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自慢の野菜をまるごと ―野菜生産者の挑戦―


首都圏の五つの野菜提携生産者が、「予約」と「おまかせ」による野菜の年間予約取り組みを始めた。農地を守り、作り手を育てようとする生産者の、新しい消費の仕組みづくりへの挑戦だ。

画期的な、野菜の年間予約

この春、野菜ではできるはずがないといわれていた年間予約申し込みが始まった。生活クラブ連合会では、2015年より、日々の食生活に必要な卵、牛乳、米を一度申し込み登録をすると、定期的に届けられる仕組みをつくり、活用を呼びかけてきた。

野菜の予約ができると、生産者は計画的に作付けができ、経営の安定に寄与する。画期的な取り組みだが他の消費材より大きく後れを取ったのは、野菜を年間予約して食べる、ということがとても難しいからだ。自然相手の生産だけに、生育時期のずれや害虫による被害、災害など予測が不可能な事態の発生は多く、予約通りの生産自体が難しい。さらに、1品目を1生産者で計画的に生産するような大量生産ではないため、いくつかの生産者間での栽培調整も必要だ。

課題は山積みだったが、品目をある程度「おまかせ」にすることで、この仕組みをスタートさせた。「予約・あっぱれ・はればれ野菜おまかせ4点セット」を登録すると、毎週、あっぱれ・はればれ育ち野菜の中から4品目がセットになって届く。例えば4月1週は、小松 菜、グリーンリーフ、ミニトマト、ブロッコリー、5月2週はトマト、チンゲン菜、ニラ、大根など、品目は生産者に「おまかせ」。その季節に生産され、生産者が栽培を得意とするものがセットされる。

野菜を提供するのは関東の5生産者。栃木県の「栃木県開拓農業協同組合」、埼玉県の「沃土(よくど)会」、群馬県の「野菜くらぶ」、茨城県「丸エビ倶楽部(くらぶ)」、千葉県の「さんぶ野菜ネットワーク」だ。現在のところ、利用できるのは首都圏の七つの生活クラブだけだが、今後、徐々に広げていく計画だ。
丸エビ倶楽部(くらぶ)の加藤木孝嘉さん。「故郷の農地を守っていきたいと思っています。ブロッコリーも作っていますよ」
丸エビ倶楽部の小室拓海さん(左)と、父親で農業の大先輩、満さん。「水菜はまかせてください」

あっぱれ・はればれ


予約して届くあっぱれ育ちとはればれ育ちの野菜は、使用する農薬の種類や量、肥料など、独自の基準が設けられた農法に基づいて育てられる。

生活クラブの野菜は、化学合成農薬や化学肥料をできるだけ使わず、栽培履歴が明らかであり、残留農薬の目標値は国の基準の10分の1未満。放射能は国の基準の4分の1に当たる、25ベクレル/キログラム(生シイタケは50ベクレル/キログラム)以下だ。基準を満たしているかどうかは生活クラブ連合会の検査室で確認される。

この基準を守り、さらに栽培期間中に化学合成農薬と化学肥料を使わずに育てた野菜を「あっぱれ育ち野菜」、できる限り減らして育てたものを「はればれ育ち野菜」という。この農法に取り組む生産者は、17年は50団体だったが、20年には95もの団体から出荷希望が出されるようになった。

「予約」と「おまかせ」

栃木県開拓農業協同組合の石川智さん。野菜の年間予約実現に向けて「関東甲信越ブロック準備会」のまとめ役として、準備をすすめた。「季節に採れた野菜はおいしいですよ」(写真提供 生活クラブ連合会)
年間予約に取り組む五つの産地の生産状況を把握し、1年間の出荷計画を作るのは、栃木県開拓農業協同組合の石川智さん。準備は3年前に始まった。その頃は気象状況の変化が原因で生育のずれが出て、計画どおりに出荷できなかったり、市場の価格の変動により組合員の注文にばらつきがあったり、思うように野菜の供給がすすまない状況だった。

そこで、作った野菜を余すことなく食べてもらうための「おまかせ」と、産地が協力して計画的に生産できる「予約」を前提に、野菜セットの取り組みを考えた。「予約」は、農家が責任をもって予約された野菜を生産し、消費者がそれを食べる、という約束。「おまかせ」は、その季節に生産される品目を、生産者自らが提案するものだ。種類が偏らないように、葉菜類、葉物類、根菜類、果菜類と分け、その中から1品目ずつ選んでセットにする。毎回13品目ぐらいの中から組み合わせることになる。

5つの生産者は、予約取り組みを実現させるために、根気よく話し合いの場を設けた。それぞれの生産者を訪ね、産地の様子を見てきた石川さんは、「みなさん、品種や農法にこだわり、独自の信念をもって特徴ある野菜を作っています。その価値をわかって食べてほしいと思っているのですよ」
5月には組合員の登録が1万人を超え、1週間に5生産者でほぼ4万点の野菜を用意する。「今まであっぱれ・はればれの農法で作っていても、生育が計画された供給時期に間に合わなければ、一般市場に出したり廃棄したりしなければなりませんでした。そういったものや、少量しか作れなかった品種もセットに入れて食べてもらえるようになりました」。石川さんたち生産者の夢は、自分の畑で丹精込めて育てた野菜をまるごと組合員に届けることだ。

栃木県開拓農業協同組合の「グループみんなの未来」の赤野正実さん。「迷わず有機農業を選びました。おいしい野菜は虫も食べます」

約束がつくる食の未来

新型コロナウイルスの感染症拡大は、世界に広がる食料供給システムがいかにもろいものの上に成り立っているかを示した。
農林水産省の統計によると、19年の基幹的農業従事者の数は、日本全体で約140万人。日本の人口のほぼ1%にすぎない。さらに70歳以上の農業者が42%を占める。また、耕地面積は約444万4千ヘクタール。そのうち有機JASの認証を受けたほ場は、わずか0.24%だ。

だが、あっぱれ育ち野菜の生産者の中には有機JAS認証を受けた人や、土づくりから始めて、環境に負担がかからないような農法をさまざまに工夫する人が何人もいる。そのように生産された野菜の供給高は青果全体の5.7%を召め、組合員の支持を得ている。

「10年後、20年後の日本の農業生産の担い手について考えた時、野菜の予約申し込みは、次世代の生産農家を支える仕組みとして大いに期待されます。より広げていきたいです」と石川さん。

予約することの意味を知り参加する生産者と消費者が、豊かな土地を守り、食の未来を作っていく。

撮影/田嶋雅已
イラスト/堀込和佳
文/本紙・伊澤小枝子

食と気持ちを満たす野菜づくり

丸エビ倶楽部(くらぶ)の代表、海老沢衛さん
今年3月、本紙5月号のものづくり最前線をまとめるために、新しく加工用トマトの栽培を始める丸エビ倶楽部(くらぶ)の代表、海老沢衛さんに取材をしていた時のこと。4月より始まった、「予約・あっぱれはればれ野菜おまかせ4点セット」が話題になった。「なんと、申込数が9千件を超えました。目標の1万件を超えるのも時間の問題ですよ」と、海老沢さん。さらに、「生産者にとっては大きな励みになり、これから農業に就く人たちを勇気づけます」と続けた。

予想を超えて目標が達成できそうなのは、4月から5月にかけて、全国的に新型コロナウイルスが拡散し、緊急事態宣言が出され、国民が自粛生活をし、外食をしないで家庭内で食事を作る機会が増えたからという理由もあるのではないかと言う。それでも「組合員数も増えて、私たちの野菜を食べて知る人が増えたのは喜ばしいことです」と前向きだ。

一方、農業に就く若い人たちが減り、農業人口の高齢化がすすんでいる。労働力が足りない生産地では、中国、タイ、ベトナムなどからの研修生の力で補ってきた。しかし今回、その人たちが自国から動けなくなってしまい、生産規模を縮小せざるを得ない農家が出てきている。「キャベツが一時期、市場に出回らなくなったのも、作付けは十分だったのに研修生の力を借りないと収穫ができなかった産地があったからですよ」

海老沢さんは生産者として、人々の暮らしに必要な食料は自分たちが作る、という自負を持っている。一方、消費者には、どんな想(おも)いをもって野菜を作っているかということを知ってほしいと言う。

たとえば大根は、1カ所に数粒の種をまいて芽を出させる。間引きをして1本の大根に仕立てるために、畑を何度も往復する。「1日の作業で腰が痛くなりますが、引き抜いた、まだ葉っぱだけの大根を持ち帰って軽く塩もみをして食べるんです。ここでしかできない食べ方を楽しみ、それを幸せだと感じる価値観が生まれるます」。そんな、日常の共同購入では届かない生産者の想いは、組合員との交流を通して伝えている。

生産者も、組合員からの野菜に対する感想は「メッセージカード」で受け止めることができる。「自分が作った野菜がどんな人へ届けられているのかを知った若い生産者は、一般市場に出荷する時と違い、消費者を身近に感じるようですよ」

生産者と消費者との間に、作り、食べることを約束し合う関係があり、お互いを知ろうという思いがある。それは、食を守っていくために一番大切なことだと思う。
撮影/田嶋雅已
文/本紙・伊澤小枝子
『生活と自治』2020年7月号「新連載 ものづくり最前線 いま、生産者は」を転載しました。
【2020年7月20日掲載】

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