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新型コロナはグローバル資本主義への警告 なぜ、世界的な感染拡大が起きたのか?

【寄稿】経済アナリスト・獨協大学教授 森永卓郎さん


新型コロナウイルス感染症が確認されてから1年が経過した今も、世界の感染者数は拡大を続けています。世界の感染者数は1億人を超えました。医療技術が発達した現代で、なぜこんなことが起きたのでしょうか。根本の原因はグローバル資本主義だと私は考えています。

グローバル資本主義は地球規模で競争を展開し、最も安い価格を提供できる企業に世界中の需要を集約して、大規模生産によって、生産性を上げる仕組みです。

たとえば、大手量販店で1本の価格が千円を下回るジーンズが売られていますが、そんな低価格が実現できるのは、世界で販売するジーンズを途上国に一括発注して買いたたくからです。こうした仕組みを機能させるには、当然、世界のなかでの移動を活発に行う必要があります。実際、この四半世紀は国際間の人の移動が爆発的に拡大しました。その頻繁な往来によって、新型コロナウイルスも、あっという間に世界中に拡大したのです。四半世紀前の水準の往来者数であれば、新型コロナ感染症は、中国武漢の風土病で終わっていたかもしれません。

ただ、私には新型コロナの流行は、感染症の問題にとどまらず、グローバル資本主義そのものへの警告であると思えてならないのです。1979年にマーガレット・サッチャーが「構造改革」を訴えてイギリスの首相になって以来、2年後に誕生した米国のレーガン政権、日本では2001年の小泉純一郎政権下において、グローバル資本主義は、その勢力を拡大しました。グローバル資本主義が世界を席巻するようになったのです。

日本でも316万人が1億500万円の「資産家」

資本主義の最大の問題は(所得)格差の拡大であることを喝破したマルクスは、やがて資本主義が内部崩壊し、社会主義の世の中がやってくると予見しました。しかし、戦後に生まれた社会主義国の経済が上手く機能しなかったことを受け、1980年代から再び資本主義は勢いを増し、グローバル資本主義と化していったのです。それはとてつもない格差をもたらしました。

18年前、『年収300万円時代を生き抜く経済学』という本を私は書き、大きな批判を受けました。「そんなことが起きるわけがない」と言われたのです。ところが、いまや年収100万円台の非正社員が4割を占める社会となり、年収が300万円ならば御の字という状況になってしまいました。 

しかし、実は現代の格差はそんなものではありません。「オックスファム・インターナショナル」というNGOによると、世界の富豪上位26人が保有する資産の合計は1兆4000億ドルで、この金額は世界人口76億人の下位半数、38億人の低所得層の保有資産と同額というのです。26人のほとんどは米国人ですが、日本でも似たようなことが起きています。

「キャップジェミニ」というフランスのコンサルティング会社の発表では、投資可能資産を100万ドル(1億500万円)以上持つ富裕層は316万人もいるとされています。グローバル資本主義は、膨大な低所得層を生み出すと同時に、少数だが、とてつもない資産を持つ富裕層を生み出したのです。不思議なことに、日本ではそうした格差拡大への大きな抗議行動は起きていませんが、世界では、大規模デモが各地で発生して、庶民の怒りは大きなうねりとなっています。

なぜ、温室効果ガスが削減できないのか?

グローバル資本主義のもう一つの問題は、地球環境の破壊です。熱波や干ばつ、海面上昇による浸水など、世界中が環境変化の悪影響を受けるようになってきました。日本も例外ではありません。ドイツの環境NGO「ジャーマンウオッチ」は、2018年に異常気象によって世界で最も深刻な被害を受けたのは、「日本」だったという分析結果を発表。西日本豪雨や、台風21号、そして埼玉県熊谷市に41.1度と観測史上最も高い気温をもたらした猛暑を理由にあげています。

なぜ、そんなことが起きたのでしょうか。最も大きな要因は地球温暖化です。
温暖化で海面温度が上昇することで暴風雨が吹き荒れるのです。そのため、2015年の「国連気候変動枠組条約」の締約国会議で、いわゆるパリ協定が結ばれ
ました。この協定で、世界の平均気温を産業革命前と比べて1.5度の上昇以下にとどめるという目標が定められました。それを達成するには、温室効果ガス排出量を2030年まで毎年7.6パーセントずつ削減しなければなりません。しかし、温室効果ガス排出量は毎年平均で1.4パーセントも増加して2018年には過去最悪となり、2019年も横ばいとなっています。

なぜ温室効果ガスの削減ができないのか。それは資本主義の拡大とエネルギー消費の拡大がセットになっているからです。日本人のライフスタイルを振り返ってもそれは明らかです。資本主義が浸透する前の農村では、間伐した木材を燃やして、風呂を沸かし、炊事をし、暖を取っていました。ところが、それが石炭や石油のストーブに代わり、最近では電気を使った24時間の完全冷暖房に代わっています。世界中でモノや人が移動するようになって、莫大なジェット燃料が使われるようになりました。退任式を終えたトランプ前大統領は、大統領専用のジャンボジェットに乗って、フロリダの別荘へと去りました。たった一人のために、とてつもないエネルギーが浪費されたのです。

なぜ、人口の大都市集中が起きたのか?


 
私たちは「地球号」という一つの船に乗り合わせた乗客です。船は守らないといけません。船を守るには、行き過ぎたグローバル資本主義を見直さなければなりません。ただ、私は、変化の兆しが見え始めていると考えています。

典型は東京一極集中の変化です。グローバル資本主義は、大都市集中をもたらします。世界には無数の都市がありますが、国際金融都市と呼ばれる都市は、ニューヨークやロンドン、東京など10に満たない数しかありません。金融取引は通信回線を介してどこでもできるはずなのに、なぜ大都市集中が起きるのかというと、金融取引で儲けようと思ったら、通信回線に乗らないインフォーマルな情報が重要になるからです。

金融取引で大金を得た富裕層の象徴的な資産は、都心のタワーマンションです。
高層階から、下界を見下ろす暮らしが、羨望の的になりました。ところが、新型コロナの感染拡大で変化が起きています。自慢のジムやゲストルームといった共用施設が閉鎖され、人数制限されたエレベーターには、長い待ち時間が生まれました。東京の魅力だったおしゃれなレストランやエンターテインメント施設は、営業時間の短縮に追い込まれています。

もちろん都心の最大の問題は感染リスクです。昼間人口でみると東京都心の人口密度は全国平均の200倍を超えているのですから、当然でしょう。そうした状況を受けて、四半世紀にわたって続いてきた東京一極集中が逆転し始めました。
昨年6月以降、東京都は6カ月連続で人口の純流出に見舞われています。

難しく考えず「近隣の原理」を取り戻そう!

私は、これから必要なことは、グローバル資本主義の柱である①大規模、②集中、③集権を改め、①小規模、②分散、③分権に社会の仕組みを変えることだと考えています。その際に参考とすべき理念は「ガンディの経済学」でしょう。インド建国の父、マハトマ・ガンディは、どうしたら世界の人々が幸せな暮らしができるのかを考え抜いた結果、「近隣の原理」にたどり着きました。近くの人が作った農産物を食べ、近くの人が作った服を着て、近くの大工さんが建てた家に住む。そうした小さな経済圏を無数に作っていけば、格差も地球環境破壊も止められるだろうと考えたのです。むろん、同様の取り組みを進めれば感染症の拡大も止められることになります。

そんな社会改革は決してむずかしいことではありません。昭和の時代まで、私たち日本人は、皆が普通にやっていたことだからです。


撮影/ 魚本勝之
取材構成/生活クラブ連合会 山田衛

もりなが・たくろう
経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。1957年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業。日本専売公社、経済企画庁、UFJ総合研究所を経て現職。執筆のほか、テレビやラジオ、講演などでも活躍。著書多数。『年収300万円時代を生き抜く経済学』(光文社)、『なぜ日本だけが成長できないのか』『消費税は下げられる』(角川新書)、近刊に『グローバル資本主義の終わりとガンディーの経済学』(集英社)

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