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【連載】東日本大震災から10年 Vol.6

【寄稿】経済アナリスト・獨協大学教授 森永卓郎さん
 

震災後10年の歩みを見つめてみれば

東日本大震災は広範囲に及ぶ地震と大きな津波、そして福島第一原発の事故が重なって、戦後最大の災害となった。その衝撃は大きく、そこからの復興は国民共通の強い願いとなった。

震災発生から2カ月後には、内閣総理大臣の諮問機関である「東日本大震災復興構想会議」が、①教訓の伝承②コミュニティ主体③技術革新を伴う復興④自然エネルギーの活用⑤日本経済の再生⑥原発事故被災地の支援⑦国民全体の連帯という復興構想7原則を定めた。

岩手県陸前高田市

被災地と関連の薄い事業に1兆1570億円

この方針の下、復興財源を確保するため、公務員給与の8パーセントカット、復興特別法人税、復興特別所得税が創設された。しかし、復興特別所得税が今後16年も続くのに対し、公務員給与削減と復興特別法人税は、たった2年で打ち切られた。

また、2021年3月1日付の毎日新聞が衝撃的な報道をした。被災地との関連が薄い23事業に2013年に1兆1570億円の予算が復興基金から使われたとして、財務省と復興庁が7省庁に対して返還を求めていたが、そのうち7割、8172億円が返還されていないことが明らかになったのだ。

たとえば、日立製作所、東芝、ソニーのディスプレー部門を統合して誕生した国策企業「ジャパンディスプレイ」の茂原工場(千葉県)の設備にも130億円がつぎ込まれていたが、もちろん返還されていない。官僚たちが、震災という不幸を自分たちの利権のために利用したのは間違いなかろう。

首都機能移転こそ最良の復興支援だが

なかでも一番の問題は、本当に被災地が復興したかという点だ。確かに、道路や鉄道の復旧、住宅の高台移転などの事業は、確実に進んだ。しかし、震災前に202万人だった福島県の人口は震災後減り続け、182万人(2021年3月現在)となっている。10パーセントの減少だ。同じ被災地の宮城県の人口減少が2パーセントにとどまっていることを考えると、やはり原発事故の影響は大きかった。

震災後、当時の民主党政権は「脱原発」を打ち出した。それはいまの自民党政権にも受け継がれたはずなのだが、いつの間にか原発を重要電源と位置づけ、最近では温室効果ガス削減を掲げて、原発再稼働に躍起になっているのが現実だ。
政府が想定する2030年のエネルギーミックスでも、原子力は20~22パーセントとなっている。これは原発の全稼働どころか、寿命が来る原子炉の廃炉を考慮に入れれば、原発の新増設をしなければならない水準だ。脱原発は、見事に忘れ去られてしまったと言ってよいだろう。
 
福島県双葉郡双葉町

福島県双葉郡楢葉町

福島第一原発の事故は、東京電力の責任ということになっているが、もともと原子力発電は国策として進められてきたものであり、最大の責任は国にある。それを前提とすると、いま復興に向けて一番望ましい政策は、首都機能移転だと私は考えている。それはいますぐにでもできる政策だ。

実は日本はすでに法的にも首都機能を移転させることになっている。1990年に国会で首都機能移転の決議がなされ、1992年には国会等の移転に関する法律が成立した。さらに1999年には国会等移転審議会が答申をまとめ、移転先候補地を「栃木・福島地域」と「岐阜・愛知地域」の2 カ所に絞り込んだ。ただ、そこから政治の動きはなぜかピタリと止まったままだ。だから政府が新首都を福島と決断するだけで、移転は進められることになる。

国会等移転審議会が描いた新首都のイメージは、面積が最大8500ヘクタールで、人口は最大56万人としている。福島の人口減少を補って余りある人口増といっていい。

新型コロナの感染拡大は、人口集中が感染リスクを大きくすることを証明した。
それだけではない。30年間で7割の確率で発生するとされている首都直下地震の際にも、経済の中心と政治の中心を分けておくことは、重要なリスクヘッジになる。また、東京に線状降水帯が発生して、荒川が決壊したときのリスクヘッジにもなりうる。実は首都機能移転は一石四鳥の政策になりうるのだ。

震災から10年を経た。もう一度被災直後の気持ちに立ち返って、我々がいま何をすべきかを考え直すことが必要なのではないか。
 
東京スカイツリーより
 

撮影/ 魚本勝之

もりなが・たくろう
経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。1957年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業。日本専売公社、経済企画庁、UFJ総合研究所を経て現職。執筆のほか、テレビやラジオ、講演などでも活躍。著書多数。『年収300万円時代を生き抜く経済学』(光文社)、『なぜ日本だけが成長できないのか』『消費税は下げられる』(角川新書)、近刊に『グローバル資本主義の終わりとガンディーの経済学』(集英社インターナショナル新書) がある。
 

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