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ゲノム編集技術によって作られたすべての食品原料に対する規制が確立するまで市場流通に反対します

近年、ゲノム編集技術の様々な利用がすすんでいます。厚生労働省は、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会新開発食品調査部会(以下、部会)のもとに「遺伝子組換え食品等調査会」(以下、調査会)を設置し、ゲノム編集技術によって作られた食品の食品衛生上の取り扱いについて検討しました。
部会で報告案 「ゲノム編集技術を利用して得られた食品等の食品衛生上の取扱い(案)」が取りまとめられ、2月24日までパブリックコメントが募集されています。
生活クラブ生協連合会(本部:東京都新宿区、会員生協:33生協・1連合会、組合員数合計:約40万人)は2月19日、ゲノム編集技術の利用により作られたあらゆる食品を規制の対象とすることを求め、意見を提出しました。提出した意見は次の通り。
はじめに

生活クラブ連合会は、全国の40万人の組合員からなる生活協同組合です。遺伝子組み換え作物・食品については、安全性への疑問、生物多様性への影響や「種子の独占」への懸念を持つことから、取り扱わないことを原則とし、加工原材料および畜産飼料の遺伝子組換え対策を終え、微量原料の対策を若干残すに至っています。
ゲノム編集技術の応用で生み出される食品についても、安全性への疑問、また生物多様性への影響や「種子の独占」のさらなる拡大について、深い懸念を表明してきました。国に対しては、予防原則にもとづいた新しい品目の登録制度と情報公開、消費者の選択権が保証される食品表示やトレーサビリティのしくみなど、適正な規制管理ルールの確立を強く求めます。
 

報告書への意見
 
1.    ゲノム編集技術によって作出されたすべての食品原料に対して予防原則にもとづく規制が確立するまで市場流通に反対します。

ゲノム編集技術は、DNAを切断する酵素を用いて特定の遺伝子の働きを止めたり、外来の遺伝子を挿入する技術です。今回の「ゲノム編集技術を利用して得られた食品等の食品衛生上の取扱いについて」の議論にあたっては、自然界の突然変異や放射線などによる人為的突然変異を利用した技術(報告書では「従来の育種技術」と呼ばれている)とゲノム編集技術とを比べて、安全性が議論されました。そしてまとめられた報告書では、外来遺伝子が残存しない場合は、遺伝子組み換え食品と同様の安全性審査は義務付けないことが妥当とされています(87~93行目)。その理由を報告書は、DNAの切断箇所の修復にともなう変異が「自然界で起こる切断箇所の修復で起こる変化の範囲内であり、組換えDNA技術に該当しない従来の育種技術でも起こり得る」(90~91行目)としています。しかし、DNAの狙った箇所を効率よく切断する技術は、これまでに存在しなかった全く新しい技術です。DNAを切断するのですから、遺伝子を人為的に操作する新しい遺伝子技術と言えます。
また、標的以外の遺伝子におよぶオフターゲット効果や遺伝子の変化がその生物の特性に意図しない変化をもたらす可能性があり、食品として流通した場合、異常タンパク質によるアレルギーなどの問題を起こすことも考えられます。報告書も、「ゲノム編集技術における標的部位以外の塩基配列への変異の導入(以下「オフターゲット」という。)が発生することを前提とすべき」(50~51行)、「ゲノム編集技術におけるオフターゲット等で、当代においては検知されない読み枠のズレによる何らかの人の健康への悪影響が発生する可能性は十分に考慮する必要がある」(60~62行)と指摘しています。
これらの点について報告書は、「品種として確立するための継代、育種過程における選抜を経ることを踏まえると、そうした影響が問題になる可能性は非常に低いと考えられる」(63~65行)としていますが、オフターゲットが育種過程で本当にすべて取り除かれるのか、まだ分からないのではないでしょうか。
報告書には、「全ゲノム塩基配列におけるオフターゲットを完全に解析することは、精緻なリファレンスが存在しない生物種が多いこと等により、現状においてこれを実施することは困難」(55~57行)と書かれています。また「開発者は、(中略)標的遺伝子以外の切断について、オフターゲットが起こる蓋然性の高いと推定される配列を検索ツール(例:CRISPRdirect 等適切な複数の検索ツールを必要に応じて組み合わせること。)等を用いて把握し、その部位におけるオフターゲットの有無を確認する必要がある」(141~144行)とも書かれています。つまり、オフターゲットの有無は特定の部位だけ調べられ、完全には解析できないということになります。
このように現段階においてゲノム編集技術を応用した食品については、未解明な点が多く存在します。食品衛生上の危害を予防するため、すべてのゲノム編集技術を使用した食品原料の安全性審査を行なってください。また、遺伝子組み換え食品と「異なる扱いと整理することが妥当」(93行)であるのなら、ゲノム編集技術に固有の安全性審査の制度を確立すべきです。それができるまでは、ゲノム編集技術応用食品を市場に出すことに反対します。

 
2.    ゲノム編集技術によって作出された作物・食品の登録と情報開示を義務付けてください。
 
ゲノム編集技術によって作出された作物・食品について報告書は、「従来から用いられている突然変異を誘発するなどの育種技術で得られる変化との差異を見極めることは困難」(47~49行)、「従来から用いられている突然変異を誘発するなどの育種技術においても多くの部位で塩基配列の変異が発生しており、ゲノム編集技術におけるオフターゲットとの差異を見極めることは困難」(51~54行)と、放射線育種などの育種によるものと区別が難しいことを指摘しています。
 いったん市場に出てしまえば、ゲノム編集技術で作られたものであるのか最終製品から確かめることは困難です。そうであればこそ、将来起こるかも知れない食品衛生上の危害を予防するためには、ゲノム編集によって作出された作物・食品の届出を義務化することが大変重要です。安全性審査を義務付けず、届出も義務付けなければ、誰も知らないままに市場に出てしまうことを未然に防ぐことはできません。
 海外に対しても、労働省のウェブサイトや大使館、業界団体などを通じて自主的な届出をお願いすると厚生労働省の説明会(2月5日、東京)で説明されていましたが、法的拘束力がなくても海外の事業者から届出がなされるのか、おおいに疑問です。

 
3.    商業栽培(飼育)を想定し、消費者の選択権を担保するトレーサビリティ流通を確立してください。
 
消費者の選択の権利のためには、食品表示が不可欠です。報告書をまとめる議論のなかでも、表示の重要性について複数の委員から意見が出されました。ゲノム編集技術によって作られた作物や食品は、意見2に書いたように、ゲノム編集によるものかどうかを最終製品から科学的に検証することが困難です。したがって、トレーサビリティ制度の確立なしには表示もできません。トレーサビリティ制度の確立に厚生労働省のイニシアティブで取り組み、トレーサビリティが確立するまでは、ゲノム編集技術による食品を流通させないでください。
以上
【2019年2月27日掲載】

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