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「誰一人取り残さない」地域づくりを――コロナ禍、緊急支援カンパが目指すもの

支援カンパを助成した神奈川県横浜市のNPO法人「DV対策センター」による食品配布会

コロナ禍、生活の困難に直面している人の窮状が伝えられる。協同組合は、一人ではできないことをみんなの力で実現する組織であると同時に、社会的に弱い立場の人を支えるという使命を持つ。共同購入によって生産者と連携し日々の食品や日用品を手に入れる一方、今、周囲の困っている人、子どもたちを支えるために、生活クラブ連合会とその関連団体は、何ができるのだろうか。

地域の窮状が明らかに

2020年4月、新型コロナウイルスの感染拡大防止のための緊急事態宣言が出され、失業や休業を余儀なくされる人が増えた。

生活クラブ連合会や生活クラブ共済連は、誰もが自分らしく暮らせる地域コミュニティーをつくろうと、市民参加型の福祉事業を各地で展開してきた。各都道府県にある生活クラブ生協やその関連団体も、地域のNPOや社会福祉法人などと連携し、子ども食堂やフードバンク、居場所づくりなどの活動を幅広く行っている。

コロナ禍はそうした現場を直撃した。「仕事がなくなったひとり親家庭で食料品が買えない人がいる」「学校が休校で給食がなくなり、食べられない子どもたちがいる」。こうした情報が入り、生活クラブ共済連が詳細を聞き取った結果、さまざまな場面で困窮状態が明らかになった。

一方でその頃、生活クラブ連合会の事業剰余金は前年同期を大幅に上回っていた。外出自粛の影響により、共同購入を利用する人は増えて供給高は上がったが、多くの会議や活動がオンラインに切り替わり経費が抑えられたためだ。

これを受け、生活クラブ連合会は急きょ、生産者団体や物流を担う関連会社の協力を得て各地の関連団体にコメの緊急支援を行った。「協同組合の使命として、この事業剰余は社会に還元すべきと考えました」と同連合会の会長、伊藤由理子さんは振り返る。すぐに連合理事会で決議し、行動に移すことができた。

「各地の生活クラブには、地域ごとに進めてきた福祉事業やたすけあいの仕組み、被災地支援の活動などの積み重ねがあり、それぞれ地域の団体とのネットワークがあります。そのつながりを生かして、昨年7月までに約32トンのコメを82団体に届けることができました。フードバンクなどではコメを求める声はとても多く、非常に役立ったと報告を受けています」
 
2020年に行われたコメの緊急支援。「フードバンクかながわ」などに届けられた(写真提供/フードバンクかながわ)

共同購入のその先へ

緊急支援を実施したものの、コロナ禍は簡単には収束が見込めなかった。事業剰余による一時的な支援だけでなく継続した支援が必要と判断、20年7月、生活クラブ連合会と同共済連は連名で全国の組合員に呼びかけ「新型コロナ感染拡大にともなう生活困窮者への支援カンパ」を募ることとした。生活クラブ神奈川は、地域での独自の活動の関係から別の支援方法を実施するため、今回参加は見送ったが、それ以外の全国の組合員、生産者団体から約2千7百万円に及ぶカンパが寄せられた。

これをどう生かすか、関係団体も含めてていねいな話し合いを重ねた結果、20年度はまず全国52団体に助成した。生活クラブ運動を担う各地の団体による推薦をもとに、審査会を経て、日常的に交流のある子ども食堂やフードバンク、社会的養護下にある若者を支援する団体、生活困窮者支援を行う団体などがその対象となった。

「助成先を決める審査会では、これまでは、学習支援や居場所の提供を行ってきた団体が『食事の提供も必要になった』と訴えるなど、切羽詰まった状況も見られました。今後も、コロナ禍での生活困窮者に対する支援を継続して行っていく計画です」(伊藤さん)

近年、東日本大震災復興支援のカンパをはじめ、豪雨災害や、社会的養護のもとで育った子どもや若者を支える団体をサポートする「若者おうえん基金」へのカンパなど、カンパ活動が続いている。立て続けのよびかけにもかかわらず、これまで以上に多額のカンパが寄せられているという。伊藤さんは、組合員がこの時期、社会の問題に敏感になっていて、災害や困窮などに対し何かできることをしたいと思う気持ちが大きくなっているからではないかと話す。

「困っている人に何かできないかという思いをどこに向けて良いかと考えている時に、生活クラブから『あなたの力を必要としている』というメッセージが届き、うまく活用してもらえたのではないかと感じます。こうしたことができるのが、共同購入でつながる意味、生活クラブの大きな柱なんだなと改めて思います」と伊藤さん。消費行動は投票と同じとよく言われる。不要な添加物を使わない食品を購入することは、それを作る生産者への支持であり、その製品をつくり続け育ててほしいという思いを伝える。生産者とのコミュニケーションであると同時に、過剰な添加物はいらないという社会への意思表示にもなると説明する。

「生活クラブ運動に参加するということは、社会とつながり、社会に対してアクションを示すことでもあります。今後もいろいろなアクションの機会を提案したいし、組合員側からの自発的なアクションも期待しています」
 
コロナ禍、子どもたちの心身にも影響が懸念される。写真はDV対策センターの食品配布時、同時に開催されたアートイベントで

カンパから政策提案へ

生活クラブ連合会 伊藤由理子さん(撮影/永野佳世)
生活クラブで行うカンパ活動は、単に支援団体にお金を提供するだけにはとどまらないと伊藤さんは言う。

例えば18年から行っている「若者おうえん基金」へのカンパ活動は、若者に直接お金を渡すのではなく彼らに伴走する支援団体に助成する。そして、その後専門家を交えたチームがその団体を訪問、活動状況を聞き取る。それにより今の制度の問題点やどこに予算をつけるかなど必要な施策が見えてくるので、それを政策提案にまとめて厚生労働省に提出、実現に向けて働きかける活動も行う。

今回もカンパ活動の一方で、国に対しては持続化給付金の対象を法人格のない団体にも拡大すべきこと、緊急時の食を考えた国内自給力の向上を目指すべきことなどを提案している。
「提案したとはいえすぐに何かが変わることは、今までほとんどありません。政策提案は政府に向けて行いますが、実は社会に向けて発信するという意味があります。それに共感する団体、個人がいて、運動が広がっていくことも重要な目標です」と伊藤さん。だからこそ、助成した団体と地域の生活クラブ組合員が、さらに交流を深めてほしいと言う。人々が地域でつながることで、福祉やまちづくりなどの活動はさらに広がっていくからだ。

今、国や企業では国際社会の共通目標として積極的に「SDGs」(持続可能な開発目標)を掲げる。これについて伊藤さんは「『誰一人取り残さない』という考え方は、これまで生活クラブが目指してきたことと重なります。ならば、この共通の言葉をあえて生活クラブが使い、先行的に実体をつくっていきたい」と22年度から始まる生活クラブ連合会の第7次中期計画の主要テーマのひとつに「ローカルSDGs」を位置づける方向であることの意味を話す。「誰一人取り残さない」という困難な課題をいかに地域の中で実体化するか、生活クラブ運動の継続的な目標だ。
 
撮影/葛谷舞子
文/戸田美智子

★『生活と自治』2021年6月号 「生活クラブ 夢の素描(デッサン)」を転載しました。
【2021年6月30日掲載】

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