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生協の食材宅配【生活クラブ】
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自給、環境、働く場…。都市農業の可能性を求めて 「生活クラブ農園・あきる野」の挑戦

東京都あきる野市。JR五日市線の秋川駅から15分ほど歩いた所にある農園には、週末ともなると、都内近郊から生活クラブ東京(本部・世田谷区)の組合員が集まる。笑顔で泥まみれになる子どもや、協力してうね作りに励む夫婦の姿。生活クラブ東京があきる野市から認定された「認定農業者」として、市民参加型で運営する「生活クラブ農園・あきる野」の風景だ。

食べ続けるための参入

2019年度の入園者に向けたオリエンテーション。子どもたちも泥んこになって働く
「生活クラブ農園・あきる野」は、「農産物の生産と販売」と「組合員による農業体験、交流」を事業の2本柱として、2016年8月に開園した。前者は専任の農場長と有償援農ボランティアが運営する直営農場で、後者は組合員から入園者を募って運営する農業体験農園。体験農園は、10年に生活クラブ東京が提携生産者の協力を得て都内各地に開設した「のらっこ」の一つで「のらっこ あきる野」と呼ばれる。

なぜ、生活クラブが農業に参入するのか。農場責任者で生活クラブ東京の政策調整部政策推進課、冨澤廉さんは、「生活クラブは『食べる組織』です。しかし今、生産する側は危機的状況。組合員が参加して、農業を守り育てることはできないかと考えたのが、事業のきっかけです」と振り返る。

日本における農家の高齢化と減少は深刻だ。都市においてはさらにその度合いは強く、生活クラブ東京の提携生産者も、減少傾向が続いている。耕作地も年々減少しており、東京では数少ない農業振興地域であるあきる野市でも、休耕農地が広がる。

生活クラブ東京では、1980年代より都市農業の育成と強化を主要政策の一つに掲げ、2000年代には、農作業受託ネットワークNPO法人「たがやす」やのらっこの開設などに取り組んできた。それらの経験を生かし、冨澤さんたちは、一般社団法人「東京都農業会議」に何度も足を運び、生協としての農業参入の計画を作成した。

農園は、栗の老木と雑草が生い茂る休耕農地を一から開墾した。作付けする品種は、野菜本来の味を楽しむことができる固定種にこだわる。種子の保存や、地域に根ざした野菜作りのため、江戸東京野菜の自家採種にもチャレンジしている。開園から3年。土と野菜がなじみ、育ちが良くなってきたという。
 
生活クラブ東京・政策調整部政策推進課、冨澤廉さん

参加者の広がりを

農園の今の大きなテーマは、地域の人たちとの関係づくりと、農園に関わる人をどう増やすかだ。そこで、18年から直営農場で収穫体験企画を実施している。生活クラブ東京「農あるまちづくり委員会」担当理事で農園の推進役である豊崎千津美さんは、「場を知ってもらう、実際に採ってもらう、食べてもらう、そこで体験したことや感動したことを他の人にも伝えてもらうという機会を増やせました」と振り返る。

夏には枝豆とトウモロコシ、秋にはサツマイモなど旬の野菜を収穫し、その場で試食、お土産もある。18年には3回開催して東京全域から300人を超える組合員が参加した。「印象的だったのは、帰っていく人が皆笑顔だったこと。遊び回って帰ろうとしない子どもの姿もあり、こういう場が大事だと実感できました」と豊崎さん。

こうした農園を各地に増やしていくには、収穫した野菜を食べる人がいなくてはならない。流通ルートの拡大は必須だ。生活クラブ東京では、農園野菜の購入者の登録を募り、供給を行う。30名からスタートして、18年度末現在90名。19年度上期には120名を目標にしている。豊崎さんは、「固定種で無農薬の野菜の姿を知ってもらうことが大事」だと話す。

「いつものカタログで選ぶ野菜と、農園の野菜は明らかに違います。規格には合わせますが、形はそろっていません。でも、とてもおいしい。届く品種や量も確実でなく、欲しいものを欲しい時に欲しい量とはいかない。旬のものをどう食べるか、暮らし方の変化も必要なのです」
 
生活クラブ東京「農あるまちづくり委員会」担当理事、豊崎千津美さん

「農福連携」を視野に

農園に掲げられたNON―GMO(遺伝子組み換え作物)フリー宣言の看板

今後は、「農福連携」の取り組みも進める予定だ。農業参入する際に描いた長期的なプランでは、農の担い手を増やすのも重要なテーマだったという。

「担い手不足の一方、働きたいけど働けない障害を持つ人たちもいます。日中の農作業は、精神疾患などへの医療効果もあるともいわれ、農と福祉が共に互いの課題を解決できないかと考えています」と冨澤さん。その一歩として、19年5月から、都立の特別支援学校と生活クラブ東京が連携した園芸の授業がスタートした。校内の畑での授業風景を見て、冨澤さんが教員にアドバイスをする。今後は、直営農場に来てもらって、収穫作業などの手伝いをしてもらう予定だという。「生産者は今は自分たちの野菜作りで精いっぱいですが、これをきっかけに、いずれ少しずつ一緒に、地域の取り組みにしていければと考えています」

生態系を守る

農園では、事業にはならないものの、力を入れていることがある。それが、生活クラブ東京が15年ほど前から進めてきた「生きもの環境調査」だ。組合員が生産者のもとを訪ね、一緒に畑の生態系を観測し、生き物が多様に生息できる生産環境を維持していくためにはどうすべきか考えるという活動だ。「農産物は輸入できても、環境は輸入できないということを子どもにも知ってもらう大事な活動なのです」と冨澤さん。

「農作業をしていると、害虫ばかりに目が行き農薬を使ってしまう。例えば、ニンジンにとってキアゲハの幼虫は害虫ですが、どれだけのニンジンを食べるかは分かっていないのです。農園でも、キアゲハは見かけるが、ニンジンが栽培できなくなるほどではない。農薬を使わずに共存できるんじゃないのかな、ということが調査を通じて分かってくるのです」

自分で食べる野菜を、自分で育て、育てる場所のことを知る。そして、生産・消費の垣根を越え、農地を農地として守る。

都市農業には、食料供給以外にも、環境保持や教育、防災機能などさまざまな可能性がある。生活クラブ農園・あきる野は、実践的にそれを追求し、そのモデルを提示していこうと、さまざまな課題に取り組む。
 
撮影/丸橋ユキ   文/佐々木隼也

『生活と自治』2019年6月号の記事を転載しました。

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