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生協の食材宅配【生活クラブ】
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暮らしの共創へ 庄内の福祉コミュニティー構想の今

生活クラブ連合会の提携生産者が多く集まる山形県庄内地方は、「生活クラブの食料基地」ともいわれる。組合員の移住も含めて庄内の地域づくりに参加しようと、2016年から「庄内の福祉コミュニティー構想」が進められてきた。この構想は、庄内地方の中心的都市である酒田市と共に進められており、同市内で地域の交流拠点ともなる住まいづくりが具体化しつつある。

もう一つの提携へ

コメの積出港としてにぎわった酒田の歴史を今に伝える山居倉庫
JA庄内みどり(酒田市・遊佐町)のコメをはじめ、平田牧場(酒田市)の豚肉、月山農場(酒田市)の農産加工品など、庄内地方は多くの「消費材」の産地であり組合員の愛着も深い。生活クラブが誕生して50年超。提携生産者も同じ年月を重ねてきた。今後さらに地方の高齢化が進み、作り手が減少し続ければ、消費材の供給も厳しくなる。生活クラブ連合会長の伊藤由理子さんは、庄内の福祉コミュニティー構想の背景についてこう話す。

「気候変動や後継者不足で、すでに原料確保が難しくなっている消費材もあります。食を持続するには『食べる約束』をして利用し続けることが大前提ですが、それだけで再生産は担保されません。これからは生産者と共に産地の環境や暮らしを守っていくことが消費者にとっても必要です」

この構想を描き始めた頃すでに、酒田市では移住者を募る政策を推進していた。庄内は気候風土や歴史文化が豊かで魅力あるエリア。基幹産業もあるが、それでも人口流出は深刻化している。移住政策を自前で進めるのに苦戦する自治体は多く、酒田市も例外ではなかった。そこで、庄内の生産者が酒田市に紹介したのが生活クラブだ。
首都圏の各生活クラブもまた、超少子高齢化時代のあり方を考えるべき時期にきていた。2015年に行ったアンケート調査では、移住も含め元気なうちに「終の住処(ついのすみか)」を探したいという人が一定数いたことも庄内の福祉コミュニティー構想に着手する要因になった。

産地で暮らす

酒田市との連携で、関心ある組合員を募り、高齢期の暮らし方を話し合う活動が16年から始まった。消費材の利用で産地を形成してきた世代が、次は暮らすこと、滞在することで産地のまちづくりに参加する試みだ。庄内の暮らしの体験ツアーやその報告会、生産者や酒田市の職員を招いた学習会などが開催された。17年からは「老い支度を考える―ゆるやかな連絡会」が始まり、参加者は延べ1000人超、昨年開催したインターネット通信での老後を考える講座には400人近い申し込みがあった。全員が移住を検討していないとしても、産地でのセカンドライフに関心を寄せる人は多い。

一方、庄内の提携生産者は、食、エネルギー、福祉をできるだけ地域で自治し循環させる仕組みをつくろうと、17年「庄内協議会」を立ち上げ、まず「生活協同組合庄内親生会」を設立した。生産者自ら消費材を共同購入すると同時に、将来は移住者が加入することも想定している。さらに19年には「庄内・遊佐太陽光発電所」がスタート。発電事業の剰余金の一部を庄内地域に還元するための基金が創設された。

現在、この基金も活用し、生活クラブと酒田市の連携による、地域交流拠点を兼ねた集合住宅の建設計画が進められている。建設地の近くには酒田市のシンボルでもある山居倉庫や東北公益文科大学、最先端医療を行う日本海総合病院やそのサテライト病院がある。福祉系の事業所も充実しているため、拠点にはあえて介護施設を造らず、連携していく方針だ。

基本は食の自給

交流拠点の建設と運営は地元の事業者から選考することも考慮し、すでに説明会や対話型の調査を終え、3月には、パートナー事業者が決定する。竣工予定は22年。テナントや住人の入居も始まる予定だ。拠点の居住スペースには、移住者も地元の人も住める。学生や高齢者、障害者も住むことができる「ごちゃまぜ」の空間を目指している。地元の人が繰り返し来るような交流拠点になれば、雇用が生まれ、若者も集まりやすい。

「生活クラブのみなさんはコミュニティーづくりの経験があり、決断力、行動力、コミュニケーション力もある」と酒田市の担当者の期待も大きい。拠点の設計には首都圏で活動する組合員の意見も聞きとり反映させていく計画だ。

構想の今後について伊藤さんはこう語る。
「エネルギーや福祉にも力を入れ進めてきましたが、今後は改めて食の分野が重要です。生産者の地域づくりにつながるような消費材生産や、生産者が地域市民とつながる方法を一緒に考えていきたいですね。豊かな地域づくりができないと産地がなくなってしまいますから。コロナ禍で、自給の大事さを再確認した組合員や生産者もたくさんいます。その思いを背景に再度、産地づくりに力を入れていきたいと思います」

産業がなければ産地の暮らしは成り立たない。食でつながってきた産地と都市住民との関係は、エネルギー、福祉の地域内循環も見据えつつ、再び食の自給を目指して新たな段階に向かっている。

文/大久保ろりえ
地道な市民の監視を
今年も始まるGMナタネ自生調査活動


日本に輸入されているナタネのうち約80%が、遺伝子組み換え(GM)だと推定されている。除草剤をまいても枯れない情報を持つ遺伝子を組み込んだものだ。日本では商業栽培は行われていないが、輸入の際、港周辺や輸送途中でこぼれ、道路沿いでの自生や別の植物との交雑なども報告されている。生態系や生物多様性に影響する可能性があると、各地の生活クラブ生協では、2005年から他の市民団体と共に、毎年、身近な地域の菜の花の調査を行ってきた。

2020年度は18都道府県で合計433検体を検査、神奈川県本牧ふ頭、愛知県名古屋港などの他、北海道小樽港では初めてGMナタネの自生が確認された。原因などは明らかになっていないが、それぞれ行政に報告し対策や今後の監視を要望、10月には、農林水産省など国の関係省庁とも意見交換を行った。

今回初めて確認された北海道には、GM作物の栽培による交雑禁止を定めた条例がある。市民による署名活動などを経て05年に制定されたものだ。道は、農作物を守るためであり自生には対応できないとしているが小樽市は今後の監視を約束してくれた。調査に参加した生活クラブ北海道の理事、泉屋めぐみさんは「あきらめずに声を出し続けていくことが大事」と話す。1996年にGM作物の輸入が認可された当時は「食の安全は守れないのでは」とあきらめかけたという泉屋さん。だがその後の活動で、不十分ではあるが表示義務ができ日本での商業栽培は阻止できている。「少しずつでも前進している手応えを実感しています。調査を通じ、日本の食料自給率やGM作物に使われる農薬の問題などを多くの人に伝えられる点も重要」と話す。

今年も菜の花の咲く3~5月をめどに、各地の生活クラブが調査活動を計画している。調査活動の継続と市民の監視が力になる。

 

写真提供/生活クラブ北海道 文/本紙・宮下

★『生活と自治』2021年2月号 「生活クラブ 夢の素描(デッサン)」を転載しました。
【2021年2月28日掲載】

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