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「自主運営・自主管理」の原点【生活クラブたまご】


生活クラブ連合会は2017年に「生活クラブの消費材10原則」を策定した。今号では「安全性を追求します」(第1原則)、「遺伝子操作された原材料は受け入れません」(第2原則)、「国内の自給力を高めます」(第3原則)を体現した消費材の鶏卵に注目してみた。

「腐った卵」から学んだ

河野照明さん

生活クラブ生協が鶏卵の共同購入を開始したのは1970年7月。問屋から段ボール1箱10キロ入りの鶏卵を仕入れては、箱単位で班に配達し、組合員が分け合うスタイルだった。初回配達は53箱で50の班が参加した。

「子どもが多い班には個数が多く入ったSサイズの卵、大人が多い班にはLサイズの箱を届けるようにしていた。L玉が大き過ぎるとよく組合員に叱られた」と話すのは河野照明さん(75)だ。
生協設立以前から生活クラブの活動に参加し、生協設立後は専従職員として働いた河野さんは、生活クラブ埼玉の専務理事、生活クラブ連合会専務理事を務めた。
「鶏卵の共同購入を通し、組合員と職員が直面した出来事が、その後の生活クラブの運営方法や消費材開発の基本になった。そのことを多くの組合員に知ってほしい」と言う。

当初、生活クラブは「前日発注・翌日配達」方式を採用しており、本来はどの小売店より新鮮な卵が手に入るはずだった。ところが、組合員に届いた鶏卵に腐ったものが混入する事故が発生する。

当時、養鶏場からの集卵は週に1~2回が一般的で、集めた鶏卵を問屋が保管することがままあった。事情を知る小売り業者は卵の保管状態を知った上で仕入れ、腐ったものを取り除く「事前選別」を施し、そのロスした分の費用を価格に上乗せして販売していた。
むろん、生活クラブは「事前選別」などするはずもなく、受け取った鶏卵の状態を調べる検品を組合員自身が担い、腐っている分は返金すると決めていた。これが「消費材の規格や品質を自分たちの目でチェックし、品質を管理する仕組みの起点となった」と河野さん。
「たとえ、その道のプロでも鶏卵の生産から消費までの流れを全部把握している人はいないに等しい。分かる人がおらず、教えてもらえないなら、自分たちで調べて、どうするかを考えて決めていくしかない。それが、いまも自主運営・自主管理という言葉で語られている生活クラブの仕組みの始まりだった」

鶏卵の共同購入は生鮮品を週単位で共同購入し、配達品を分け合うために必要な班の規模や運営方法を考える契機にもなった。鶏卵10キロを無理なく利用できる人数は何人か、受け取りや分配方法をどうするかも、職員ではなく組合員が自ら決めた。
こうして71年5月に実現したのが神奈川県の湘南養鶏組合との提携だった。このとき、無洗卵(洗浄剤で洗わない)かつ無選別の鶏卵を、繰り返し使える専用ケースで配送するといった原則も確立された。

「鶏卵を個別包装して出荷する施設(GPセンター)を多くの組合員が訪問。サイズ選別や塩素系の洗浄剤を使う現場を見て『薬品で洗わないでほしい』『使い勝手は自分たちで考えるから、大きさ別に分ける手間はかけなくていい』と言い、自分たちで取り組みルールを作っていった。それが組合員の自主監査の始まりにもなった」

「生産原価保障」の議論から

純国産鶏種も導入

鶏卵の価格設定も工夫した。当時の卵価は毎日の相場に左右され、配達日によって組合員価格が異なる場合がままあった。河野さんは「クリスマス前日が最も高く、翌日は極端に下がるという値動きには苦しめられた。クリスマス前の共同購入はいやだと言い出す班も出る始末だった」と苦笑する。
この対策として生活クラブは1週間の鶏卵相場を平均し、翌週の仕入標準価格を設定した。小売業や他生協にはまねできない画期的な試みだったが、「市販と比べて高い」と不満をもらす組合員も少なくなかった。

その後、生活クラブは鶏卵価格を週平均から月平均に変更したが、相場連動は変えられなかった。そこで安定価格による年間供給を目指して提案されたのが「生産原価保障方式」だ。「自分たちが求める品質の鶏卵を安定的に手に入れるためには、生産者が自分たちの暮らしを守りながら、持続的な生産を続けていけるようにする必要があると考え、生産コストを反映した価格設定を導入しようと決めた」と河野さんは振り返る。

提携から3年、湘南養鶏組合の総出荷量の1割以上を生活クラブの組合員の利用が占めるようになったが、検卵の不徹底から事故が多発した。生活クラブは再三、改善を求めたが一向に変わらない。こうして新たな提携先を探す過程で出会ったのが、湘南養鶏組合傘下の一つで埼玉県に本社を置く鹿川グリーンファームだった。
74年3月、開放型鶏舎を使用し、親鶏の健康管理にも努める鹿川グリーンファームと提携し、産卵後24時間以内の鶏卵が10キロケース(30個トレイ6枚・180個以内)で班に届くことになり、鮮度問題は解決した。その後日曜から金曜日までの6曜日分の鶏卵を共同購入するシステムが完成する。

すでに提案されていた「生産原価保障方式」をめぐっては「なぜ、生産者の暮らしを私たちが保障しなければならないのか」との疑問が組合員から出された。また、生産者も生産コストを明らかにする情報開示に同意すれば「価格引き下げの口実にされかねない」という不安から強い難色と抵抗を見せたという。
しかし、「信頼関係が真の提携を生む」という合意に基づく双方の歩み寄りから、77年6月に生産原価保障方式が導入された。この方式が市場流通の不透明なカラクリを明らかにし、自分たちに必要とする品質で、納得できる価格の材を開発するという生活クラブの基本姿勢を確たるものとした。河野さんは言う。

「鶏卵の共同購入は事故からのスタートだった。その事故から何を学び、次に何かが起きたときにどう対処するかが常に問われている。むろん、事故は起きないほうがいいし、起こしてはならない。だが、いざ起きてしまったら、それを糧に新たな可能性に挑戦していく。それが生活クラブの強みじゃないかな」

(株)生活クラブたまご社長 渡部孝之さんに聞く

今後も「業界常識」に挑戦
日本の鶏卵生産は農場の大規模化と「ヨード入り」などの付加価値を付けた特殊卵の導入といった鶏卵の"差別化"の流れのなかにある。
こうしたなか、生活クラブ生協は生産農場を複数化する「地域分散型養鶏」を方針に掲げ、国内7生産者と提携。生産者と連携し、飼料の安全性を追求するとともに「食」の自給力の向上を図り、国産鶏種の導入にも挑戦している。

この歩みについて、生活クラブたまご代表取締役社長で、生活クラブ連合会常務理事の渡部孝之さんに聞いた。

「えさ」の中身を考える

生活クラブたまご(旧・鹿川グリーンファーム)では、生活クラブと提携した1974年から、より健康な親鶏の飼育を目指し、鶏に与えるえさを飼料メーカーの製造する完全配合飼料から、当社が原料を指定し、その配合割合を決めるオーダーメードの配合飼料に切り替えました。

同時に鶏の生理にも配慮し、緑餌を与えるなどの工夫もしてきました。しかし、主要な飼料原料のトウモロコシや大豆カスの大半は輸入に頼らざるを得ないのが実情です。こうした輸入穀物には運搬中に害虫やカビの被害が発生し品質低下を招きかねないという課題があります。それを防ぐためには収穫後に農薬を散布する必要があります。

生活クラブは91年に収穫後の穀物に農薬を散布しないポストハーベストフリー(PHF)の飼料用トウモロコシを分別管理(IPハンドリング)して輸入する実験に挑戦し、その導入に成功しました。これが97年以降の遺伝子組み換え対策に大きな力を発揮することになりました。

生活クラブたまごでは飼料用米の導入にも力を入れてきました。当初は「鶏に米を食べさせるの?」といぶかる声も多かったのですが、鶏卵の食味などには影響を及ぼさないこともわかり、2008年から本格導入(30%配合)しました。これが飼料自給率の向上に寄与したのはいうまでもありません。現在、なたねの搾りかすはオーストラリア産の遺伝子組み換えでないもの(NON-GM)ですが、今後は国産なたねの搾りかすも飼料に配合できるよう検討しています。

卵を産む親鶏は「国産」

日本の鶏卵自給率は95%ですが、卵を産む鶏の約94%が外国から輸入されています。生活クラブと提携する鶏卵生産者は1990年から純国産鶏を扱う岐阜県の後藤孵卵場と提携し、日本の風土に適した強健で病気にも強い品種の「さくら」と「もみじ」を導入。ヒナから一貫飼育体制を採用しています。

鳥インフルエンザなどで親鶏の輸入が止まれば、日本の鶏卵生産は止まる恐れが高いとされています。つまり、食料の安全保障の面からも国産鶏種の意義は大きいわけです。さらにアニマルウェルフェア(動物福祉)の視点から、鶏舎内で自由に動き回れる鶏が産む「平飼いたまご」の共同購入も始まりました。

採卵日表示が増えてきた

99年に食品衛生法が改定され、「生で安心して食べられる期限」として、鶏卵に賞味期限表示が義務づけられました。市販品の大半は「パック後14日」を賞味期限とし、半数を超える商品にパック日と賞味期限双方が表示されています。

これに対し、生産者と直接提携することで鮮度を重視する生活クラブは法改定以前から「採卵日」を明記してきました。パック日は採卵日とは異なる場合が多々あり、鮮度を正確に伝えることができないと考えたからです。かつては「採卵日表示は非常識だ」という販売者が多かったにもかかわらず、最近はスーパーで販売されている鶏卵にも「採卵日」を表示するものが徐々に増えてきました。これも消費者の選ぶ権利を尊重する生活クラブの実践が、近い将来業界常識を変える一例になるはずです。(談)
 
撮影/魚本勝之
取材/中野寿ゞ子

『生活と自治』2020年3月号「新連載 産地提携の半世紀」を転載しました。

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