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那須塩原で、ゴーダチーズ熟成中


 
栃木県那須塩原市にある新生酪農の牛乳工場内に、新たにチーズ工場が建設された。3月より稼働し、5月に仕込まれたゴーダチーズの熟成がすすんでいる。

新生酪農のチーズ作り

新生酪農栃木牛乳工場内に新設されたチーズ工場

栃木県の北部、那須岳のすそ野が広がる酪農地帯に、生活クラブ連合会の提携生産者、新生酪農の牛乳工場がある。そこに新設されたチーズ工場で、熟成がすすむゴーダチーズが静かに出荷を待っている。10月より、組合員のもとへ届けられる予定の国産のナチュラルチーズだ。

ナチュラルチーズは、ヨーロッパでは製造の歴史が長く、さまざまな種類が作られているが、日本でよく食べられるようになったのは40年ほど前。それまでは、輸入したナチュラルチーズを熱で溶かし、乳化剤を加えて作るプロセスチーズが一般的だった。保存性がよく、日本人の好みに合うように加工されたチーズだ。

冷蔵輸送の技術が発達し、ナチュラルチーズにも関心が高まると、クリームチーズやピザ用チーズ、さらにはカマンベールチーズ、ゴーダチーズなど個性的な味のチーズも食べられるようになった。

新生酪農がナチュラルチーズの製造を始めたのは1990年。パスチャライズド牛乳の生産を始めた2年後だ。千葉県睦沢町にある牛乳工場内にチーズを製造するためのシミュレーション工場が建設された。ナチュラルチーズを作るためには、新鮮で質の良い生乳が必要だ。パスチャライズド牛乳の原料と同じ生乳でのチーズ生産は、近郊の提携酪農家が提供する生乳の品質を証明することになる。来日した本場フランスのチーズ製造技術者の指導を受ける機会もあり、チーズの文化に触れるなどして技術を磨いた。

新生酪農のチーズ製造は、ナチュラルチーズ作りの文化がそれほど定着してこなかった国内でのチーズ作りへの挑戦となった。ゴーダタイプの「房総のかおるチーズ」や、さけるタイプのモッツァレラチーズ「房総のさけるチーズ」などが作られ、長く組合員に愛されている。房総のかおるチーズは、国産ナチュラルチーズ品評会の「ALL JAPANナチュラルチーズコンテスト」で、99年、2001年に連続して、最も優秀なチーズに贈られる農林水産省生産局長賞を受賞し、その品質を認められた。

那須塩原にチーズ工場を

生活クラブの消費材に、人気の「シュレッドチーズ」がある。ゴーダチーズ、モッツァレラチーズ、パルメザンチーズなどをブレンドした、主にピザに使われる溶けるタイプのチーズだ。国産チーズを20%使う。

その原料の一部、ゴーダチーズは、生産を全国酪農業協同組合(全酪連)に委託していた。しかし高齢化や後継者不足のため、乳牛を手放す酪農家が増え、チーズの原料となる生乳が減り、全酪連では安定した生産が難しくなる。ゴーダチーズを生産していた岩手県にある工場も大幅に規模が縮小され、チーズ製造から撤退することになった。

このような状況の中で、新生酪農はこれからも国内の酪農家を支えていくため、全酪連からのチーズ事業の引き継ぎを協議していた。その合意が19年にまとまり、生活クラブの消費材に加え、全酪連のチーズ製品も製造することになった。

しかし、睦沢町にあるチーズ工場はシミュレーション工場であるため、本格的に製造するには規模が小さく、建設から30年がたち老朽化もすすむ。さらに、製造開始当時に比べて提携酪農家が減り、原料の生乳を安定的に確保することが難しくなっていた。

そこで、新生酪農は栃木県那須塩原市にある牛乳工場の敷地内にチーズ工場新設を決めた。生乳を製造するのは、那須箒根酪農だ。以前からの提携生産者、箒根酪農が、20年に近隣の北那須酪農業協同組合と合併した団体で、現在、33軒の酪農家が参加する。北那須酪農も、以前より遺伝子組み換えではないトウモロコシをえさとして使っていた。想(おも)いを同じくする酪農家が集まり、安定した生乳生産を行っている。

栃木工場はチーズ作りに適した気候の那須高原にあり、原料乳を確保できるしっかりとした提携生産者に恵まれている。牛乳を、飲むだけではなく食べる食品として提供する仕組み作りに、本格的に取り組んでいく拠点としての役割を果たすことになる。
「チーズのもと、カードを円盤型に形成する容器は『モールド』といいます」
ゴーダチーズは、オランダの南部の町の名前がつけられた。1個が9.5キログラム前後で、4カ月から5カ月をかけて熟成する。シュレッドチーズの材料にも使われる

これからも試行錯誤

新チーズ工場でチーズ製造にあたるスタッフは4人。全員がほぼ30年間、牛乳工場で働き、チーズ作りは初めてだ。全酪連や千葉工場で研修を受け、この3月よりチーズを仕込んでいる。

「一番難しいのは、牛乳を固める酵素のレンネットを加えた後、チーズのもとになるカードの状況を見極めることです」と、臼井美智夫さん。温度や時間の管理が難しいと言う。原料が生鮮食品であることも、毎回同じように作るのが難しい理由のひとつだ。臼井敬道さんは、「栃木工場は牛乳製造一筋でした。新たなチーズ作りに挑戦して経験を積んでいきたいです」。ゴーダチーズの他に、フレッシュモッツァレラチーズなど、新しいチーズ製造も準備中だ。

一方、国内では酪農家の高齢化や後継者不足などで、良質な原料乳が十分に手に入る状態ではない。また、18年の環太平洋連携協定(TPP11)や、19年の日EU経済連携協定(日EU・EPA)の発効が相次ぎ、輸入チーズの関税撤廃がすすむ状況では、国産チーズの生産が増加すると考えるのは難しい。

「今は、牛乳の消費は減る傾向にありますが、世代が変わり、チーズの消費が増えていますよ」と、執行役員の安田忠さん。昨年まで栃木牛乳工場の工場長を務め、チーズ工場建設にも力を注いだ。酪農への想いは強い。「私たちは、30年以上、パスチャライズド牛乳を製造してきた歴史があり、その原料乳を提供する酪農家との提携関係を築いてきました。良質な生乳の生産はしっかりと維持されています。その生乳を使い作った国産のチーズを組合員に提供し、これからも国内の酪農を盛り上げていきたいと考えています」

熟成期間が長いナチュラルチーズは、その土地によって独特の風味を持つようになる。房総から那須へと生産場所が変わったゴーダチーズの、香りと味わいを楽しめるのはもうすぐだ。
臼井美智夫さん。「ゴーダチーズのような熟成タイプのチーズは結果が出るまでに時間がかかります。不安でもあり、楽しみでもあります」
臼井敬道さん。栃木工場が建設された時から働いている。「チーズ作りという新しい仕事に挑戦します」
新生酪農の執行役員、安田忠さん。「成分無調整の牛乳取り組みの歴史があり、低脂肪牛乳、ノンホモ牛乳、生乳100%のヨーグルトまで組合員といっしょに開発してきました。チーズも同じように新しく作っていきたいと思います」
撮影/魚本勝之
文/本紙・伊澤小枝子

チーズができる牛乳

酪農家が搾った生乳は、集乳車から工場へ移す前にサンプリングをして乳質検査をする

午前11時前、栃木県那須塩原市にある新生酪農の牛乳工場に、タンクローリー車が帰って来た。運ぶのは、提携酪農家が搾った、パスチャライズド牛乳の原料となる生乳だ。

生乳は、風味や酸度、細菌数、抗生物質の有無などの検査を受け、受け入れ可能な乳質であると確認した後、一時ストックするストレージタンクへ送られる。ナチュラルチーズの原料となる生乳は、このあと脂肪分を調整し、72度で15秒間殺菌し、チーズ工場へと移される。

一度に4トンの牛乳を処理できるチーズ製造の専用装置「チーズバット」の中で、まず乳酸菌を混ぜる。乳酸菌は、次に加える酵素のレンネットがうまく働くように、環境を少し酸性に整える。そこにレンネットを加えると牛乳は固まっていき、カードと呼ばれるチーズのもとができる。それを細かく刻み、含まれる水分(ホエイ)を分離する。その後、マット状に堆積したカードを切り分け、お椀(わん)のような形のモールドに入れ圧力をかける。円盤状に成形されたチーズは塩水につけられた後、熟成に入る。

最初に加えた乳酸菌はその後、チーズが熟成する間も働き、うま味や風味を醸し出す。

4トンの牛乳からは400キログラムのゴーダチーズができる。残ったホエイはタンクにストックし、豚のえさに利用される。しかし良質な水溶性のホエイタンパク質が含まれるため、ゆくゆくは製品化が考えられている。

ナチュラルチーズは超高温で殺菌した牛乳からは作ることができない。乳を固める酵素が働かず、カードができないからだ。新生酪農では72度15秒間殺菌のパスチャライズド牛乳でチーズを作る。

パスチャライズド殺菌は、チーズを作る時に酵素の働きを邪魔しないのはもちろん、生乳の良さも失わない。安全のために行う必要最小限の殺菌方法だ。そのため、新生酪農では独自の乳質基準を持ち、生菌数の他に、72度15秒間殺菌後に残る耐熱性菌数の検査も行う。

酪農家は、牛がストレスをかかえずに、健康に暮らせるように牛舎を清潔に保ち、環境を整え、良質な生乳を作るための努力を怠らない。蒸し暑い時期は、牛舎に風を通し、細霧を発生させるなどして過ごしやすくする。「おいしい牛乳は健康な乳牛から」が酪農家たちの合言葉。パスチャライズド牛乳を作るための生乳の生産を続けて30年以上が過ぎる今、提携酪農家にとってそれはもう、当たり前のことだそうだ。

そうして私たちは当たり前のように、その牛乳を飲み食べている。失いたくない幸せだ。
 

 
撮影/魚本勝之
文/本紙・伊澤小枝子
 
『生活と自治』2021年8月号「新連載 ものづくり最前線 いま、生産者は」を転載しました。
 
【2021年8月20日掲載】
 

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