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甘楽町の、光と水と人の手が作る有機野菜


1986年、群馬県西南部にある甘楽町で有機農業を営む農家が集まり、「甘楽町有機農業研究会」を発足した。都市の消費者と交流を続けながら、長年培ってきた確かな技術を駆使し、求められる野菜作りに挑戦している。

有機農業30年

左から、みぶ菜、わさび菜、新黒水菜小松菜。秋の光を浴びて収穫を待っている

群馬県高崎市から、車で西へ30分ほどで甘楽町だ。平地から山間地へと向かう間に台地が広がる。遠くに妙義山、浅間山、榛名山などの山々を望み、見渡す限り、日の光を存分に浴びる野菜畑だ。

標高は180メートルほど。関東ローム層の火山灰土壌で水はけがいい。「2メートル掘っても石が出なくて作物が作りやすいです。葉物作りには最高の土地ですよ」と甘楽町有機農業研究会の会員で、一昨年まで会長を務めていた新井俊春さん。新井さんの畑には、小松菜(在来種)、わさび菜、みぶ菜、野沢菜などが栽培されていて、虫食いや傷みがなくとてもきれいだ。病害虫が発生しない条件を考え、環境を整えながら、美しい野菜を生産してきた。

新井さんは約30年前より、農薬や化学肥料を一切使わない有機農業を続けている。植物の生育に必要な要素の中で、とりわけ影響力の大きいものが窒素だ。「化学肥料と有機質肥料や堆肥との一番の違いは、野菜が窒素成分をどのような形で吸収するかということですよ」。化学合成肥料には、窒素は主に硫酸アンモニウムや硝酸アンモニウムなどの化合物として配合されている。一方、有機質肥料や堆肥では、窒素成分は主にタンパク質に含まれる。「タンパク質は、微生物によりゆっくり分解され、アミノ酸など水に溶けやすい形に変わり作物に吸収されます。これが有機栽培の野菜のおいしさのもとなのです」
 
右より、甘楽町有機農業研究会の新井俊春さん、新井文江さん、太田広幸さん。新井さんは研究会の会長を20年ほど務め、一昨年、太田さんに引き継いだ

水のはたらき

さらに、「各肥料要素を植物の体内に届ける、という大切な役割を果たすのが水です」と新井さんは言う。「植物が吸収する各肥料要素量は、多くても少なくても野菜の成長に影響します。それを左右するのが与える水の量です。目指した味や姿で収穫を迎えられるよう、施肥量と水やりを工夫してきました」

5月中旬から12月初旬の収穫までは露地で、12月から翌年の5月初旬までは、17棟のハウスで葉物を栽培する。「露地栽培の場合は、特に降雨不足の時以外は自然任せです。収穫間際に雨が降ると、野菜は水を含んで折れやすくなるんです」。一方、ハウスでの栽培は水の管理を完全にコントロールできる。「葉の色や大きさを見ながら水をやり、最後は日持ちを良くするために水をあげない期間をつくります。露地栽培でもハウス栽培でも、できる野菜の味はほとんど変わりません。ハウス内という、風雨に左右されない環境で、持っている技術のすべてをつぎ込み、思い通りに野菜を作る仕事はやりがいがありますよ」
 

 
新黒水菜小松菜。水は葉脈を通り、養分を運ぶ

農村と都会を結ぶ有機農業

甘楽町有機農業研究会は、都市と農村の交流に力を入れる甘楽町が主体となり、有機農業を営んでいた農家を中心に、1986年に発足した。

アジア・太平洋戦争末期、東京都北区の子どもたちが甘楽町小幡に学童疎開をしたことがある。それが縁となり、80年代に北区と甘楽町の交流が始まった。86年には両者が「自然休暇村事業協定」を結び、さらに親交を深めてきた。

当時甘楽町では、何軒かの農家がそれぞれに工夫して有機農業を営んでいた。稲作をしながら、稲わらや麦わらで堆肥を作り野菜栽培に使う農家、養鶏場を持ち、放し飼いの鶏のふんを発酵させて作物栽培に利用する農家、酪農家が作る牛ふん堆肥を使う農家などだ。

自然休暇村事業協定をきっかけに、地元で生産される有機野菜を都会の消費者に利用してもらおうと、町の事業の一つとして発足したのが、甘楽町有機農業研究会だ。事務局は町役場に置かれている。

研究会は、会員同士で栽培技術を磨き合いながら、会発足2年後、消費者に野菜を直接届ける宅配事業、「オーナー便」を始めた。さらに96年、北区から甘楽町への要請を受け、区内の小・中学校の給食の残渣(ざんさ)で作った堆肥のリサイクル事業も始めた。区内64の小・中学校に生ごみ処理機が置かれ、そこでできた堆肥を引き取り再発酵させ、それを使って野菜を栽培し、北区の学校給食に使ったりフリーマーケットなどで販売してもらう。都市と農村で資源を循環させる事業だ。

しかし配送の形態や費用の都合により、この事業は2021年4月で終了した。現在研究会の会長を務める太田広幸さんは、「何度も会議をしてなんとか続けられる方法はないかと話し合いましたが、費用の面で折り合いがつけられず断念しました。でも、北区の方たちとの、農村と都市を結ぶ交流はこれからも続けますよ」

現在、研究会の会員は20人。30代から80代まで、幅広い年齢の農家がすべての農産物を有機栽培で作る。2000年に甘楽町が開設した、東京ドームの約2.5倍の広さがある市民農園「甘楽ふるさと農園」では有機野菜作りの講習をし、町を訪れる人たちに有機野菜の魅力を伝え続けている。
甘楽町小幡の町並み。小幡藩2万石の城下町だった。養蚕が盛んな地域で、養蚕農家が軒を連ね、繭(まゆ)の倉庫もあった
 
甘楽ふるさと農園。各地から有機野菜作りを楽しむ人が訪れる。甘楽町有機農業研究会の、野菜の集荷場でもある

依田さんの下仁田ねぎ

甘楽町有機農業研究会の依田肇さんと美代子さん。研究会発足の時からの会員だ。自家採種をしながら下仁田ねぎを作る。「ネギは信号を出して、食べごろでおいしくなったよ、と教えてくれますよ」
 
研究会設立当初からのメンバー、依田肇さんは下仁田ねぎを栽培する。下仁田ねぎは、ずんぐりとした形で、茎が太く葉が広い。11月ごろから真冬にかけて旬を迎え、加熱すると、とてもやわらかく甘みが出るネギだ。群馬県甘楽町や隣の富岡市、下仁田町など限られた地域で栽培される。群馬県の歴史や産業を読んだ「上毛かるた」には、「ねぎとこんにゃく下仁田名産」という札があるぐらいだ。

依田さんは、下仁田ねぎの種採りをしている。収穫する時に、よい種ができそうな株をそのまま畑に残しておくと、4月半ばにネギ坊主ができる。種を採り10月にまき、翌年春に定植して年末に収穫する。それを30年以上続けている。「ネギはおいしくなりましたよって教えてくれますよ。葉っぱにポツンポツンと水滴が出るの。長年作ってるからわかることなんだけどね。それを味がいいと食べる人がいてくれてうれしいよ」と笑う。

甘楽町有機農業研究会の野菜は、「安心して食べてね、おいしいよ」と、生産者の気持ちも届けてくれるようだ。
 
昨年10月に種まきし、54日目の下仁田ねぎの苗。5月に定植する。
撮影/田嶋雅巳
文/本紙・伊澤小枝子

たぐいまれな野菜作り

「たぐいまれ」という言葉には、「非常に数が少なく、珍しいさま、めったにないことであるさま」という意味がある。

生活クラブ連合会で共同購入する青果物「たぐいまれ野菜」の、新黒水菜小松菜と黒田五寸人参は、とても珍しい野菜のようだ。いずれも昔から日本で栽培されてきた「在来種」といわれる品種。栽培しづらい、流通効率が悪い、などの理由で生産量が少なくなってしまったものだ。

現在生産される野菜の多くは、生育が早く収穫時期が一定し、大きさがそろい袋詰めしやすいものだ。大量生産ができ、流通効率がいい。だが、そうした性質は一代のみ。F1交配雑種と呼ばれ、異なる性質を持った親を掛け合わせて人為的に作った種から育てたものだからだ。できた作物から採った種では同じ野菜が育たないので、農家は毎年種を購入しなくてはならない。

生活クラブは、青果物の生産者やJA全農と協力し、地域で独自性があり、種を採りながら栽培してきた野菜を「たぐいまれ野菜」として取り組んでいる。現在は新黒水菜小松菜と黒田五寸人参の2品種だ。いずれも産地の生産者と直接話し合いながら、生活クラブの基準に沿った農法で栽培される。
甘楽町有機農業研究会の会長、太田広幸さんが作り始めた黒田五寸人参は、長崎県大村市で長い間品種改良が繰り返されていた人参。1950年頃より全国に広まり、現在栽培されている人参の多くがこの品種をもとに作られている。やわらかく、芯が細いので中心まで色が鮮やかな人参だ。傷つきやすいため流通には不向きで、栽培する農家は減少してしまった。

また、一般に栽培されている小松菜は、茎が太く丈夫で、株が大きくなるような品種が多い。主にチンゲン菜を交配して作られたもので、スジが気になったり辛みを感じたりするものもある。同研究会の新井俊春さんは、昔から作られていた新黒水菜小松菜は、やわらかくて味にクセがなく、本当においしいと言う。「作りづらいし、ちょうどよい大きさの収穫のタイミングが三日ぐらいしかなく収量も少ない。おまけに茎が折れやすく、出荷する時の袋詰めにも苦労しますが、ぜひ食べてもらいたいです」

国内で長い間作られている野菜は、食べておいしいだけではなく、作られてきた土地の歴史や、そこにこめられた生産者の想(おも)いを伝えてくれる。その一つ一つをたどる時、日々の食卓は、より彩り豊かなものになる。
撮影/田嶋雅巳
文/本紙・伊澤小枝子
 
『生活と自治』2022年1月号「新連載 ものづくり最前線 いま、生産者は」を転載しました。
 
【2022年1月20日掲載】
 

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