタクチイワシの8割近くの内臓からマイクロプラスチックを検出したという報告もされた。人の健康被害につながるかどうかはまだ判明していないが、リスク評価ができないこと自体がリスクともいえる。
こうした状況が明らかになったこともあり、近年は使い捨てのプラスチックストローを使わない企業が増えるなど、プラスチックによる海洋汚染への危機感が高まっている。
シンプルだから持続可能
どうすればプラスチックごみを減らせるのか。社会の関心が集まる中、生活クラブ連合会と全国の生活クラブ単協が進めるグリーンシステムが、環境省主催の「グッドライフアワード」を受賞した。GREENは、「GARBAGE REDUCTION FOR ECOLOGY AND EARTH'S NECESSITY(地球生態系のためのごみ減量)」の頭文字だ。文字通り、地球生態系のためにいかにごみを減量できるか、「生産・流通・消費・廃棄」の過程を明らかにし関係者とともに仕組みをつくり25年間、地道に継続してきたことが改めて評価された形だ。
現在、67品目の食材に対して使われるびん容器は8種類。組合員は使用後これを返却し、びん商が洗浄して生産者のもとに戻し、再利用する。びんの他に、牛乳びんのキャップや仕分け用の袋などのリサイクル回収も行う。17年は年間約500万本のびんを回収・再利用し、リサイクルと併せ、東京ドーム約1個分のCO2を削減した。
生活クラブ連合会の理事として授賞式に出席した木村庸子さんは「組合員一人一人が日常的に行っているシンプルな行動と、びん商、生産者の努力が社会的に評価されてとてもうれしい」と語った。
受賞の理由は、「その実績に加え、数種のびんをさまざまな食品の容器として使い、洗って返しまた使うというシンプルな取り組みであり、だからこそ持続可能であること、25年前からガラスびんの良さに着目し、活動を脈々と受け継いできた人たちのゆるぎない大志を感じる」というもの。審査員からは、「仕組みもシンプルだが、びんのデザインも美しい」「生活クラブのグリーンシステムが社会的評価をうけるのはむしろ遅いくらい」との声もあったという。
現在、67品目の食材に対して使われるびん容器は8種類。組合員は使用後これを返却し、びん商が洗浄して生産者のもとに戻し、再利用する。びんの他に、牛乳びんのキャップや仕分け用の袋などのリサイクル回収も行う。17年は年間約500万本のびんを回収・再利用し、リサイクルと併せ、東京ドーム約1個分のCO2を削減した。
生活クラブ連合会の理事として授賞式に出席した木村庸子さんは「組合員一人一人が日常的に行っているシンプルな行動と、びん商、生産者の努力が社会的に評価されてとてもうれしい」と語った。
受賞の理由は、「その実績に加え、数種のびんをさまざまな食品の容器として使い、洗って返しまた使うというシンプルな取り組みであり、だからこそ持続可能であること、25年前からガラスびんの良さに着目し、活動を脈々と受け継いできた人たちのゆるぎない大志を感じる」というもの。審査員からは、「仕組みもシンプルだが、びんのデザインも美しい」「生活クラブのグリーンシステムが社会的評価をうけるのはむしろ遅いくらい」との声もあったという。
生活クラブ千葉の理事長で、連合会理事の木村庸子さん(撮影:永野佳世)
他者との連携が不可欠
リユースびんには再利用できる目印として「R」のマークがつき「Rびん」と呼ばれ、大切に扱えば50回までは再利用できるとされる。「生活クラブの『消費材』づくりは、このRびんから始まると言ってもいい」と木村さんは言う。
「びんは生き物です。丁寧に扱わないと傷が付き、再利用できなくなります。生産者を訪ねた時に工場の裏に山積みになっているびんがありました。再利用できない傷が付いたびんで、その分の新しいびんは生産者の負担になります。生産者の協力と強い意志がなければ継続は不可能な仕組みだと強く思いました」
提携生産者だけではなく、Rびんを作るメーカーや、回収、選別、洗浄するびん商など、おおぜいの連携・協力を必要とし、多くのびんを回すためには、他生協など、他団体との連携も欠かせない。環境保全や資源循環をめざすこうした人々のネットワークができたことの意義も大きいと木村さんは言う。
しかし、近年びんの回収率が低下傾向にあるのも事実だ。新規に加入する組合員にグリーンシステムの意味を伝えきれていないこと、返却の手間などが要因とされる。一方で、リユースの考え方が好き、びんがかわいいなどの理由で加入する組合員も増えているという。各地域の生活クラブは、今回の受賞を機に、さまざまな工夫でこの仕組みを広げていこうと考えている。
「グリーンシステムをさらに広げることが、ごみを減らし海洋汚染を食い止めることにつながります。いかに継続させ次世代につなげていくかが私たちに問われています」と木村さんは投げかける。
文/戸田美智子
★『生活と自治』2019年2月号 「生活クラブ 夢の素描(デッサン)」を転載しました。
【2019年2月15日掲載】