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「全員がプレーヤー」の地域づくりを支援 共生地域創造財団の「伴走型支援」助成事業

愛媛県宇和島市のイベント「ガキ商店」(写真提供:うわじまグランマ)

東日本大震災の復興支援のために、生活クラブ連合会(東京都新宿区)、グリーンコープ共同体(福岡市)、NPO法人「ホームレス支援全国ネットワーク」(福岡県北九州市)が三者で立ち上げた公益財団法人「共生地域創造財団」。東北での復興を進めつつ、そのノウハウを生かし、他の被災地の地域づくりも支えていこうと、昨年「伴走型支援」のための新たな助成事業を開始した。

「助けて」と言える地域

NPO法人「うわじまグランマ」代表の松島陽子さん
未就学児も含む小学校高学年までの子どもたちが店長になり、自分で手作りまたは調達した「商品」を販売する「ガキ商店」。昨年末、愛媛県宇和島市で行われた地域イベントだ。お菓子や雑貨などの他、流木を使ったアート作品や似顔絵もあり、子どもたちはコスト計算から値付け、接客もこなす。

「子どもたちが地域の高齢者やボランティアの人たちとふれあって、いろいろな体験をしてほしくて企画しました」と話すのは、市内のNPO法人「うわじまグランマ」の代表、松島陽子さんだ。

2018年7月、宇和島市は、西日本集中豪雨による土砂崩れなどで10人を超える人が亡くなり、浸水や長期の断水で多くの住民が生活の困難に直面した。当時、地元の同級生4人で、実家の製材置き場を活用して子ども食堂開設を計画していた松島さんは、急きょその場所を支援物資置き場として提供、行政の依頼で炊き出しのコーディネートを引き受けたことから正式なNPO法人として、うわじまグランマを立ち上げた。
日々、災害支援の活動を行う中、改めて実感したのは地域コミュニティーの重要性だ。どこにどんな人がいるか、情報がなければ物資も届けられない。災害時にボランティアの支援を拒否する高齢者も多い。平時から「助けて」と言える関係づくりをしておけば、いざというときも言いやすい。高齢者が「ちょっと手伝って」と気軽に言え「いつでも声をかけて」と若者が応えるような地域づくりをしたいと、松島さんらは、子どもや高齢者、障害者など地域の多様な人々が「つながる居場所」づくりを始めた。ガキ商店はその一環だ。

多くのニーズが次々発生し、一団体では対応しきれないこともわかった。当時、市内には支援団体はあったがこれをつなぎ調整する機関がなかった。「どこにニーズがあり、どの団体なら支援できるか、情報共有と連携が必要でした」と松島さん。翌年7月に中間支援組織「宇和島NPOセンター」を立ち上げ、のちに法人化した。現在は市内の多くの団体が参加する。

2年たった今も市内には、川に落ちたままの車があったり倉庫が土砂で埋まっている場所もある。
「いまだに床を張り替えられない人もいるし雨音が不安で心のケアが必要な人もいます。一軒一軒訪ねて必要なことを聞き、支援できる制度や団体につなぐ活動をしています」と松島さん。被災直後は外部ボランティアが頼りだが、長期的な地域の課題は多く、地元の団体にしかできないことも多い。

地元団体に伴走する

伴走型支援への助成事業を担当する、共生地域創造財団の吉田菊恵さん

東日本大震災の後も、毎年のように日本各地で発生する自然災害。共生地域創造財団では、恩返しの思いで16年の熊本地震、西日本集中豪雨の被災地に支援に出向いた。「直接支援の他、現地の支援団体が活動を続けられるような支援の在り方を考えてきました」と事務局長の多々良言水(たたら ともみ)さんは言う。

財団として何ができるか。検討の末、生活クラブ連合会などを通じ、多くの市民から寄せられた財団へのカンパを、こうした活動にも役立てようと昨年「伴走型支援」の助成事業を始めた。まずは復興支援に出向いた2地域を対象に助成団体を募り、それぞれの活動計画を審査し助成を決定した。通常、こうした助成は1年単位だが、あえて対象期間を2年間とした。助成事業を担当する吉田菊恵さんは「継続的な活動が現地に根付き、その後の社会資源として残っていけるように」と、その意図を説明する。財団ではこの間「平時は、社会に問題があっても気づきにくいが、災害が発生するとそれが顕在化する」という現実と向き合ってきた。これまでの経験から顕在化する問題は、ある程度予測できるのが強みだ。審査の際もその点を重視し、より必要となるだろうと思われる活動を優先したという。
うわじまグランマもこの助成団体の一つ。ガキ商店などの地域づくりにかかる費用を申請した。西日本集中豪雨の復興支援には、愛媛県内の他の2団体を含め3団体合計900万円を助成、熊本地震の復興支援には7団体で合計1540万円の助成を行っている。

吉田さんは、現地事務局を通じ地域とのやりとりを行う。助成を機に各地域にはいろいろな動きが生まれた。熊本では、一人の小さな気づきが家族に広がり地域全体で支える活動になった例や、支援を受けていた人が支援する側に回っていく例も多くあるという。

愛媛でおもしろいのは、助成団体同士のつながりが生まれた点だ。松島さんが立ち上げた宇和島NPOセンターの吉田地区には「キャリッジ吉田バンズ」という愛称がある。同じ助成団体であるNPO法人「八幡浜元気プロジェクト(YGP)」の若者らとの交流の中で生まれた名前だ。YGPは八幡浜市を元気にしようと06年から活動している団体で、助成をきっかけに交流が始まり今ではイベントの共催も行う。代表の濱田規史さんが「ネーミングワークショップ」を提案し一人一人の思いをキーワードにして出し合い、この名前に至った。みかんを運ぶかご(キャリー)に情報を詰め、世代を超えて橋渡し(ブリッジ)する。バンズはハンバーガーのパン、柔軟性をもって人と団体をつなぐという意味が込められている。

地域づくりの指針を

地域づくりに一番重要なことは何か。吉田さんは「地域の全員がプレーヤーになれる仕組みをつくること」だとして、今回の助成団体には意識的にそれを実践するさまざまな工夫がみられると言う。

うわじまグランマのイベントには大勢の中高生が参加するが、松島さんは都度、彼らに多くの仕事を依頼する。「経験すれば次は自分たちも企画できるし、担うことでこの活動の楽しさや必要性に気づく中高生は多いんです」。自分の力を頼られ、発揮できるのは彼らにとってもうれしいことだ。「次はいつ?」との声もかかる。一方、高齢者からは「私たちにも活躍の場がほしい」という声もあがる。伝統料理やお菓子づくりを教わる企画も進行中だ。多世代のこうした意欲が、自分たちの刺激にもなっていると松島さんは言う。

濱田さんたちYGPでは、助成金を活用して地域づくりのノウハウを小冊子にまとめる予定だ。「住民参加と地域資源の活用」がその本質だと言う。とはいえ住民の自発的動きが生まれるのは容易ではなく、時に外部の力を活用するのも有効だ。YGPは旅人と地域の人、拠点を結びつけるウェブ上の新たな仕組みを構想する。「地域の刺激になる他、全国にファンが増えれば何かあったときの力にもなります」(濱田さん)

震災から9年、復興への関心や体制も変化し、財団自身も経営の厳しさはある。それでもこうした助成を行うのは今後の災害の備えと考えるからだ。災害はいつどこで起こるかわからない。一人一人のカンパが、その際に生かせる地域づくりの指針につながる。

NPO法人「八幡浜元気プロジェクト」代表理事の濱田規史さん。背景にあるのは「かまぼこカーテン」。八幡浜市の主産業であるかまぼこの板を2万5千枚、住民が持ち寄ってつくったオブジェ。住民参加と地域資源活用の一事例だ
撮影・文/本紙・宮下睦

『生活と自治』2020年5月号 「生活クラブ 夢の素描(デッサン)」を転載しました。
【2020年5月25日掲載】

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