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[本の花束2020年5月] 分断や誤解を乗り越えて、 人間としてどう息苦しくなく 生きていくかが大事 保育士・ライター・ コラムニスト ブレイディ みかこさん

英国の港町で「元底辺中学校」に進学した一人息子。
その日常の葛藤と成長を描いたブレイディみかこさんのノンフィクションが大きな注目を集めています。
本書のタイトルは、息子さんがある日ノートに書いた落書きの言葉。
多様な価値観を持つには何が大切なのでしょうか?
来日中の著者にお話を伺いました。
著者撮影:尾崎三朗
●英国に暮らしてもう20数年になるそうですね。

高校時代、英国のロックに憧れて、卒業後はお金を貯めては渡英していたんです。30歳の時に現地で結婚し、今はロンドンから1時間ほどのブライトンで暮らしています。

●息子さんはカトリック系小学校から「元底辺中学校」へ入学、冒頭からロックな展開に引き込まれます。

中学校の廊下にセックスピストルズのレコードが飾ってあって! 最初の学校見学で驚いたのは、音楽室のほかにレコーディングスタジオも完備、宅録用の機材もあって、放課後、子どもたちが集まってラップのトラックを作っていること。ストリートダンスに打ち込んでいる子たちもいて、なんだか皆、カッコいいんですね。こんな学校、私が行きたいぐらいだった(笑)。音楽や演劇やダンスなど「表現すること」に力を入れることで、「底辺校」と言われる学校が変わってきたんですね。
●英国では、ブレア政権時代の1997年に大胆な教育改革が行われたそうですね。

ブレアは新自由主義的政策を進めて格差を拡大させましたが、インクルーシブ(社会的包摂)教育を取り入れたりと、画期的な政策をしたんです。そのひとつが外国人保育士の採用奨励でした。その頃、私も保育士の免許を取ったのですが、当時勤めていた園では非白人の保育士は私だけ。慣らし保育で来た白人の子どもが、私を見て泣いて逃げるんです(笑)。それまで周囲が皆、白人という環境で育っているから当然ですよね。でも次第に慣れて、卒園する時にはお互いにハグしあって号泣するくらいの間柄になる。多様性ってそういうものでしょう? 誰もが差別主義者ではないし、ただ、自分と違う人たちに慣れていないだけ。だからこそ、子どもの頃から多様な環境を作ることで差別や偏見をなくしていこうという考えなんですね。その後、保守党が政権をとると保育所なども緊縮財政になりました。その辺のことは『子どもたちの階級闘争』で書いています。

●学校で息子さんが体験する「エンパシー」についての教育も印象的でした。

シティズンシップ・エデュケーションのひとつなのですが、エンパシーとは、その相手を好きでなくてもよくて、自分とは考え方が違う人間の立場に立って想像してみる、ということなんです。それが今の時代を生きる知恵として、「ライフ・スキルズ」という形で教育のなかに組み込まれています。

●本のなかでも、息子さんがエンパシーについての試験で「自分で誰かの靴を履いてみること、って書いた」とありましたね。

民主主義や議会の仕組みなども学びますが、もっと実地的な、分断や誤解を乗り越えて、人間としてどう息苦しくなく生きていくかが大事なんです。

●日本も英国と同じように格差と貧困が広がり、他者への寛容性が失われています。

日本はどんどん縮こまっている感じがしますね。経済が縮んで余裕がなくなり、他者に不寛容になり……。英国でも状況は同じですが、ボランティアなど草の根の社会活動が根付いているんです。学校教育のなかでもボランティア活動が当たり前のようにあって、子どもたちも自分たちでイベントを企画して、お金集めにバザーをやるなど、知恵を絞って自分たちで作り上げていく。そういう経験があるから、学校を出ても地域の草の根の活動に誰もが当たり前のように参加していて、それが地域を支えているんですね。日本も10年先、20年先のことを考えて、まず教育から変えていくことが重要だと思いますね。

●この本にはそのヒントが多く含まれていますね。今日はありがとうございました。
 
ブレイディみかこ/1965年、福岡市生まれ。県立修猷館高校卒業。1996年から英国ブライトン在住。英国で保育士資格を取得後、「最底辺保育所」で働きながら、ライター活動を開始。『子どもたちの階級闘争』(2017年新潮ドキュメント賞受賞)など著書多数。
 
インタビュー:岩崎眞美子
取材:2020年2月

書籍撮影:花村英博
本屋大賞2019ノンフィクション本大賞受賞作
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
ブレイディみかこ 著
新潮社(2019年6月)
19cm×13.4cm 252頁
★2019年12月1回で992冊
図書の共同購入カタログ『本の花束』2020年5月4回号の記事を転載しました。

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