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秋田県にかほ市の風車2号基、建設計画がスタート エネルギーをめぐる都市と地方の新たなあり方を目指して

生活クラブ連合会と各地の生活クラブは、グループで策定した「生活クラブ総合エネルギー政策」推進のため、各地で再生可能エネルギーの発電所の開発を進める。2012年に秋田県にかほ市に建設した風車「夢風」に続き、同市2基目の風車建設計画が、今年4月、再始動した。早くから構想していたものの、東北電力所有の送電線への接続をめぐって中断を余儀なくされていた計画だ。計画再開を決断した背景には、エネルギーをめぐる、都市と地域の未来を見据えた構想がある。

矛盾残しつつ、計画再開

生活クラブ風車「夢風」5周年記念イベントで。地元の人たちと生活クラブ組合員が夢風の前に集合

日本海に面した秋田県にかほ市に風車「夢風」が立っている。2012年、生活クラブ東京、神奈川、埼玉、千葉などで構成する一般社団法人「グリーンファンド秋田」が、再生可能エネルギー(再エネ)100%の電気の共同購入を目指し、自前で建設した風車だ。14年には、生活クラブ連合会と各地の生活クラブの共同出資で電力小売り会社「株式会社生活クラブエナジー」を設立、ここで発電する電気を、組合員に供給する事業も始まった。

グリーンファンド秋田では、引き続き同市院内地域に2号基の建設を計画していたが、16年、東北電力は「送電線の空き容量はゼロ、接続はできない」と表明、計画は暗礁に乗り上げた。その後、同社は送電線増強工事を行うという方針を打ち出した。そのための費用は、接続を希望する事業者を募集し、落札した事業者の案分で賄うというものだ。

試算したところ1基目に比べ10倍以上の費用が見込まれる上、増強工事には12年間かかり、その間、暫定的に接続は認められるものの、補償なしで出力を抑制されることもありうるという。グリーンファンド秋田の代表理事、半澤彰浩さんはこれに対しこう疑問を呈す。

「送電線は電力会社の持ち物なのでそこにつないで電気を流すための費用は支払いますが、それは毎月支払う『託送料金』という形で十分なはず。それに加え工事費用も使用する側が負担する必要があるのか、本当に容量はないのか、これほど大規模な増強が必要なのかなど多くの点に疑問が残ります。本来であれば、電力は水などと同じ公共インフラ。税金で払うなど公平にするべきと思います」

しかし、これに応じなければ風車建設は進まない。一方、費用次第では採算が見込めない場合もありうる。難しい判断を迫られる中、グリーンファンド秋田はこのプロセスに応募、建設予定地の住民との十分な協議や風況調査、環境影響評価を行いながら、この数年間、行く末を見守ってきた。20年1月になってようやく負担する費用が確定し、あらためて試算した結果、建設計画の再開が決まったという。

「工事費用を負担しても、なんとか事業が成り立つとの見通しが立ちました。電力会社の方針に今も矛盾は感じていますが、決まってしまった中では進めるしかない」と半澤さん。その背景には、にかほ市との間に築いてきた関係をさらに進め、新たな構想を実現していきたいとの強い思いがある。
2号基は、にかほ市の院内地区に建設予定。組合員による視察も行った

地域に資するために

2基目の風車は、にかほ市の院内地区に建設される予定だ。グリーンファンド秋田が首都圏の4単協を中心に構成されるのに対し、さらに広く10の単協の参画で進めるため、新たに「株式会社生活クラブにかほ院内風力発電」を立ち上げた。出資の関係から事業運営は夢風1号とは独立して行うが、2基は共に、にかほ市と生活クラブをつなぐ存在であり、同市における再エネによる地域づくりの柱となる。
一般社団法人「グリーンファンド秋田」の代表理事で生活クラブ神奈川の専務理事、半澤彰浩さん
「ここまで来るのに、10年以上かかりました。ゆっくりですが、にかほ市との信頼関係は確実に進んでいます」と半澤さんは、この間の連携を振り返る。

「再生可能エネルギー」とはいえ、発電所の開発には多くの課題がある。大規模な森林伐採や騒音、景観などをめぐり、住民とのトラブルが発生することも少なくない。都会資本で開発を進める結果、収益のほとんどは都市部に流れてしまうという問題点も指摘される。

生活クラブ総合エネルギー政策が目指す電源開発は、地域への負荷をかけないことはもちろん、電気の産地を支え、再エネによる地域づくりを進めることも掲げる。
夢風1号基建設に至るまでもグリーンファンド秋田は、何度となく現地に足を運び、住民と協議を重ね、風況や環境負荷を調査してきた。建設にあたっては「地域間連携による持続可能な自然エネルギー社会に向けた共同宣言」を行い「にかほ市と生活クラブによる連携推進協議会」を設置した。各地の生活クラブ組合員と地元との交流は毎年続き、その中からは、にかほ市の生産品を使った食材の共同開発、提携も生まれた。現在では年間2000万円程の経済効果を生んでいる。数年前からは提携生産者の製品の原料として、加工用トマトや大豆の生産も始まった。こうした活動の結果、市内の生産者同士の横のつながりが生まれ、「夢風ブランドの開発生産者連絡会」も設立されている。

夢風1号基が立つ芹田地区を中心にこうした動きが広がるにつれ、市内の他地域からも再エネによる活性化を望む声は高まりつつあるという。

再エネのまちづくり

にかほ市では、日本では希少な石油が採掘されていた時期がある。夢風2号基の建設予定地、院内地区一帯は「院内油田」とも呼ばれていたという。天然ガスもあり日射量や風況もよい。もともとエネルギー資源が豊富な地域であるが、これまでは都会の資本による再エネ開発が多く地域づくりに十分生かしきれていない面もあった。生活クラブグループとの交流が刺激となって、現在、同市には「自然エネルギーによるまちづくり基金条例」が制定され、夢風をはじめとして同市で展開されている再エネ発電所からの寄付で基金が造成されている。これをもとにした新たな条例制定の動きも始まった。

その前段階として、現在進めているのが「ゾーニング事業」だ。市内をくまなく調査し、開発可能な場所か、してはいけない場所か、協議が必要な場所かを判断、色分けして地図上に示し、市民に公開する。欧州では、再エネ開発を進める一方、住民の生活環境を守るため、こうした区分けは一般的で、これを重視し開発が行われるという。日本ではまだ公開し周知するだけで、規制までには至っていない。そこで、再エネ条例を制定し,この区分けに沿って規制を行おうというのが、にかほ市の狙いだ。 

地域で発電した再エネ電力を、自前の小売り会社を通じて地域に供給する、エネルギー地産地消の構想も検討の予定だ。これには、生活クラブエナジーのノウハウが役に立つ。半澤さんはぜひ連携して共に進めたいと期待を寄せる。

「時間はかかっていますが、再エネによる地域づくりは、風車『夢風』をきっかけに着実に進んでいます。再エネによる地域経済の活性化とともに、都市住民とエネルギー産地とが支え合うモデルとなると思います」と半澤さん。こうした構想を各地で推進することが、原発や石炭火力に依存しないエネルギー政策につながる。そのためにも再エネによる電力を使う人が増えることは最重要課題だ。

「生活クラブの風車が発電した電気は、米や牛乳と同じ『消費材』です。使うことで産地を支え、事業が成り立つ。多くの人に広げていきたい」と半澤さんは訴える。
 
写真提供/一般社団法人「グリーンファンド秋田」
構成/本紙編集室

『生活と自治』2020年11月号 「生活クラブ 夢の素描(デッサン)」を転載しました。
 
【2020年11月30日掲載】

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