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生活クラブのネットワークで実現 パスチャライズド牛乳を学校給食に

自治体ごとに異なる学乳のキャップフィルム。児童から募集したイメージキャラクターがプリントされている

農林水産省の調査によれば、2018年現在、全国の学校給食の牛乳容器の81%が紙パックだ。びん容器劣勢の中、昨年6月、東京都の青梅市と多摩市の学校給食にびん入り牛乳が登場した。新生酪農千葉工場のパスチャライズド牛乳だ。同社は約40年前に生活クラブ生協が生産者と共に出資して設立し、以後、連携して牛乳・乳製品の開発を進めてきた。日々の搬入など物流が課題となる学校給食も、生活クラブグループの自前の物流システムで対応、産地と消費地をつなぐ新たな動きが始まっている。

おいしい牛乳のひみつ

「さらっとしてほんのり甘みのある牛乳です」
牛乳の切り替えにあたって青梅市立学校給食センターが発行した「給食だより」は、パスチャライズド牛乳(パス乳)をこう紹介した。生乳に含まれる細菌のうち有害な菌を72度15秒間の加熱で殺菌する「パス乳」は、熱によるタンパク質の変性が少なく、風味も損なわれない。さらに、牛の健康を第一に考えたえさや、使用する生乳の鮮度が、「おいしい牛乳のひみつ」だと伝えている。

新生酪農の千葉工場は、2006年から200ミリリットルびん牛乳の製造ラインを増設し、茂原市を中心とした近隣自治体で学校給食用牛乳(学乳)の供給を開始した。以後、地域の子どもたちがパス乳のおいしさを知り、容器のリユースやキャップのリサイクルを体験する機会として高い評価を受けている。

多くの乳業メーカーがびん牛乳の生産を縮小する中、20年6月、東京都の青梅市と多摩市の学校給食でもパス乳の供給が開始された。都内小・中学校に学乳を納入する「東京学乳協議会」が、20年度から紙パックの回収を行わないと通達したことが契機となった。空になった紙パックをどう処理するか。課題はさまざまあり、各市区町村で対応が分かれた。

青梅市では、紙パックの処理対応以前に、未開封や飲み残しなど毎日たくさんの牛乳が廃棄処分されることを問題視する声が、栄養士からあがっていた。「おいしく飲める牛乳」を探す中で、新生酪農と近隣自治体の実践に着目した。びん入りのパス乳は冷たさや風味を感じやすく、飲んだ量もわかる。成長期の子どもに必要なカルシウムを、吸収されやすい形で摂取できる牛乳として採用された。

同じ東京都内の多摩市は、当初、紙パックのリサイクルを検討していた。しかし限られた給食の時間内に、パックを開き、洗い、乾燥するのは児童の負担が大きい。食べるだけで精いっぱいの児童もいる。廃プラスチックとなるストローの処理も課題だ。市は容器のリサイクルからリユースへ方針を転換。対応可能な乳業メーカーを探し新生酪農に行きついた。

自前の物流の仕組みで

一方、新生酪農においても学乳の供給拡大にはいくつか課題があった。新生酪農の牛乳工場は、千葉県睦沢町、栃木県那須塩原市、長野県安曇野市の3カ所にあり、それぞれ生産品目が異なる。現在、200ミリリットルのパス乳を生産しているのは千葉工場だけだ。

同社政策調整室の齊藤輝彰(てるあき)さんは「まず、冷蔵庫の問題がありました」と話す。「千葉工場はヨーグルトなど乳製品の生産もしています。パス乳の生産ラインや冷蔵庫の余力はなく、生産後、すぐに出荷できる柔軟な物流体制が必要でした」

この物流体制を支えるのが、太陽ネットワーク物流だ。同社は1976年、平田牧場(山形県酒田市)の無添加ウインナーを首都圏の生活クラブに届けるための冷蔵流通を担う部門として設立(当時は太陽食品販売)し、現在、飯能DC(デリバリーセンター)、茂原、栃木、塩尻の四つの事業所で事業展開する。全国の提携生産者から出荷されたものを、埼玉県の飯能DCに運び、そこで組み込まれたものを各地域の配送センターやデポーに届ける役割を担っている。

千葉工場のパス乳は生産後すぐに飯能DC事務所に転送され、そこから青梅市、多摩市の小・中学校へ配達される。生活クラブの共同購入の物流システムを活用することで、両市に学乳を提供することが可能になった。

学校の休み期間も課題の一つ。夏休みなど長期の休み期間には、千葉と東京を合わせ、1日に3万本近い学乳の生産がストップすることになる。生産調整はもちろん、雇用の対応も必要だ。

新型コロナウイルスの影響で、20年度の学乳供給はイレギュラーの連続だった。緊急事態宣言による休校で供給開始が遅れる一方、夏休みは短くなった。「コロナの影響で学乳の生産がゼロだったのがわずかな期間だったことは幸いでしたが、引き続きの課題です。今後の対応として、学校の長期休み期間に、良質な原料乳でチーズを集中生産することを検討しています。新鮮な牛乳を『飲むだけでなく、おいしく食べる』ことも進めていきたいですね」(齊藤さん)

信頼を得て着実に

コロナ禍で「巣ごもり需要」が増え、生活クラブに限らず、宅配業務を担うドライバー不足は深刻だ。特に、若い世代のドライバー離れが続く中、太陽ネットワーク物流の茂原事業所では近年若手のドライバーが登場し、近隣自治体への学乳の配達を担っている。

就職にあたって運転免許を取得した先輩ドライバー(入社5年目)と、運転が大好きで車関連の仕事に就きたかったと言う後輩ドライバー(同3年目)。知らない土地での配達に不安を抱えていた二人も、今はすっかり慣れたと話す。トラックの積み込み作業は早朝の重労働。加えて雨の日や台風が近づいている日の配達は、視界が悪く緊張が続く。それでも、空きびんの回収時には、納品先の生徒から「ありがとうございました」「ごちそうさまでした」と声をかけられることもあると言う。そのたびに仕事の価値を感じると口をそろえた。

先行自治体の実践を踏まえて、新生酪農には都内の他の自治体からの問い合わせも多い。要望に応えるには、生産だけでなく、乳量の確保と物流の体制を整えることが前提になる。「この間、工場近隣自治体や青梅市、多摩市と良好な関係を築いてこられました。まずは、これを維持すること、安定的に供給して実績をつくることが一番の目標です」と齊藤さん。遠隔地への販路拡大や急激な量産は難しいとしたうえで、「子どもの頃からパス乳に慣れ親しめば、大人になっても飲み続けてもらえるのではないでしょうか。今、給食で飲んでいる子どもたちが家庭内で話題にしてくれるとうれしいですね」と親世代への波及効果にも期待する。

この4月から、もう一つ、新規自治体への学乳供給が始まった。他自治体からの要請もあるが、自治体の規模と生産余力とが見合わなければ即応できないのが悩ましい。パス乳のおいしさやびん容器の価値がさらに広がり、学乳での採用を望む声が増えれば、首都圏近郊酪農の新たな希望につながる可能性もみえてくる。
学乳の配達をする太陽ネットワーク物流のドライバー。受験に必要な年齢、経歴に達したため、大型免許の取得にトライする
新生酪農の齊藤輝彰さん(左)と、太陽ネットワーク物流・茂原事業所のみなさん
撮影/高木あつ子 文/本紙・元木知子

★『生活と自治』2021年4月号 「生活クラブ 夢の素描(デッサン)」を転載しました。
【2021年4月30日掲載】

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