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プラスチックを分別。「漂流海藻」を肥料に

福岡県宗像市の権田幸祐さん(35)は漁師歴19年。巻き網船「共進丸」の機関長として働く傍ら、日本の漁業者を取り巻く環境の厳しさをインターネットを通じて発信し続けている。この間、権田さんが力を注ぐのがプラスチスックごみに起因する海洋汚染対策だ。そのカギは「漂流海藻」の回収と資源化にある。
 

資源枯渇に魚価低迷、進む海洋汚染

うっすらと雪化粧をしたように、砂浜へと続く細い道がうっすらと白く染まっていた。「すべてプラスチックごみですよ。海岸線に打ち寄せられた巨大な発泡スチロールが風化して細かく砕け散り、風に飛ばされ、降り積もっていくんです」

案内役を買って出てくれた福岡県宗像市在住の権田幸祐さん(35)が、やるせない表情でつぶやいた。権田さんは地元の宗像漁協の組合員で、同漁協所属の巻き網船「共進丸」の機関長として働く。漁師歴19年。いまでは若手漁業者のけん引役として周囲の期待を一身に背負うまでになった。

「出漁しても魚がおらんから思うようにとれん。何とか水揚げがあっても、今度は売れん。たとえ売れても驚くほど安い。こんな悪循環がいつまで続くのか、自分たち漁業者には明日は無いんじゃないかと不安な毎日を送っています」と権田さん。そんな過酷な現実の根底には、地球温暖化に起因する海水温の上昇をはじめ、漁船の大型化や漁具の飛躍的な進歩が生む乱獲、水産物取引のグローバル化などがある。

海洋汚染も深刻だ。「近年、マイクロプラスチック問題をメディアが大きく取り上げ、私たちが日々の暮らしで便利に使っているプラスチック製品の最終処分が問われていることが明らかになってきました。それを僕たち漁業者は皮膚感覚で実感し続けています」


「海のモップ」を生かす道が

共進丸の出漁海域は玄界灘沖だが、この数年、操業中の船のスクリューに「漂流海藻」が絡みつき、船がまったく動かなくなる事態に直面する機会が増えてきたという。漂流海藻の正体は海底の岩礁に生えるホンダワラ類。新芽が出る春先になると自然と岩礁から離れ、海洋を漂いながら海岸に漂着するもので、特に珍しくもなく、たとえスクリューに絡みついても簡単に切断され、船を止めるようなことはなかったという。

それが一転、船の航行を妨げるまでになったのには「漂流海藻が漁具のロープや尋常ではない量のプラスチックごみを付着しているからです。かねてから漂流海藻は海のモップとも呼ばれ、漂流ごみの掃除をしてくれていたのですが、船を止めるようなことはなく、やはり問題はプラスチックごみの異常な増加にあるとしか思えませんでした」

権田さんは漁師仲間に呼びかけ、スクリューに絡みつき、切断された漂流海藻を宗像漁港に持ち帰っては水槽に沈め、さらに滅菌海水で洗浄してはプラスチックごみを取り除くという分別に取り組んだ。「重い海藻は沈み、プラスチックは浮きますよね。浮いたものを除去し、さらに洗い落とす作業を繰り返しました。問題は分別した海藻とプラスチックの資源化でしたが、僕らの取り組みをSNSで発信すると、福岡県内の専門家から返信があり、多くの提言を頂戴できたのです」

こうして始動したのが、海藻は農業用肥料として活用し、プラスチックごみは北九州市に先進的なリサイクル工場を保有する「日本環境設計」に再資源化を依頼するという計画だ。


海藻の肥料化には「水分が多すぎるし、塩分の強さが災いするのではないか」との指摘もあったが、いちごをハウス栽培する知人に試験導入を依頼したところ、「問題なし」の報告を受けている。日本環境設計からも「分別を徹底した一定量の廃プラが集まれば、リサイクル製品を当該製品の製造先に買い取ってもらう道も開けるだろう」との回答を得た。権田さんは言う。

「宗像漁業者は海岸線の清掃を定期的に担っていますが、現在はどんなに懸命に片付けても、1、2週間後には海岸が漂着ごみでいっぱいになるような状態です。日本海側は海流の関係で中国大陸や朝鮮半島からのごみが大量に流れ着くからです。これまでは集めたごみの処分は市役所に委託してきましたが、今後は分別を徹底し、漂流海藻同様に資源化を進め、収益を漁業者に戻していけるような仕組みを構築したいです」


かつて宗像の海女の仕事は畑作のための海藻採りだったという記述が郷土史には見られると権田さん。ちなみに有吉佐和子の小説「複合汚染」にも、化学肥料の使用が一般的になる高度経済成長以前には、有機堆肥として海藻が使用されていたことを示す記述がある。

撮影/魚本勝之   文/生活クラブ連合会 山田 衛

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