オンラインでの組合員活動の可能性
人と会って話すこと、誰かと一緒に食事をすることは日常生活のごく当たり前の行動だ。生活クラブ運動の基本でもある。しかしコロナ禍では、人との距離を開けることが求められ、多人数での会食もままならない。組合員活動も変化を余儀なくされている中、オンラインの活用に新たな可能性を求める動きも活性化している。
コロナ禍だからでなく
永山春衣さん。生活クラブ加入歴4年なので、新規加入者に近い視点で動画を作成している
「『eくらぶ』で注文する人はカタログも支部の機関誌も何も見ないでそのまま翌週の回収に出してしまいます。情報が伝わらないし、機関誌は残らないことから、動画を撮って配信してみようと思いました」
生活クラブ埼玉、大宮支部の2020年度運営委員長である永山春衣さんが、動画投稿サイト「YouTube(ユーチューブ)」に「生活(クラブ)編集室」を配信し始めたのは今年1月からだ。大宮支部で提携生産者である酒井産業の木のおもちゃの展示会を行った際、その様子を撮影して配信したことが始まりだった。
「生活クラブが地域でこんなことをしているよ、と知らせたいと思いました。動画なら子育て世代など忙しい人も自分の都合のいい時に見られます」
永山さんは多くの人に組合員活動を伝えたいという思いから動画という方法を考えたという。たまたま時期は重なったが、コロナ禍だからということではない。
初期の動画の中には、大宮支部の活動のほかに、保育園の「ママ友」を支部委員に誘ったり、家族ぐるみの友人とワインを飲みながら「食べることへの意識の変化」について話す様子もある。とても私的ではあるが生活クラブの組合員なら思わずうなずいてしまうような共感箇所の多い動画だ。
生活クラブ埼玉、大宮支部の2020年度運営委員長である永山春衣さんが、動画投稿サイト「YouTube(ユーチューブ)」に「生活(クラブ)編集室」を配信し始めたのは今年1月からだ。大宮支部で提携生産者である酒井産業の木のおもちゃの展示会を行った際、その様子を撮影して配信したことが始まりだった。
「生活クラブが地域でこんなことをしているよ、と知らせたいと思いました。動画なら子育て世代など忙しい人も自分の都合のいい時に見られます」
永山さんは多くの人に組合員活動を伝えたいという思いから動画という方法を考えたという。たまたま時期は重なったが、コロナ禍だからということではない。
初期の動画の中には、大宮支部の活動のほかに、保育園の「ママ友」を支部委員に誘ったり、家族ぐるみの友人とワインを飲みながら「食べることへの意識の変化」について話す様子もある。とても私的ではあるが生活クラブの組合員なら思わずうなずいてしまうような共感箇所の多い動画だ。
「生活クラブで自分と家族の生活が変わっていく、そういう意味で『生活(クラブ)編集室』と名付けました。子どものアレルギーをきっかけに生活クラブに加入しましたが、夫は外食や添加物いっぱいのものが好き。それも否定しないけれど、続けているうちに夜勤の合間に夫がわざわざご飯を食べに家に帰ってくるようになるなど変化がありました」と永山さん。動画は組合員活動の紹介でもあり、生活クラブをベースにした生活の変化の記録にもなっている。
▼「生活(クラブ)編集室」の動画はこちらから。5分前後のものが多いので気軽に見られる
https://www.youtube.com/user/haruiarai/videos
▼「生活(クラブ)編集室」の動画はこちらから。5分前後のものが多いので気軽に見られる
https://www.youtube.com/user/haruiarai/videos
消費材の購入量が増える中で、工夫してやりくりしている様子。初期の動画にはスーパーと合わせた1週間の献立編もある
酒井産業の木のおもちゃの展示会の動画。木工作家のダニー・ネフセタイさんの作品も。「生活クラブ大宮支部」というホームページにはイベント報告がある
対面で説明できない新規加入者に向けた、生活クラブのリユースの仕組みを伝える動画
苦手意識も尊重して
今年3月からは各地の生活クラブでも対面での組合員活動は自粛となった。永山さんは、オンラインで委員会を開いた地域があることを画像共有のSNS「インスタグラム」で知り、大宮支部でも取り入れようと考えた。
提案してみると戸惑いの声も聞かれた。パソコンやスマホも持っているけれども、自分にはできないと言う人もいた。永山さんは、一人一人と電話で話し、支部委員内でフォローの体制をとった。
現在では会議だけでなく映画の上映会や、「誰でも雑談ルーム」という組合員同士が地域の課題や子育てなど気軽に話せるオンライン上の場も立ち上げられている。
「移動の時間がかからないなどオンラインの良さもありますが、試食ができず単純においしいという感想を共有できないのは残念。同じ空間に誰かがいて発言が活性化していくということもなく、お金のやり取りもできないので会計が大変など、課題はいろいろあります。そろそろ会いたいね、という言葉がでてきたので、オンラインと併用した対面の会議を検討しています」(永山さん)
提案してみると戸惑いの声も聞かれた。パソコンやスマホも持っているけれども、自分にはできないと言う人もいた。永山さんは、一人一人と電話で話し、支部委員内でフォローの体制をとった。
現在では会議だけでなく映画の上映会や、「誰でも雑談ルーム」という組合員同士が地域の課題や子育てなど気軽に話せるオンライン上の場も立ち上げられている。
「移動の時間がかからないなどオンラインの良さもありますが、試食ができず単純においしいという感想を共有できないのは残念。同じ空間に誰かがいて発言が活性化していくということもなく、お金のやり取りもできないので会計が大変など、課題はいろいろあります。そろそろ会いたいね、という言葉がでてきたので、オンラインと併用した対面の会議を検討しています」(永山さん)
広がるオンライン活動
各地の生活クラブの組合員活動でもオンラインは積極的に活用されている。本紙編集委員によれば、生産者交流会や学習会開催などのほか、試食する消費材をあらかじめ配達便で届け、オンラインで一緒に食べる試食会も開催されているという。ストレッチ講座など画面をずっと見るだけではない参加型の企画もある。
参加した人からは、自宅から移動しなくていいことが大きな利点としてあげられる。車のない高齢者も参加できた、牛舎から生産者がライブ配信してくれて現地の様子が見られたなど実施してよかったという声は多い。遠方の人とつながることができるのは、オンラインならではだ。一方で、集中力がなくなる、直接話すことに比べると言い出しにくい、他の参加者の情報がわかりづらいなどの難点もあげられた。
主催した側からは、オンラインだと参加人数が増える、会場を探さなくていいなどがメリットとしてあがった。ただ、うまく接続できない参加者のために個別に対応する人を配置する、リハーサルをする、進行に気を配るなど画面には映らない配慮もさまざまに必要になるようだ。
生活クラブ連合会でもYouTubeを使った「サルベージ・クッキング」「マキさんのシンプルライフ講座」など組合員と双方向の企画を開催した。今年3月末から始めた、サステイナブルな暮らしを進めるキャンペーンで対面イベントができなくなったためだ。広報政策課の相馬祥さんは、「もともと組合員以外にもキャンペーンを伝えようと準備していたインスタグラムがオンラインでの発信を広げるきっかけになりました」と話す。SNSや動画から情報を得る人が増える中、組合員のシェアなどにより、人の目につきやすくなり、生活クラブの存在を大勢に知らせることになると言う。
シェアとは友だちに見せたい動画や投稿を伝えていくこと。大宮支部の永山さんも「地域に還元していくのが組合員活動。みんなで共有できたらいいですね」と自身や大宮支部が作成した動画をシェアすることは大歓迎だと言う。
コロナ禍をすぎても、オンラインは、つながる道具、伝える道具の一つとして定着していくだろう。変わらない価値を共有するための方法は、変わってもいい。
参加した人からは、自宅から移動しなくていいことが大きな利点としてあげられる。車のない高齢者も参加できた、牛舎から生産者がライブ配信してくれて現地の様子が見られたなど実施してよかったという声は多い。遠方の人とつながることができるのは、オンラインならではだ。一方で、集中力がなくなる、直接話すことに比べると言い出しにくい、他の参加者の情報がわかりづらいなどの難点もあげられた。
主催した側からは、オンラインだと参加人数が増える、会場を探さなくていいなどがメリットとしてあがった。ただ、うまく接続できない参加者のために個別に対応する人を配置する、リハーサルをする、進行に気を配るなど画面には映らない配慮もさまざまに必要になるようだ。
生活クラブ連合会でもYouTubeを使った「サルベージ・クッキング」「マキさんのシンプルライフ講座」など組合員と双方向の企画を開催した。今年3月末から始めた、サステイナブルな暮らしを進めるキャンペーンで対面イベントができなくなったためだ。広報政策課の相馬祥さんは、「もともと組合員以外にもキャンペーンを伝えようと準備していたインスタグラムがオンラインでの発信を広げるきっかけになりました」と話す。SNSや動画から情報を得る人が増える中、組合員のシェアなどにより、人の目につきやすくなり、生活クラブの存在を大勢に知らせることになると言う。
シェアとは友だちに見せたい動画や投稿を伝えていくこと。大宮支部の永山さんも「地域に還元していくのが組合員活動。みんなで共有できたらいいですね」と自身や大宮支部が作成した動画をシェアすることは大歓迎だと言う。
コロナ禍をすぎても、オンラインは、つながる道具、伝える道具の一つとして定着していくだろう。変わらない価値を共有するための方法は、変わってもいい。
写真提供/永山春衣
文/本紙・佐々木和子
★『生活と自治』2020年12月号 「生活クラブ 夢の素描(デッサン)」を転載しました。
【2020年12月30日掲載】