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食べる人を思いながら【豆腐だんご・お弁当用、野菜かき揚げ、中華ちまき他】


家庭の台所で、家族の健康を気づかい食事の用意をする。神奈川県大和市の市街地に、同じような思いを持ち、バラエティー豊かな冷凍加工食品を作る会社、ニッコーがある。

上写真:ニッコー専務取締役の山﨑隆志さん(左)と関連会社「NYファーム」の石井茂雄さん

ものづくりの原点

専務取締役の山﨑隆志さん。「『ニッコー』は『日興』を親しみやすくカタカナで表しました。日々興こす。毎日いろいろなものを作る、新しいことに挑戦する、という意味です」
「自分の子供に安心して食べさせられる食品を作る」。冷凍加工食品の提携生産者「ニッコー」の専務取締役、山﨑隆志さんは、「私たちのものづくりに対する想いはいつもここにあります」と言う。神奈川県大和市にある本社工場では、豆腐だんご・お弁当用、野菜かき揚げ、大学いもなどを、熊本県八代市にある八代工場では、ミニたい焼き(カスタード)、桜海老とイカの野菜かき揚げなどを作っている。

ニッコーの創業は1984年。当時、隆志さんの父の貞雄さんはサラリーマンだった。家族の食生活を考えた時、健康的な生活を送るためには食べ物が一番大切であることに気づき、妻のスズ子さんと食品会社を設立した。隆志さんは、「父は、化学調味料などの食品添加物をなるべく摂らず、自然な味の食べ物を食べていると、体の調子を崩すことはないと考えたようですよ」と言う。

80年代のスーパーの棚には、現在のように多くの冷凍食品が並んでいることはなかった。冷蔵の加工食品は保存できる期間が短く、保存料などの添加物を利用することも多い。冷凍食品であれば、添加物を使わずに保存がしやすく、毎日の食卓をバラエティー豊かに彩るさまざまなものを作ることができる。そう考えた貞雄さんとスズ子さんは、大和市にある自宅を工場にし、冷凍食品を作り始めた。

「工場は60坪ぐらいで、初めは機械もなく、肉まんを手作りしていたそうです。最初の取引先は東京都内の生協でした」と隆志さん。化学調味料などの食品添加物は使わず、原材料は、自分たちと同じような考えを持つ信頼のおける業者から仕入れた。「私の祖父は熊本県の八代市で豆腐屋を営んでいました。父の貞雄は、店を手伝っていたこともあり、食品会社を作ることに抵抗はなかったようです」

その後、一般市場でも、手軽に食卓にのせることができる冷凍食品は、種類も生産量もどんどん増え、電子レンジを使う食べ方が主流となった。それでも、「生活クラブの交流会へ行くと、レンジを使わない組合員がたくさんいて、いろいろな食べ方を提案しています」と、隆志さん。蒸し器を使ったり、フライパンにアルミホイルを敷いて蒸し焼きにするなどで、十分おいしく食べられると言う。
「豆腐と野菜のふんわり揚げ」。ニンジン、インゲンなど「NYファーム」の農園で作った野菜も使用する
隆志さんの母、スズ子さん筆のニッコーの社是。設立以来、大切に守られている

通い合う気持ち

今年4月、新型コロナウイルスの感染が拡大し、緊急事態宣言が出された。拡散防止のため外出の自粛が広がると、宅配による食品の利用が急激に伸びた。
生活クラブ連合会でも加工食品の利用は増え、ニッコーでは、5月の申し込み数は前年比138%、特に中華ちまきは200%、ミニアメリカンドッグは140%だった。また、人気の野菜かき揚げの4月の申し込みも、昨年4月に比べて230%にも上った。「原材料はどんどんなくなり、調達のために方々に電話をしました。明日使う分もなくなってしまったことがありました」と、隆志さんは振り返る。

豆腐だんごなどの主原料である豆腐は、同じ県内の相模原市にある、共生食品から仕入れる。生活クラブ連合会の提携生産者だ。毎日、脱水した豆腐を届けてくれるが、さらに何回も追加注文した。「いやな顔ひとつせず、いつも製造に間に合うように対応してくれました。ありがたかったです」。同じように、スリーエイトのハチミツ、小野田製油所のごま油など、仕入れはいつもよりもはるかに多い量となった。隆志さんは、「何か一つでも欠けていたら作り続けることはできませんでした」と言う。多くを語らなくても「よしわかった」と、気持ちが伝わる生産者の存在を、とても心強く思ったそうだ。

大量の申し込みを受け、従業員も手を尽くした。「世間ではテレワークなど在宅勤務をすすめていますが、ものづくりの現場ではなかなかそうはいきません。従業員は、人手が足りないこともよくわかっていました。仕事とはいえ、外へ出かけることにためらいがある中で、多くの人が出社してどうにか納品に間に合わせることができました」
ニッコーは、2カ月続いたそんな状況を乗り越え、信頼できる仲間たちと、冷凍食品の製造を続けている。
綾瀬市にある畑。さがみ生活クラブの組合員が、草取りなどの援農に来る

大きな台所

豆腐だんご、野菜かき揚げ、大学いもなどの原材料に多くの野菜を使うニッコーは、本社工場近くに自前の畑を持つ。
隆志さんの両親は、土づくりからこだわった野菜を育て、それを製品の材料に使いたいと思っていた。2009年、農地法が改正され、民間会社でも農業に参入できるようになると、10年、社内に農業事業部を発足させ、16年に野菜栽培を専門にする株式会社「NYファーム」を設立する。

現在農地は、大和市と隣の綾瀬市に、合わせて約一町歩(3000坪)となった。農場長の石井茂雄さんは、「綾瀬市には何年も使われていない耕作放棄地が多くあります。そこに土を入れ耕し畑地にしました。なるべく農薬を使わない農法を選んでいますが、全くの無農薬で栽培できるような土づくり技術の習得はまだまだです」

ナス、ニンジン、インゲン、モロヘイヤ、白菜など多くの種類の野菜を栽培する。「天気や気温が影響して予定通りの収穫ができないなど課題は多いです。でも自前の畑で採れた新鮮な野菜を使って冷凍食品を作れるのはうれしいです」と隆志さん。

大和市にある本社工場では、野菜の処理の大半を人の手で行う。大きなまな板があり、包丁やピーラーを使い、皮をむきみじん切りにする。機械の手を借りる作業もあるが、家庭の台所を大きくしたようなイメージだ。

道具類や機械の洗浄は、合成洗剤や薬剤ではなくせっけんを使う。揚げ物を作るのに使うラインには、あらかじめ何回か熱湯を通す。ちなみに油は米澤製油のなたね油。特殊なフィルターで濾(こ)しながら使い切る。出てきた野菜くずは畑の肥料の原料になる。

ニッコーの加工食品作りは、どこか、家庭の食事作りに似ている。いつも、食べる人の健康を願い、笑顔で食卓を囲む風景を思い浮かべているようだ。
「NYファーム」の農場長の石井茂雄さん
畑の端には、組合員が種から育てたコスモスが植えられ、秋に花が咲き畑を彩る
撮影/田嶋雅巳 
文/本紙・伊澤小枝子

心意気に守られて

「野菜かき揚げ」米澤製油のなたね油で揚げる
生活クラブ連合会では、加工食品の前年同月比130%の注文が続く。加工食品会社にとっては、原材料の調達や製造に関わる人手の確保が迫られる大変な出来事だ。

ニッコーでは、ハチミツやごま油は欠かせない原材料のひとつ。新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が全国に出された後の4月後半、熊本県の八代工場でも使用するハチミツが、突然足りなくなった。生産者のスリーエイトに、二日後に一斗缶で10缶ほしいと連絡した。在庫の確認を待っていたが、次の日にまた連絡すると、「今作っている」という返事だった。

スリーエイト養蜂部の志村学さんは、「ハチミツの原料は温めて濾(こ)さなければ製品になりませんが、その時はたまたまそこまでの工程を終えたハチミツがありました。連絡をもらった次の日の朝、山﨑さん自らが6缶取りに来られましたよ。残りの4缶はその次の日に出荷しました」。その頃は運送業者もなかなかみつからず、みつかっても納期を約束することができない。「何軒も交渉したことを記憶しています」それでもニッコーの要請になんとか間に合わせることができた。
ごま油も同じように足りなくなり、小野田製油所に連絡した。納入してほしいと頼んだら、「ようしわかった、何とかしちゃる!」と小野田隆昭さんから返事が返ってきた。「親生会でいつも顔を合わせている仲間からの頼みです。できる範囲ですが、応えるのは当たり前ですよ」と涼しい顔だ。

生活クラブ連合会の提携生産者は、「生活クラブ親生会」という組織を作り、生産者同士が交流し、情報交換をしている。組合員との交流も積極的だ。現在125の提携生産者が参加し、お互いに切磋琢磨(せっさたくま)し合い、協力しながら消費材を作っている。今回の組合員の消費量の増加に対応できたのは、多くの提携生産者同士が気持ちの通い合う関係にあることも理由のひとつだ。

私たちの食べ物は、こんな生産者たちの心意気に守られている。作る人同士、作る人と食べる人の間に、長い時間をかけて信頼関係が築かれ、いつの間にか見えない約束が結ばれていた。
小野田製油所のごま油とスリーエイトのハチミツが欠かせない「中華ちまき」
撮影/田嶋雅巳 
文/本紙・伊澤小枝子
『生活と自治』2020年10月号「新連載 ものづくり最前線 いま、生産者は」を転載しました。
【2020年10月20日掲載】
 

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