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カネ換算できない 「価値」【タイヘイ株式会社】


生活クラブ連合会は、組合員が共同購入する「消費材」が、どんな社会的な課題の解決を目指しているかを分かりやすく示した「消費材10原則」を2017年に策定した。今号では第2原則の「遺伝子操作された原材料は受け入れません」と第7原則の「3Rを推進し、さらなる資源循環を進めます」の具体化に尽力する「タイヘイ」との提携の歴史を追った。

日用品が買えなくなる!?

エクソン社やシェル社など石油元売大手5社が原油価格を30%引きあげ、原油の供給量を1割削減すると発表したのは1973年10月。日本の消費者の間には「トイレットペーパーや合成洗剤が店頭から消える」「さまざまな日用品が買えなくなる」というまことしやかな噂話が拡散し、各地で日用品の買い占め騒動に発展。買い占めの対象は、みそやしょうゆにまで広がった。

この年、生協設立5年目を迎えた生活クラブ生協も組合員から受注した食料品や日用品の確保に頭を抱えていた。すでにオリジナルブランド品の開発に着手していたが、まだ日本生協連の扱う「COOP(コープ)商品」の供給に頼らざるを得なかったからだ。

まずは「醸造期間」を明示

歴史を感じさせる千葉工場

ここで急ピッチで進められたのがオリジナル規格品(=消費材)の「Sマーク醤油しょうゆ」の開発で、千葉県八日市場町(現・匝瑳そうさ市)のタイヘイが製造を担当した。この提携の起点には、Sマーク消費材第一号の「信州田舎みそ」の生産者・青木味噌みそ醤油醸造場(長野市)とタイヘイとのつながりがあった。
生活クラブの組合員との交流会は「常に緊張しました。予測不能な専門的な質問が数多く出るからです」と伊橋弘二さん

「当社が青木さんのみそをタイヘイブランドで、当社のしょうゆを青木さんが青木ブランドで販売するというお付き合いがかねてからありました。その青木さんが生活クラブを紹介してくれたのです」と同社食品事業部の伊橋弘二さん(65)。

こうして74年に開発されたSマーク醤油は、脱脂大豆と小麦に種こうじを混ぜ、これに塩と水を加えて「もろみ」にしてから木桶で1年かけて熟成した「本醸造しょうゆ」だった。

当時、日本には3298社のしょうゆ醸造場があり、129万キロリットルのしょうゆが生産されていた。その多くは本醸造品だったが、どれも醸造期間は非表示。「徳用品」には希塩酸で分解中和した脱脂大豆を2カ月前後の醸造期間で仕上げる「新式しょうゆ」が使われ、化学調味料を加えた「アミノ酸添加品」も出回っていた。

しょうゆの醸造期間が製品に表示されないのは、日本農林規格(JAS)に醸造期間の規定がないとの事情がある。だが、生活クラブは発酵調味料の本質的な価値は醸造期間で決まるとの考えに立ち、Sマーク醤油の醸造期間を明示し続けている。一方、しょうゆ業界はいまも醸造期間を明らかにしようとしていない。
 

脱脂大豆を丸大豆に

醸造期間はもとより、原料と製法が「わかる」Sマーク醤油の共同購入は75年にはじまり、2リットル瓶入りが1本390円という組合員価格が設定された。これは容器代を除いた中身価格で、瓶を返却できない場合には1本70円を購入者が支払うリンク制のたまものといえた。

Sマーク醤油への組合員の信頼は厚く、初回注文で計画数の倍近い1万5000本の受注があった。当時の生活クラブの組合員は約2万3000とされているから、約65パーセントの組合員の購買力が集まったことになる。

しかし、Sマーク醤油の原料となる脱脂大豆には、油分抽出の際に使用されるノルマルヘキサンの残留リスクが付いて回った。このため、その解決を求める組合員が多いのも事実だった。

「当社も生活クラブの組合員の声に何とか応えたいと検討はしていました。それには原料を丸大豆に変更しなければならず、生産コストや組合員価格への影響を考えると、そう容易には実現できませんでした」(伊橋さん)

そうしたなか、原料変更に先行して生活クラブとタイヘイが取り組んだのが、Sマーク醤油の容器を2リットルから1リットル瓶に変更する小容量化だった。

「規格容量を小さくすれば、コストアップが不可避で、消費材価格の上昇要因にもなりますから、簡単には取り組めないテーマでした」

この難題を解決に導いたのが、「やってくれるなら、月間利用実績2リットル瓶5万本分(当時)に相当する10万リットルのSマーク醤油の利用促進運動を組合員に提起するから」という生活クラブからの申し入れだった。その後、約束通り、「生活クラブの組合員は互いにしょうゆの購入を呼びかけ合い、約束した利用量を実際に集めてくれました」

課題は容器にもあった。2リットル瓶入りSマーク醤油は王冠で閉栓され、開栓後はプラスチック製のキャップを瓶の口にかぶせて保管できるようになっていた。ところが、小容量化に使おうとした既製品の1リットル瓶は口径が細く、従来の王冠とプラスチックキャップが使えなかった。こうなると既存の瓶を使うには多くのコストがかかる設備投資が求められる。そこでタイヘイが選択したのが「生活クラブ専用の1リットル瓶を当社の費用負担で確保し、製造設備はそのままという方法でした」と伊橋さんは言う。
左から2008年開発の900ミリリットル規格、お役御免となった1リットル特注瓶、そして懐かしの2リットル瓶
木桶(きおけ)はもはや「絶滅危惧品」で、竹製の箍(たが)も金属製となっている。生活クラブが提携30周年を記念し、タイヘイに木桶を寄贈したのは2005年だ

生活クラブ専用瓶の「悲哀」

1リットル瓶に入ったSマーク醤油が組合員に届くようになったのは87年。2リットル規格のときと同様に、空瓶が返却できない場合は1本につき70円を支払うリンク制が採用された。

93年、生活クラブは使い捨て社会の流れに歯止めをかけようと、消費材容器のリデュース(Reduce=削減)、リユース(Reuse=再使用)、リサイクル(Recycle=再生使用)を進める「グリーンシステム」を導入した。これにより、タイヘイが保有する生活クラブ専用の1リットル瓶は「お役御免」となり、リユースが可能な「Rびん」への変更を求められた。

「むろん、大ショックですよ。せっかくつくった生活クラブ専用のしょうゆ瓶が使えないわけです。けれども年間50万本以上を継続的に利用してくれる生活クラブの組合員の要望には誠実に応えようと社内で話したのが忘れられません」と伊橋さんは当時の胸の内を打ち明ける。

Sマーク醤油の1リットル瓶が再利用可能な「Rびん」になったのは94年。その後、タイヘイは生活クラブの消費材容器をすべてリターナブル(再使用可能)な「Rびん」に変更し、グリーンシステムの推進を強力にサポートし続けてくれている。

また、96年にタイヘイはSマーク醤油の原料を脱脂大豆から米国産丸大豆への変更に踏み切り、生活クラブの組合員が熱望した1リットルのRびんに入った丸大豆醤油が誕生した。この年、全国でしょうゆの生産に使われた脱脂大豆は約21万トン超だったが、うち丸大豆は約2万トンという統計データが、何よりSマーク醤油の「貴重さ」を物語る。

その苦労をあざ笑うかのように、同年、米国モンサント社(当時)が世界初の遺伝子組み換え作物(GMO)を開発した。この知らせを受けた生活クラブは、組合員が共同購入する全食材からGMOを追放する対策に97年に着手した。

みそとの「コラボ」再び


 
それまでタイヘイは米国の農家が契約栽培した「バラエティ・ビーン」と呼ばれる食用大豆を使用していた。その農家が契約の打ち切りを突然打診してきたという。この背景にも、米国内でGM大豆の作付け量が急速に進むという厳しい現実があった。

このとき、タイヘイの原料確保に貢献したのが、収穫後に(PH=ポスト・ハーベスト)散布する農薬不使用(F=フリー)の丸大豆だけを日本まで運ぶために、JA全農と生活クラブが構築した分別流通システムだ。この仕組みは、輸入農産物のリスクを低減回避する「疑わしきは使用せず」の予防原則の観点から導入された。

しかし、GM大豆の栽培は広がるばかりで、米国産大豆の9割以上がGMという事態に陥った。むろんNON―GM大豆の分別は困難を極め、タイヘイは再び原料調達に苦しんだ。

そのとき、「救いの手を差し伸べてくれたのも青木味噌さん。青木さんは中国の農場とのつながりが深く、みそ用大豆を独自に契約栽培して入手していました。その農場を親切に紹介してくれたのです」

こうして完成したのが中国産有機大豆を7割、JA全農経由で調達した国産大豆を3割使用した現在の丸大豆醤油であり、国産大豆だけでつくる国産丸大豆醤油だ。

タイヘイと生活クラブが提携して45年。この歴史を「カネには換えられない価値をともに生み出し、社会に提案してきた足跡」と伊橋さん。

「生活クラブとの提携は単なるビジネスじゃないんですよ。だから厳しいし、楽しくもある。ここにこそ妙味があるとわたしは思っています」

伊橋さんの後継者として製造現場を任された加瀬一嘉さん(47)。「日々教わることばかり。でも本当に楽しいですよ」と笑顔で話す
撮影/魚本勝之  文/本紙・山田 衛

『生活と自治』2019年8月号「新連載 産地提携の半世紀」を転載しました。

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