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豊かな水と大地がはぐくむ 米、野菜、農の営み JA加美よつば【米・青果物ほか】


JA加美よつばは「ささゆた香」と「まなむすめ」の米の提携生産者。加工用トマトや白菜など、消費材の原料も生産する生活クラブの「主産地」のひとつだ。組合員がしめ飾りやタマネギの生産に参加しながら、30年以上も交流を続けている。

雪解け水が育てる米

宮城県北西部、奥羽山脈を源とする支流を集めて太平洋に注ぐ鳴瀬川流域に、加美町、色麻しかま町の田んぼがひろがる。JA加美よつばが栽培する米、「ささゆた香」と「まなむすめ」の生産地だ。

加美町、色麻町に加え、大崎市など1市4町にひろがる豊かな水田地帯は「大崎耕土」といわれる。この地方は、東北地方の太平洋側に位置し稲が花を咲かせたり穂をつけたりするころに、冷たく湿った季節風「やませ」が吹くことがある。また、奥羽山脈から仙台平野へ続くなだらかな傾斜地にあり、洪水や渇水が起こりやすい地形だ。厳しい自然環境の中で稲作を続けていくために、鎌倉時代より、取水堰(せき)や水路、ため池を築き、きめ細かな水管理を行ってきた。こうして造られた豊かな大地で、米をはじめ、さまざまな作物が生産されている。

JA加美よつば管内の水田には、5月になってもまだ残雪が見られる船形山の雪解け水が直接流れ込む。米穀課長の今藤和幸さんは、「水が冷たくてなかなか生育はすすまず、平場と比べると収量は少ないです。けれど最初に山から流れてくるきれいな水で育てているということで『清流米』と呼んでいますよ」。田植えの時季は、透明な水が音を立てて勢いよく水路を流れる。

田植えを待つ稲の苗
JA加美よつばの営農販売部米穀課長の今藤和幸さん
田んぼや畑からは標高553メートルの薬萊山(やくらいさん)が眺められる

30年以上を経て

生活クラブには30年以上も前から、ここで作られる正月用の「しめ飾り」を愛用する組合員がいる。近隣3町が合併して加美町になる前、旧中新田なかにいだ町の女性グループ「中新田生活改善クラブ」が活動していたころからのつきあいだ。

2003年、加美郡の中新田町、小野田町、宮崎町が合併し、加美町となった。それに先立ち、それぞれの町のJAと隣町の色麻町のJAが集まり、JA加美よつばが誕生した。

同JAでは、米離れがすすむ消費者の動向を懸念し、米だけに依存していては先が厳しいと、しめ飾りやタマネギに加え、加工用トマト、白菜、平田牧場へ出荷する飼料用米の栽培などに次々と挑戦した。また、生活クラブの提携生産者の角谷文治郎商店(三河本みりん)や精華堂あられ総本舗(あられ類)、マルモ青木味噌醤油みそしょうゆ醸造場(信州田舎味噌)に、有機栽培米を原料として供給するなど、加工品の原料の重要な生産地としての役割も果たしてきた。
しめ飾りの材料のひばを提供する近所の米農家の門脇忍さん。ひばは防風林の役割も果たす
門脇幸さん。40代の頃からしめ飾りを作っている。「豊作でありますように、幸せが家から出ていきませんようにと願っていますよ」
稲を打ちやわらかくし、縄をなってしめ飾りに形作る
清流が水路から田んぼへ
きれいな稲穂を選んでしめ飾りの材料にする
豊作の喜びと実りへの期待をこめて手作りする

「米の主産地」へ


生活クラブは米の生産を軸に、青果物や飼料用作物、また、大豆、ナタネ、加工用トマトなど消費材の原料を栽培する生産地を「主産地」として位置づけている。ともに国内自給をすすめるパートナーだ。

13年より、JA庄内みどり(山形県)、JA上伊那(長野県)、JAなすの(栃木県)に加え、JA加美よつばが主産地に仲間入りした。JA加美よつばは新たに米の提携を開始するに当たり、特徴のある米の取り組みをと考え、ささゆた香とまなむすめを選び、15年産より組合員の元へ届け始めた。

ささゆた香は、大崎市にある宮城県古川農業試験場(古川農試)で、ササニシキにひとめぼれを掛け合わせて育種した。ササニシキのようなさっぱりした味と香りを持ち、農家にとっては育てやすい米だ。

通常、米の品種登録は育種番号ではなくササニシキやひとめぼれのような名称で行われる。ささゆた香の育種開発が行われた時、東日本大震災があったこともあり名前が決まらず、品種登録は育種番号「東北194号」のままだった。そこで、生活クラブが組合員や生産者から愛称を公募し、つけた名前がささゆた香だ。

東北194号は他にも「ささむすび」「いくよちゃん」など、地域によって別の愛称も持つが、JA加美よつばは、生活クラブとの提携を尊重し、管内ではささゆた香を定着させている。

まなむすめも、古川農試で、97年に品種登録された米だ。食味の良いひとめぼれと、単位面積当たりの収穫量が多い「チヨニシキ」を交配育種した。適度な粘りがありふっくらした食感で、比較的手ごろな価格も魅力だ。

「いつかは生活クラブと米の取り組みを、ということを念頭に提携を続けてきましたが、こうして振り返ると、他の生産者とのさまざまなつながりがあったことがわかります」と今藤さん。提携産地で援農や就農研修などを企画する「夢都里路ゆとりろくらぶ」にも積極的に参加してきた。有機栽培米の種まきや加工用トマトの収穫、しめ飾り作りなどの農業体験を通して、消費者との交流を深めることもできたと言う。

未来も続く農業を

加美町と色麻町でも、他の産地と同じように農家の高齢化や担い手不足は深刻な問題だ。JA加美よつばでは集落営農をすすめ、地域で農業機械を共同で使ったり、協力して農作業を行ったり、資材を一括購入するなど、省力化や経費節減を目指す。個々の農家の経営から集落全体で取り組む経営を構想し、現在61の営農組合が組織されている。

「働き手が減り、家族労働が限界にきている農家もあります。そういった人たちも集落内で協力し合いながら農業を続けることができます」と今藤さん。それぞれの地域によっても状況が違うので、地域を越えて一緒に作業できるような組織づくりも考えている。

加美町の伊藤貴弘さんは「加美清流米クラブ」の代表だ。4.5ヘクタールの田んぼと、タマネギ、ホウレンソウ、トマトなどの圃場ほじょうを持つ。父の孝平さんといっしょに、ささゆた香を中心にひとめぼれ、飼料用米などの米を栽培する農家の19代目。迷わずこの仕事に就き、28年間米作りを続け、今は自分の田んぼの他にも、4.5ヘクタールを手伝っている。「機械を工夫するなど、若い人たちが就農し農業を続けられるようにしていきたい」と、効率よく作業ができる方法を考えている。
雪解け水が、勢いよく水路を流れる
加美清流米クラブ代表の伊藤貴弘さん(左)と父親の孝平さん。加美町で米を作る、19代続く農家

手作りのしめ飾り

JA加美よつばでは、正月用のしめ飾りが、30年前と変わらない形で作られている。

「加美町農村生活研究グループ連絡協議会中新田創作部会」代表の門脇みゆきさんは、2ヘクタールの田んぼでまなむすめとささゆた香を栽培する。その稲わらと穂は、しめ飾りの材料にもなる。現在、稲わらは、稲刈りと同時に細かく切断して田んぼにすき込んでしまうことが多い。「稲刈りも共同作業ですが、私がしめ飾りを作っているのを知っている人は、材料のわらをどうしようかと声をかけてくれるんですよ」

幸さんの悩みは作り手が少なくなったことだ。「新しい人に声をかけてもなかなか集まりません。以前は収入のために競って作ったものですが、今は兼業する人も増え、苦労して作らなくても、ということのようです」

それでも、自分が育てた米を食べている人の家の玄関に飾られるのではないか、との期待を込めて、ひとつひとつ手作りする。「今の私の目的は、縄をない、作っているところを子や孫に見せることです」

農村の文化を守ることがどこの地区でも難しくなっているという。主食である米の、生産風景やそこで人々が営む暮らし、文化にまでおもいをせながらおいしいご飯をいただきたい。

左から、営農販売部園芸課の石川俊行さん、門脇幸さん、営農販売部園芸課の古内大喜さん

撮影/田嶋雅已    文/本紙・伊澤小枝子

田んぼに囲まれたトマト作り

加工用トマトの苗。板垣さんは種をまいて育てる
5代続く農家の板垣昌英さん(左)と正子さんは、加工用トマトを作り始めて4年目。「来年も作りますよ」
美郡色麻町の板垣昌英さんは、4年前に加工用トマトの栽培を始めた。米作りひとすじだった農家の5代目だが、減反政策により一部の田を畑にして、そこで大豆を生産していた。声をかけられて加工用トマトを育てるようになり、現在、夏は緑の田んぼに囲まれた10アールの畑で赤いトマトを収穫する。

加美郡にはかつて、大手ケチャップメーカーの工場があり、加工用トマトの栽培が盛んな時期があった。しかし露地栽培のトマトは雨に当たると売りものにならなくなる。収穫は夏の暑い中、地面を這うようにして行う重労働だ。1970年代にトマトピューレなどの輸入自由化がされ、外国より安い原料が入るようになったこともあり、作る人はだんだんいなくなった。

この地域で、トマトケチャップ用の加工用トマトの栽培が再び本格的に始まったのは、2009年。しめ飾りやタマネギの取り組みを通して交流があった生活クラブ連合会の提携生産者、コーミが、トマトケチャップの原料の生産を持ちかけた。現在30人の生産者がほぼ4ヘクタールの畑で170トン前後を生産する。

しかし昨年は雨のため、収量は例年のほぼ半分に落ち込んだ。全国的にも異常気象で加工用トマトが不足し、生活クラブ連合会のトマトケチャップも、一時原料変更を余儀なくされた。JA加美よつば園芸課の石川俊行さんは「24年までに生産者を40人、生産量を300トンに増やしたいです」と大きな目標をかかげている。

生産者の中には経験者もいるが、板垣さんにとって、加工用トマトの栽培は初めての試みだった。種をまき、苗を育てて定植する。連作障害を避けるため場所は毎年変わり、昨年のトマト畑は、今年は田んぼだ。畑には稲わらを敷き、雑草が育たないようにする。土が直接トマトにつかないので実がきれいだ。

「4年たって栽培に自信がついたとまではいきませんが、作り方はわかりました。今、ひと夏に7トン以上出荷します。一番悔しいのは、収穫期に雷雨に遭うことです」。夏に気温が上がり、温まった実に冷たい雨が当たると表面が割れてしまい、売り物にならない。「暑い中で収穫して、20キロ入ったケースを運ぶのは重労働です。でも、おもしろいと思い興味を持った仕事なので、つらくはないです」

かたわらで、妻の正子さんは、「加工用トマトをやっていると言うと、『すごい大変じゃない』とよく言われますけど、そんな風に思ったことはないですよ」。自分たちには合っていると思うので来年も続けますと、口をそろえた。

7月が終わり、盛夏を迎えるころ、田んぼに囲まれた畑では、トマトが赤く色づいていく。
 
定植を待つ畑。昨年は田んぼだった

撮影/田嶋雅已    文/本紙・伊澤小枝子
『生活と自治』2019年7月号「新連載 ものづくり最前線 いま、生産者は」を転載しました。

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