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【新役員に聞く】行き詰まる食のグローバル化、共同購入でできることは

「ヒト、モノ、カネ」が地理的制約を越えて自由に行き交うグローバル化が進む今、新型コロナウイルスは世界中の大都市に広がり、これまでの価値観や暮らし方を大きく揺り動かしている。暮らしに必要な食料やエネルギー、支え合う関係をできるだけ身近な地域で循環させようとしてきた生活クラブ運動は、こうした時代に何ができるのか。第31回通常総会で新しく生活クラブ連合会の会長に就任した伊藤由理子さんに、2回に分けて聞いた。

共生のための自給

生活クラブ連合会長・伊藤由理子さん
――今回、食をめぐる状況にはどんな変化があったでしょうか。

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の報道を受け、最初に思ったのは「日本の食は大丈夫なのか?」ということでした。農林水産省の発表によれば、2018年度の日本の食料自給率はわずか37%(カロリーベース試算)、18年末には環太平洋連携協定(TPP11)、19年には欧州との経済連携協定(EPA)、20年には米国との自由貿易協定(FTA)が次々に発効し、グローバルな自由貿易の活発化による農業への影響や、それによるさらなる自給率の低下が懸念されていたからです。世界の大都市に同時多発的に災厄が発生したならば物流が途絶える危険性は十分に考えられました。

生活クラブ連合会では、自給力の向上を目標に掲げて、国内の農畜産業、漁業の生産基盤を支え、食材の原料や飼料まで国産のものを使う取り組みを進めています。それでも、加工食品の一部には、ごく微量な助剤であってもその輸入が止まれば生産が難しくなるものもあります。すぐに提携生産者にすべて点検してもらったところ、高い水準で国産への切り替えが進んでいて、輸入に由来する欠品はほとんどありませんでした。
今回、食料の貿易が止まらなかったことは幸いでしたが、食料の輸出規制をする国があったり、食肉加工処理施設で感染拡大した国があるなど、懸念されることは多くありました。それぞれの国でできるだけ食べ物を自給することは非常に重要であり、社会的責任を伴うものだと、多くの消費者が痛感したのではないでしょうか。

私たちはこの50年間、大勢の組合員とこうした考えを共有し活動してきましたが、今回は私たちだけでなく、スーパーマーケットやSNSなどでも、国内の酪農業や漁業の応援キャンペーンが行われました。生産者との関係が大事だと多くの消費者が目の当たりにし、買って支えようという行動が自然に起こったように思います。今後、こうした流れが定着すれば、より大勢の人たちと、さまざまな問題を一緒に語り合っていけるのではないかと期待しています。

暮らしを守るために

――共同購入にはどんな変化があり、どう対応したのでしょう?

臨時休校や外出制限などの影響で組合員からの注文は急増しました。ただ、買い占めや買いだめの傾向は大きくはありません。計画的な消費と生産者への信頼が根底にあることを実感しました。

一方で、新しく加入する人が大幅に増えたりカタログをじっくり見る時間もあるせいか、これまでとは異なる消費行動の変化もあり、生産現場は大変でした。他の業務を後回しにしたり原料の確保に努力して、なんとか欠品を出さないよう頑張ってくれた提携生産者には本当に感謝しています。

ただ、生活クラブ以外に、外食産業や学校給食などに向け出荷していた生産者は経営的に大きな打撃を受け、今後にも影響する可能性があります。そもそも取引率はあまり高くならないようにしようと、生活クラブ側から提案してきた経緯があります。不必要な添加物や遺伝子組み換え作物を使わない製造のあり方など、共に開発し培った技術やノウハウを、ほかの提携先にも提供し、社会に影響を与えていこうとするのが生活クラブ運動だからです。これを真摯に実践してきた生産者が困難に直面しているような局面においては、生活クラブとしても支えなければと、応援企画を展開することにしました。

――物流などの混乱も比較的少なかったようです。
 
組合員の信頼に応えるために、何よりもまず食材などの供給を途絶えさせず、組合員の暮らしを守ることを優先しました。東京、神奈川、埼玉の生活クラブでは、加入希望者に対し受付を約1カ月間待ってもらう対応も行っています。
全国の生産者から埼玉県の飯能デリバリーセンターへの集荷や、各地の配送センターへの搬入の際、3月以降は車両に積みきれないなどの事態も発生しました。関連会社である㈱太陽ネットワーク物流の努力でなんとか対応できています。流通の仕組みを自前で持ち、関係者とのネットワークをつくってきたことの強みを実感しました。

感染を心配しながら働いている生産者やデリバリーセンター、配達やデポーの職員・ワーカーズ、委託先の人々に対して、その健康管理や安全確保も重要な課題です。いかにその負荷をコントロールしていくか、最前線に立つ人々への感謝を伝えながら各部署で力を尽くしました。東京のある配送センターには、組合員から「ありがとう」「頑張って」と書かれた手紙が壁に貼りだされていました。全国のセンターでも同様だったのではないかと思います。職員やワーカーズにとっても、生協が消費者と生産者をつなぐ存在であることや、自分たちの労働が多くの人の生活を支えていることを改めて実感する機会になったと思います。
入口に貼りだされた組合員からのメッセージ(写真提供:多摩南生活クラブ・東京都町田市)

問われる想像力

――これからの社会には何が必要となるでしょうか。

今回痛感したのは、インターネットでさまざまなものを注文できる社会になったとはいえ、市場流通の基盤になるのは第1次産業と物流だということです。社会を支えるこの部分の仕事にいかに心を寄せ、光をあてていくかが改めて各事業に問われていると感じます。

テレワークが不可能な業種はたくさんあります。港湾で荷下ろしをする人たちには外国人労働者が多く、この人たちが働けなくなると食品の輸出入は止まり、市場に食品は出回らなくなります。農業の現場でも海外からの技能実習生が帰国してしまい、人手不足が深刻になりました。フランスでは失業者に対し農家や酪農家の応援を呼びかけたところ20万人以上の応募があったと聞きます。

今回の件をきっかけに、国の政策も、第1次産業や医療、福祉など人の手が必要な産業に力を入れるよう転換すべきだと思います。生産者や現場の声を集めて発信していく必要もあるでしょう。

もう一つは情報の公開です。この間、日本では市民が知りたい情報が十分に発信されず、情報の信頼性も薄く、それらが不安を増大させました。情報公開は生活クラブ運動の大前提でもあります。自らの事業における公開を再確認していくとともに、社会に対しても求めていきたい課題です。

――エネルギー問題や貧困、格差の問題なども気になります。

このところ、地震が頻発しています。コロナ禍がなければ大騒ぎしているでしょう。気候危機も深刻で、これからの季節には台風災害などが心配です。一方、コロナ後の経済がどうなるか見通しが立たない中、困窮する人がさらに追いつめられる危険性もあります。

新型コロナウイルスの今後やもたらす影響について、拙速な判断はできませんが、これまでの危機とは少し異なり、お金を基軸にしたこれまでの価値基準を根底から揺るがし、人間社会のあり方が問われていくように思います。自然との共生や社会の公平性など、実際に見えている以外の多くのことをどう見据えていくか、一人一人に想像力と共感力が問われている事態だと思います。
    (9月号に続く)

★『生活と自治』2020年8月号 「生活クラブ 夢の素描(デッサン)」を転載しました。

【2020年8月30日掲載】

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