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ゆずれない、国産原料100%【コーミ・丸エビ倶楽部】


トマトケチャップの原料、加工用トマトの国内生産量が年々減少している。これからも国産原料を使い続けるために、生活クラブ連合会は今年2月、トマトケチャップの提携生産者コーミと、加工用トマトを生産する丸エビ倶楽部(くらぶ)のほか、日本デルモンテ株式会社も交えた4者で「加工用トマト並びにトマトピューレの取り扱いに関する業務連携協定書」を締結、協力して主産地形成に取り組むことを決めた。

減少する国産原料

愛知県知多半島にある加工用トマトのほ場。明治時代に始まった愛知県の加工用トマト栽培は、最盛期の1950年代には約500ヘクタールの規模を誇っていた

1びん(370グラム入り)に約1キログラムの加工用トマトを使う生活クラブのトマトケチャップ。1974年に国産原料100%で取り組みを始めて以来、多くの組合員に愛用されている消費材だ。

トマトケチャップが日本で初めて作られたのは、07年(明治40年)といわれている。生食と加工の兼用品種のトマトを原料にし、色や味を補うために添加物が加えられていた。その後、加工用トマトの栽培技術がすすみ品質も安定し、70年代半ばには、生産量が40万トンを超えた。

しかし、海外で生産したトマトを現地で加工したピューレやペーストなどの加工品が手に入るようになると、国内のメーカーは国産原料を使うのをやめていく。さらに89年、トマトの加工品が輸入自由化となり、安価で手に入るようになった。とうとうこの年の国産加工用トマトの生産量は8万5千トンにまで落ち込んでしまう。生活クラブのトマトケチャップの提携生産者、コーミでは原料確保が困難となり、92年から3年間、トマトケチャップにチリ産のトマトペーストを2割ブレンドして供給しなければならなかった。

その後も日本の加工用トマトの生産量は減り続け、2009年には約4万トンとなり、18年には2万5千トンを割った。生産者の高齢化と後継者不足に加え、これまでにない豪雨や台風による被害の発生もその一因だ。現在、トマト加工品の原料は約97%を輸入に頼っている。
「外国で加工された原料と国産の生のトマトでは、国内の加工業者が受け入れる時のコストが何倍も違います。それが製品の価格に反映されます。また、加工用トマトの収穫は真夏に行われ、農家にとっては労力に対しての単価が安い作物とみられています」と、コーミの営業課長の相馬英輔さん。しかしこのような状況の中で、コーミは、根気よく生産農家を探し育てた。生活クラブの組合員の、国産原料100%のトマトケチャップを食べ続けたいという意思を心強く受けとめていたという。

足りない! 国産加工用トマト

現在コーミでは、愛知県内はもとより、北海道の沼田町、宮城県のJA加美よつば、石川県のJA小松市など全国の提携産地での契約栽培のほか、同業の大手メーカーとも提携し、原料を確保している。

加工用トマトの収穫は年に一度。生活クラブに1年間、安定的にトマトケチャップを供給するには1千トンの原料を収穫する必要がある。しかし18年に収穫できた加工用トマトは、7百トンに届かなかった。愛知県や関東では集中豪雨と異常高温、東北地方や北海道では水不足と低温による発育障害が生じたうえ、度重なる台風の直撃に見舞われたためだ。

前年の17年も不作だったため原料のストックもなく、19年5月から9カ月間、米国産のトマトペーストに、国産の生食用の国産トマトで作ったピューレを30%配合したトマトケチャップを供給しなければならなかった。

心強い結びつき

このような状況の中、これからも将来にわたって国産原料を使ったトマトケチャップを作っていくために、今年2月、コーミ、日本デルモンテという加工業者と消費者である生活クラブ連合会、そして茨城県の青果生産者、丸エビ倶楽部が、「加工用トマト並びにトマトピューレの取り扱いに関する業務連携協定書」を締結、4者で協力しながら、さらに安定的に加工用トマトを生産することを決めた。

日本デルモンテについて相馬さんは、「同業大手の日本デルモンテとは、亡くなったコーミの創業者の時代から原料を融通し合うなどの交流がありました。愛知県の産地がどんどん減っていった時もそうでしたが、提携産地のトマトだけでは足りない国産原料を継続的に補ってもらっています。今回は、機械収穫ができ、茨城県の気候に合った品種の加工用トマトの種を提供してもらうことになりました」。短期間で畑全体のトマトがそろって真っ赤に熟し、いっせいに刈り取りができ、機械での収穫にも耐えられる硬い実がなる品種だ。さらにピューレへの加工は、日本デルモンテが委託している青森県りんごジュース株式会社が受け持つ。

機械収穫は、真夏の収穫作業を軽減し効率を良くする。しかし機械の購入は一生産者にとって負担が大きい。そこで生活クラブが収穫機を購入し、丸エビ倶楽部に貸与することにし、生産者の負荷を減らし、安定した生産を目指す。

相馬さんは、「消費者が国産トマトで作ったトマトケチャップの価値を認め、『自分たちが食べるのだから、私たちは消費材の原料生産にまで責任を持ちたい』と、産地形成に積極的に参加することは、提携生産者にとって、大きな支えとなります」と、今年から始まる生産、加工、消費各者の連携事業に期待する。

4月半ば、茨城町の平澤大臣さんの畑では、初めての加工用トマトの苗の定植が行われた(写真提供 丸エビ倶楽部)

手を上げた丸エビ倶楽部

丸エビ倶楽部の取締役副社長の菅谷庄一さん。大規模農家で、加工用トマトを栽培するほ場の3分の1を引き受けた

青果の提携生産者、丸エビ倶楽部は、今回の業務連携協定をすすめるに当たり、新たに加工用トマトの生産を担いたいと手を上げた。同倶楽部には、茨城県茨城町を中心に、有機質肥料を使う土づくりをしながら農業を営む農家が集まる。若い生産者は「サクセサークラブ」をつくり、次世代を担う準備も整えている。

葉物や根菜類の生産が中心で加工用トマトの栽培は経験がないが、生活クラブ連合会の担当者が現地を訪ね、トマトケチャップの原料不足について窮状を訴えたところ、栽培を検討することになった。50人ほどの生産者が集まる4月の総会で、海老沢衛代表が加工用トマトの栽培について話したところ、鉾田市、水戸市、茨城町の5人の生産者が名乗り出た。

その中の一人が、鉾田市で40ヘクタールの農地を持ち、12人の従業員をかかえる大規模農家の菅谷庄一さんだ。「1年間の農作業暦では、7月にジャガイモの収穫を終えると、8月のお盆過ぎに始まる大根の種まきまで仕事がありません。加工用トマトの収穫がちょうどその時期に当たります。従業員が1年を通して仕事ができることになるので手を上げました」。機械での収穫は最後に、と考えている。「真夏の作業は大変なことも知っています。でも手が回るうちは手で摘むという仕事を残しておきたいんです」
4月半ば、丸エビ倶楽部の生産者が、5人合わせて300アールの土地に、加工用トマトの苗を5万6千本植え付けた。菅谷さんのほ場は、その3分の1を超える120アール。初めての挑戦だが、昨年の試験栽培では、思いのほか長い間収穫できることもわかった。12人の従業員と、苗の成長を楽しみに見守っている。7月の収穫には、生活クラブが用意した加工用トマト用コンバインが活躍する予定だ。

海老沢代表は、生産者たちの新たな挑戦を頼もしく思う。「栽培を引き受けたのは自分たちですが、トマトケチャップの原料を作ろうと、コーミ、日本デルモンテ、生活クラブが協力し合ったから実現したことです」。まだ始まったばかりの事業だが、加工品の国産原料の生産に関わることには大きな意味があると感じている。
丸エビ倶楽部代表の海老沢衛さん。「加工品の原料生産は初めてです。期待と不安が入り交じっていますよ」
トマトケチャップの原料トマトの主な産地
 


昨年は大根畑の片隅で加工用トマトの試験栽培を行った。10月になっても真っ赤なトマトの収穫が続いた

撮影/田嶋雅已
イラスト/堀込和佳
文/本紙・伊澤小枝子

ひろがるトマト仲間


加工用トマトは生食用のトマトのように支柱を立てて栽培するのではなく、苗を地面に這(は)わせて実が赤く熟すのを待つ。露地栽培なので日よけもなく、真夏にひざを折っての収穫は重労働だ。高齢化に伴い、作付けをやめてしまう農家が多い。しかしコーミと提携するトマトケチャップの原料生産者にはそれぞれの想いがある。

コーミがある愛知県は加工用トマトの代表的な産地であり、トマトケチャップを開発した当時も栽培が盛んに行われていた。しかしトマト加工品の輸入自由化とともに畑は減り、県内で農家と契約し栽培をしていた大手食品メーカーが撤退すると、生産量はさらに減り続けた。県内産加工用トマト栽培の危機に直面したコーミは、2006年、生産者や生協、行政と共に「愛知県加工用トマト拡大協議会」を設立し、県内の生産者を守りながら、県外にも契約栽培をする提携先を開拓していった。
宮城県のJA加美よつばと契約栽培を始めたのは09年。当時、生活クラブ連合会はJA加美よつばと正月用のしめ飾りや野菜の提携をしていた。コーミとは生産者同士の交流があったこともあり、組合長が積極的にすすめ、現在は30の生産者が4ヘクタールのほ場で栽培する。

ところが生活クラブがない宮城県では、生産した加工用トマトを使ったケチャップが入手できない。地元でも提供したいとのJA加美よつばの申し出に応え、コーミは加美よつば仕様のケチャップを作った。農協の直売所ではとても人気があり、ベストセラーになっている。

11年、東日本大震災が発生した。JA加美よつばではトマトの生産を続けていたが、福島第一原子力発電所の事故による停電などで作業ができず、生産量が減ってしまう恐れがあった。そこでコーミは新たな産地を探すことになった。北海道旭川市の西部にある沼田町と提携したのは、生活クラブ北海道の紹介による。沼田町では、1980年代から町営工場でトマトジュースを作っていたが工場の老朽化のため、継続の可否が問われていた。そのタイミングでのコーミの申し出は工場再生の好機にもなった。ジュースの原料用トマトがトマトケチャップにも使える品種だったこともあり、2012年より、原料をコーミが購入し、生産物を無駄なく使うことができるようになった。その後、沼田町はさらに加工用トマトの産地拡大をすすめている。

17年より提携しているJA小松市とは、中部エリアの産地を探していた時に出会った。JA加美よつばと同様に、地産地消を目指したいとの希望を持っている。石川県は米どころであり、簡単には面積拡大は難しいと思われるが、コーミは、中部圏の生産拠点として期待している。

さらに19年、長野県諏訪郡富士見町に本社がある農業生産法人株式会社「栄農人(エナジー)」と提携し、隣接する山梨県北杜市で2ヘクタールの作付けをした。20年には、生活クラブ山梨の組合員による夏の収穫の援農が予定されている。

トマトケチャップを国産原料で作りたいという強い想いが、ひとつ、またひとつと、加工用トマトの生産地をつくり出してきた。

 
撮影/田嶋雅已
文/本紙・伊澤小枝子

『生活と自治』2020年6月号「新連載 ものづくり最前線 いま、生産者は」を転載しました。
【2020年6月15日掲載】

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