食とエネルギーの地域内自給、循環を。 「未来へつなげる♪エネルギーアクション!」から見えたもの
2021年は、国の第6次エネルギー基本計画が策定される重要な年として、生活クラブ連合会と各地域の生活クラブは「未来へつなげる♪エネルギーアクション!」を実施してきた。生活クラブが目指す脱原発や再生可能エネルギーの推進などへの理解と共感を組合員内外に広げ、国のエネルギー政策への提言を行った。気候危機への認識が高まる中、今後も、より差し迫った行動が求められている。
選択が問われた年
「2030という年は人類にとって後戻りできない分岐点になるといわれています。今年はそこに向けた行動開始の年だったのです」。生活クラブ神奈川の専務理事、半澤彰浩さんはそう強調する。
30年は多くの研究者が「この年までに温室効果ガスを半減しなければ、世界の平均気温の上昇は1.5度以内には抑えられない」と指摘する指標の年だ。国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」もこの年を達成年とする。だとすればこの10年で何ができるのか、21年はそのスタートの年だといえる。
一方で、政府のエネルギー政策の指針となるエネルギー基本計画の改定も予定されていた。「この計画策定に、生活クラブがこの間進めてきたエネルギー政策を反映させ、広く社会に発信していくことが重要です。本来、各地の生活クラブが地域で展開してきた運動ですが、この節目の年には全国的な一斉行動が必要と考えました」と半澤さん。
昨年は「生活クラブ気候危機宣言」も発表しており、その実践に向けたキックオフでもある。こうして今年2月、提起されたのが「未来へつなげる♪エネルギーアクション!」だ。生活クラブ連合会と各地域の生活クラブが連携し、今年1年をかけて展開、半澤さんはその担当理事を務めた。
30年は多くの研究者が「この年までに温室効果ガスを半減しなければ、世界の平均気温の上昇は1.5度以内には抑えられない」と指摘する指標の年だ。国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」もこの年を達成年とする。だとすればこの10年で何ができるのか、21年はそのスタートの年だといえる。
一方で、政府のエネルギー政策の指針となるエネルギー基本計画の改定も予定されていた。「この計画策定に、生活クラブがこの間進めてきたエネルギー政策を反映させ、広く社会に発信していくことが重要です。本来、各地の生活クラブが地域で展開してきた運動ですが、この節目の年には全国的な一斉行動が必要と考えました」と半澤さん。
昨年は「生活クラブ気候危機宣言」も発表しており、その実践に向けたキックオフでもある。こうして今年2月、提起されたのが「未来へつなげる♪エネルギーアクション!」だ。生活クラブ連合会と各地域の生活クラブが連携し、今年1年をかけて展開、半澤さんはその担当理事を務めた。
政治への手応えも
国のエネルギー基本計画に対しては、主に次の3点を提案する署名活動に取り組んだ。
エネルギー基本計画における再生可能エネルギー電力の目標割合を2030年は60%以上、50年は100%とすること。
巨大なリスクを抱える原子力発電は即刻廃止、石炭火力発電は段階的に縮小し30年までに廃止すること。
脱炭素社会に向けて、再生可能エネルギー主力電源化の実現に向けた推進と政策転換を早急に進めること。
同じ趣旨の署名活動を行っていた「あと4年 未来を守れるのは今(AT4NEN)」キャンペーンと合わせて27万4830筆を集め、6月に関係大臣に提出した。合同で行った提出記者会見はテレビや新聞、WEBニュースでも大きく取り上げられ、社会的にも注目を集めた。
半澤さんは「若い世代や他団体と共に活動を進めることで、大きな発信力となった」と言う。また、各地域の生活クラブでは、地方議会に国への意見書提出を求める活動も行われ、43の自治体で可決された。実行委員からは「市民が声を上げることの力を感じた」「自分たちで政治への働きかけができる手応えを得た」などの声が寄せられたという。
残念ながら、7月に発表されたエネルギー基本計画の政府案には、この声が十分に反映されたとはいえない。だが、これに対しても、生活クラブ連合会や各地域の生活クラブがパブリックコメントを提出し、個人からの提出も呼びかけた。半澤さんは「政治への働きかけに戸惑っていた人たちが、この活動を通して暮らしに身近なものだと改めて認識する契機となったことも大きな成果」と語る。
エネルギー基本計画における再生可能エネルギー電力の目標割合を2030年は60%以上、50年は100%とすること。
巨大なリスクを抱える原子力発電は即刻廃止、石炭火力発電は段階的に縮小し30年までに廃止すること。
脱炭素社会に向けて、再生可能エネルギー主力電源化の実現に向けた推進と政策転換を早急に進めること。
同じ趣旨の署名活動を行っていた「あと4年 未来を守れるのは今(AT4NEN)」キャンペーンと合わせて27万4830筆を集め、6月に関係大臣に提出した。合同で行った提出記者会見はテレビや新聞、WEBニュースでも大きく取り上げられ、社会的にも注目を集めた。
半澤さんは「若い世代や他団体と共に活動を進めることで、大きな発信力となった」と言う。また、各地域の生活クラブでは、地方議会に国への意見書提出を求める活動も行われ、43の自治体で可決された。実行委員からは「市民が声を上げることの力を感じた」「自分たちで政治への働きかけができる手応えを得た」などの声が寄せられたという。
残念ながら、7月に発表されたエネルギー基本計画の政府案には、この声が十分に反映されたとはいえない。だが、これに対しても、生活クラブ連合会や各地域の生活クラブがパブリックコメントを提出し、個人からの提出も呼びかけた。半澤さんは「政治への働きかけに戸惑っていた人たちが、この活動を通して暮らしに身近なものだと改めて認識する契機となったことも大きな成果」と語る。
基本のエネルギー政策
「気候危機に関する今回の署名が、生活クラブだけでも約8万筆も集まったのも、これまでの活動のベースがあったから」と半澤さんは話す。
脱原発、エネルギー自給、CO2削減を基本とする「生活クラブ総合エネルギー政策」が策定されたのは2013年だ。1986年のチェルノブイリ原発事故を経て、食材の安全や産地への影響から、原発に依存しない社会への思いは大きくなっていった。何より食と同様に自分たちの暮らしに欠かせないエネルギーを他に依存していていいのかという疑問は根強くある。
2010年には首都圏の四つの生活クラブが、再エネによる電気を共同購入できないかと検討を始めた。その矢先に起こった東京電力福島第一原発事故は、一部の人や地域を危険な環境においたまま成り立つ社会の脆弱(ぜいじゃく)性や不公平さを一層明確にし、この活動を急ぎ展開する契機にもなった。12年には秋田県にかほ市に風車「夢風」を建設し、生活クラブ事業所へ電気を供給。その後、16年の電力小売り自由化を機に、共同出資により設立した電力小売り会社「生活クラブエナジー」を通じて夢風の電気を「生活クラブでんき」として組合員に供給する事業を開始した。
一連の活動の過程で策定されたのがエネルギー政策だ。これを実現するための具体的な行動として、自ら再エネを「つくる」、そのエネルギーを選択し「使う」、エネルギー消費自体を「減らす」という三つの柱を掲げ活動を進めてきた。
21年9月現在、生活クラブがつくった発電所は全国に32カ所、提携する再エネ発電所は29カ所、組合員宅の太陽光発電所が125カ所ある。自給できるエネルギーは増えているが、一方、これを使う人はまだ少なく、家庭用の低圧契約者数は1万6293件と、全国の組合員数の5%にも満たない。
生活クラブ気候危機宣言では、五つの実践の一つに「気候危機を回避するため、再生可能エネルギーの意義を内外に広め、再エネ電源構成の割合が6割に及ぶ『生活クラブでんき』を利用する組合員を増やします」と掲げる。生活クラブエナジーの再エネ割合は20年実績で65.4%だ。「この電気を購入する人が増えれば、それだけ気候危機対策の実行になる」と半澤さんはその重要性を訴える。
気候危機は、さまざまな災害の一方、穀物地帯の砂漠化や害虫の大量発生など、食糧危機にもつながりかねない。「大量生産、大量消費、大量廃棄を当たり前とする今のシステムがこうした事態を招いている。この流れを逆回転させ、暮らしを支える食とエネルギーをいかに身近で調達していくかが重要になる」と半澤さん。
そのためには、地域の人が中心となり地域資源を循環させる電源開発が必要だし、都市ではそうした地域と連携してこれを支えることが必要だ。それは生活クラブがこの間目指してきた地域内自給圏構想でもあり、近年、環境省が掲げる「ローカルSDGs」とも重なる。
待ったなしの気候危機に対して、今後も国にエネルギー政策の転換を要請していくと同時に、どれだけの人が自分の問題として暮らしの選択をしていくかが解決の鍵となる。
脱原発、エネルギー自給、CO2削減を基本とする「生活クラブ総合エネルギー政策」が策定されたのは2013年だ。1986年のチェルノブイリ原発事故を経て、食材の安全や産地への影響から、原発に依存しない社会への思いは大きくなっていった。何より食と同様に自分たちの暮らしに欠かせないエネルギーを他に依存していていいのかという疑問は根強くある。
2010年には首都圏の四つの生活クラブが、再エネによる電気を共同購入できないかと検討を始めた。その矢先に起こった東京電力福島第一原発事故は、一部の人や地域を危険な環境においたまま成り立つ社会の脆弱(ぜいじゃく)性や不公平さを一層明確にし、この活動を急ぎ展開する契機にもなった。12年には秋田県にかほ市に風車「夢風」を建設し、生活クラブ事業所へ電気を供給。その後、16年の電力小売り自由化を機に、共同出資により設立した電力小売り会社「生活クラブエナジー」を通じて夢風の電気を「生活クラブでんき」として組合員に供給する事業を開始した。
一連の活動の過程で策定されたのがエネルギー政策だ。これを実現するための具体的な行動として、自ら再エネを「つくる」、そのエネルギーを選択し「使う」、エネルギー消費自体を「減らす」という三つの柱を掲げ活動を進めてきた。
21年9月現在、生活クラブがつくった発電所は全国に32カ所、提携する再エネ発電所は29カ所、組合員宅の太陽光発電所が125カ所ある。自給できるエネルギーは増えているが、一方、これを使う人はまだ少なく、家庭用の低圧契約者数は1万6293件と、全国の組合員数の5%にも満たない。
生活クラブ気候危機宣言では、五つの実践の一つに「気候危機を回避するため、再生可能エネルギーの意義を内外に広め、再エネ電源構成の割合が6割に及ぶ『生活クラブでんき』を利用する組合員を増やします」と掲げる。生活クラブエナジーの再エネ割合は20年実績で65.4%だ。「この電気を購入する人が増えれば、それだけ気候危機対策の実行になる」と半澤さんはその重要性を訴える。
気候危機は、さまざまな災害の一方、穀物地帯の砂漠化や害虫の大量発生など、食糧危機にもつながりかねない。「大量生産、大量消費、大量廃棄を当たり前とする今のシステムがこうした事態を招いている。この流れを逆回転させ、暮らしを支える食とエネルギーをいかに身近で調達していくかが重要になる」と半澤さん。
そのためには、地域の人が中心となり地域資源を循環させる電源開発が必要だし、都市ではそうした地域と連携してこれを支えることが必要だ。それは生活クラブがこの間目指してきた地域内自給圏構想でもあり、近年、環境省が掲げる「ローカルSDGs」とも重なる。
待ったなしの気候危機に対して、今後も国にエネルギー政策の転換を要請していくと同時に、どれだけの人が自分の問題として暮らしの選択をしていくかが解決の鍵となる。
農産物などで50年もの提携関係のある庄内地域に設立された「庄内・遊佐太陽光発電所」。生活クラブグループ各団体と提携生産者などで共同設立した「株式会社 庄内自然エネルギー発電」が事業主体。地域参加型で『エネルギーとお金の地域循環』を実現し、「持続可能な地域づくり」を目指す
文/本紙・牛島敏行
★『生活と自治』2021年12月号 「生活クラブ 夢の素描(デッサン)」を転載しました。
【2021年12月30日掲載】