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[本の花束2022年1月] 母と子が、ひとりの人間同士として出逢う絵本

良質な絵本を多く翻訳してきた内田也哉子さん。
今回は、ベルギーの絵本作家、エレーヌ・デルフォルジュの『ママン 世界中の母のきもち』を濃密な言葉で訳されています。
母と子の多様な形から見えてくるものは? 自らも3人の子の母である内田さんに、お話を聞きました。

 
まずは、この絵本との出逢いについてお話しいただけますか。

絵本との出逢いは、言葉ではうまくは説明できないのですが、やはり、本の佇まい、存在感ってありますよね。今回は、ベルギーのとてもいい絵本があるので翻訳してみませんか、と送っていただいたものなのですが、表紙の印象はもちろん、手に持ったときの持ちおもりの感触も特別で。素敵な出逢いを直感的に感じて、ぜひやらせてください、とお返事しました。

「持ちおもり」という表現がとても素敵ですね。

どんなにデジタルが普及しても、絵本は手に取って開いた最初のページから最後まで、どうワクワクして胸が高鳴るかということが大切だと思います。この絵本は、絵やデザインがとても美しいというだけではなくて、行間から何か匂い立つようなものがありますよね。私も覚えがありますが、子どもって、少し難解で大人びた絵本でも、例えその時に意味はわからなくてもその匂いは感じとれているもの。
成長して改めて意味がわかればまたさらに深く潜り込めていけるような……。絵本は、子どもから大人まで、ずっと繋がっていけるものなんですよね。
副題に「世界中の母のきもち」とありますが、ひとりの母としてはどう読まれましたか?

女性たちが「お母さん」になったことで感じる喜びや不安、希望など、何かそういう、言葉にならない本質的な部分が、絵とシーンと言葉のハーモニーで表現されていて。何が正しい母子の在り方という答え探しではなく、多種多様な子どもやお母さんの存在そのものが、肯定されている一貫性がありますよね。
その懐の深さがこの作品の魅力だと思うので、出会えたこと、翻訳できたことを嬉しく思います。

子どもに向き合う母たちの在り方も、とても多様ですね。

この絵本は「ママン」、つまりお母さんについての本ではあるのですが、世界の様々な立場のあらゆる環境に生きている女性たちが、ひとりの人間として、同じひとりの人間である自分の子どもという個に出会った。そのことを描いている本なのだと思います。私の母(樹木希林さん)も、優しく柔らかいお母さん像とは全然違う人でしたけど、思春期に入った私がいろいろぶつける思いを、いつも面白がって受けとめてくれました。親子というよりも、人間と人間として出会えていた感じがしましたね。

母は常にユーモア第一で、深刻なときほどユーモアを探すことを忘れない人でした。この本でも、ブロッコリーを子どもに食べさせようとするお母さんと抵抗する子どものむくわれない闘いとか、おかしいですよね。
母子の日常あるあるすぎて(笑)。

私の母も父も、一般的な家族とはほど遠い人たちだったけど、離れて暮らしていようが一緒に暮らしていようが、どんな人も母親から生まれてきているのは確かで。そういう意味では、お母さんの話って、コミュニケーションの根源だと思うし、多くの人と話題を共有できるのではないかなと思います。

「母はこうあるべき」から解放してくれる本でもありますね。

みんな日々現実と向き合って、右にいこうか左にいこうかその都度迷いながら、とにかく息つく暇もなく選択し続けていて。
だからこそ、たまには、句読点を打ち、自分を俯瞰することが必要ですよね。絵本はそういう「一息つく」ための句読点のような、とてもよいツールだと思うんです。この絵本がそんな風に届いたら嬉しいですね。

今日は貴重なお話をありがとうございました。

●カンタン・グレバン/1977年、ベルギー生まれ。ブリュッセルのサン・リュック美術学院でイラストを学ぶ。ボローニャ国際児童書展で何度も入選。邦訳された作品に『ナイチンゲール』『おやゆびひめ』(ともに岩波書店)など。
●エレーヌ・デルフォルジュ/教師・ジャーナリスト・コラムニストとして活動。『ママン』が初の著作。
●うちだややこ/1976年、東京生まれ。エッセイ執筆を中心に翻訳、作詞など幅広い分野で活動。著書に『BROOCH』(リトルモア)、翻訳絵本に『たいせつなこと』(フレーベル館)など。初作『ペーパームービー』(朝日出版社)が2021年11月復刊。

 
インタビュー:岩崎眞美子
取材:2021年9月
書籍撮影:花村英博
『ママン 世界中の母のきもち』
カンタン・グレバン 絵
エレーヌ・デルフォルジュ 作
内田也哉子 訳
パイ インターナショナル (2021年4月)  
30.3cm×21.8cm 68頁 
(小高~大人)
図書の共同購入カタログ『本の花束』2021年12月2回号の記事を転載しました。

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