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生協の食材宅配【生活クラブ】
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自信と誇りを胸に、遊佐の米作り


庄内遊YOU米は、生活クラブ連合会が全国の四つの米の主産地で取り組む共同開発米のひとつで、山形県飽海(あくみ)郡遊佐町で生産される。米の生産者が組織する遊佐町共同開発米部会と生活クラブの組合員が、品種や農法、価格などを協議しながら30年以上をかけて作ってきた。

若きリーダーたち

遊佐町共同開発米部会のみなさん。右より、友野重則さん、土田巖さん、佐藤俊輔さん、部会長の今野修さん、遠田一成さん、三浦広和さん、眞嶋稔さん
 
「自分は農家の後継者として米作りを始めました。ほとんど言われるままに作業をしている状態でしたが、生活クラブと出会って初めて農家になれたと思っています」と、今野修さん。遊佐町共同開発米部会で、昨年より部会長を務める。

30年前、庄内遊YOU米の生産地、山形県飽海郡遊佐町で米農家が集まり、当時の遊佐町農協内に「共同開発米部会」を発足させた。部会と生活クラブが直接、品種や農法を話し合いながら作ってきた米が、庄内遊YOU米だ。

農薬を一つ一つ減らし、堆肥や有機質肥料の割合を多くし、新しい品種の栽培に挑戦してきた。2008年には、部員の耕作地の全面積が、山形県の特別栽培米の認定を受けた。減農薬減化学肥料で栽培するなど、一定の条件を満たした米が認証される制度で、部員が使用する農薬成分は慣行栽培基準の半分以下だ。

今野さんは、「今の部会のリーダーたちは、米作りのスタートが特別栽培米だった人たちです。大変ですが、お互いに情報交換をしながら米作りをしています」。一方、高齢化により田んぼを手放す生産者もいる。「農業経営は1軒が頑張っても周りの農地が荒れたら継続できません。特に遊佐町の田んぼでは、鳥海山の山間部から中山間部、平地へと流れる水を使います。米作りは、地域で進めなければ成り立たないのです」と、遊佐町全体で進める、稲作をやめた水田を引き取る活動にも取り組んできた。

食べる人を思いながら


四季折々に美しい姿を見せる鳥海山

庄内遊YOU米は、19年までは「ひとめぼれ」と「どまんなか」という品種のブレンド米だった。だが、どまんなかが山形県の推奨品種から外れ、まとまった種子を確保できなくなり、現在使われている品種は、ひとめぼれと「山形95号」だ。

ひとめぼれも開発されてから長い年数がたち、気候が変化したため、同じ地域で作りづらくなっている。新しい品種はすぐには安定して供給できないため、この間、いもち病などの病気に強い山形95号の栽培実験が続けられてきた。栽培期間中に化学肥料や化学合成農薬を使わない「無農薬実験米」として栽培され、15年度より生活クラブに供給されいてる。現在は「とことん共生米」という名称だ。

佐藤俊輔さんが新規就農して米作りを始めたのは7年前。その頃、庄内遊YOU米は、消費が契約量に届かず余りぎみだったため、無農薬実験米からのスタートだった。小さな子どもがいて食に興味を持ち始め、無農薬で作った米を食べさせたいとも思っていた。「最初は難しかったですけど、今は楽しいです。食べる人を思うようにもなりました」。子どもにも食べさせたいと思いながら作る米を、組合員に届けているのだと言う。

農家になり20年、ひとめぼれを栽培してきた土田巖さんは、一昨年より山形95号の栽培を始めた。無農薬実験米だった山形95号を、庄内遊YOU米と同じ農法に変えての試みだ。20年は、年明けに積雪がなく、6月後半から1カ月間、曇りや雨が続いた。「今までに経験がない天候で不安ばかりでしたが、工夫しながら無事に収穫ができましたよ」と土田さん。まわりの山形95号の無農薬栽培を見ていて、おいしい米ができるに違いない、との一心で挑戦したそうだ。


5月に入ると、秋の実りへの期待を込めて、田植えが始まる。

肥料も自給

現在、化学肥料の原材料のほとんどは外国からの輸入に頼っており、骨粉など有機質肥料の原料も安く輸入されるものがある。自給率がほぼ100%の主食用の米であっても、肥料の原材料の高騰が続いたり、輸入が途絶えた場合、栽培に影響が出ないとも限らない。

部会は、米ぬかやもみ殻の他、生活クラブ連合会の提携生産者である、平田牧場の骨粉や米澤製油のなたね油かすなどを原料として、地元の工場で作られる有機質肥料を使う。「自分たちは、無農薬実験米の栽培をしながら、さまざまな失敗や試行錯誤を繰り返し現在に至っています。国内で得ることのできる原材料で肥料を作り、それを使う技術を持っていますよ」と今野さん。さらに、遊佐の今の気候に合わせて改良を加えている。

友野重則さんは「効き目が早い化学肥料に比べて、有機質肥料は効果が現れてくるのに時間がかかります。施肥後の雨の降り方や気温の変化の影響を受けやすく、生育のコントロールが難しいです」。化学肥料100%で作る米より収量が下がるというリスクも感じている。それでも話し合った農法で契約量を責任をもって作る米を、組合員も責任をもって食べてほしいと言う。

「減農薬栽培は水の環境保全につながります」と眞嶋稔さん。遊佐町の稲作では、遊佐町内だけを流れる川の水を水田に取り込む。鳥海山の伏流水がいたるところで湧き出て川に流れ込んだ水だ。「合成洗剤の強いにおいは苦手です。香料の問題も含めて石けん運動を町内に広げる活動をしています。きれいな水で作った米や野菜はおいしいです」
胴腹滝。鳥海山の山腹のいたる所から湧き出る伏流水は、川となり田んぼへ届く

買い取り価格の値下げ

米の価格変動の要因はさまざまだ。21年産の米の価格は全国的に下落し、9月の業者間取引価格が前年より平均12%下がった。1俵(60キロ)当たり1888円の値下がりだ。新型コロナウイルスの影響が長引き、外食産業の需要が落ち込んで、米の消費も伸びない。さらに20年の作柄が比較的良く、21年は前年の在庫も抱えていたためと報道されている。

一方、庄内遊YOU米は1俵当たり250円の値下げとした。生活クラブの米は独自の栽培基準があり、毎年生産者と協議しながら価格を決めてきた。21年産共同開発米も同じように協議をし、値下げを決めた。生産原価に変わりはないが、市販の米の値下がりによる共同開発米の利用への影響を考慮した結果だ。

親の農業を引き継いで20年が過ぎる三浦広和さんは、作っている主食用米のうちの3分の2が庄内遊YOU米だ。「米の値下がりは、農家にとっては収入が減ることです。前年より良い米を、という気持ちで作るので残念という思いもあります。ただ、価格の下がり幅が一般の米に比べて少なく済みました。それは、望まれる米を作ろうと努力し、生活クラブとの話し合いのもとに価格が決められてきたからだと思います」。この歴史はこれからも大事にしたいと言う。

「コロナ禍が続き、組合員と直接話ができる交流会が開かれなくて、ボクらの想(おも)いは届いているのかな、という不安感があります」とは遠田一成さん。近年はよりシンプルな味が好まれ、単一の品種が喜ばれるが、ブレンドも含めて、いろいろな米の食べ方を提案したいと言う。

現在、作り手も食べ手も中心は子育て世代に移りつつある。遠田さんは「自分が交流会に参加し始めた10年前、組合員から『後継者を考えた場合、生産者の10年後、20年後は大丈夫なのか』と問われましたが、今の部会の姿を見てほしいです」と胸を張る。そして、食べる側の10年後、20年後はどうか、と問う。
今野さんはかつて、組合員から「自分たちが欲しい食料を作ってもらうには、産地と理解してくれる生産者がいなければできません。私たちは食べることで産地を作っています」と言われた。その言葉は今でも米作りの原動力だと言う。「これからも話し合いながら米を作っていくことに変わりはありません」
 
遊佐町共同開発米部会の部会長、今野修さん。「農家を続ける支えになるのは、同じ志を持った仲間と安定して食べる組合員の存在です」
撮影/田嶋雅巳
文/本紙・伊澤小枝子

作る、買うだけではなく

山形県遊佐町の遊佐町共同開発米部会が、果敢に減農薬減化学肥料栽培に挑戦できる原動力は、生活クラブの組合員の食べる力はもちろんだが、自然災害にあった時や、新しい農法を開発する際に使われる共同開発米基金だ。

1993年夏、日本全国が記録的な冷夏に見舞われた。米の作柄は「著しく不良」という評価で、タイや中国から緊急輸入する事態となり、「平成の大凶作」として語り継がれている。

遊佐町も同じような作柄だったが、生活クラブとの契約量を守るために、生産者は米の供給を続けた。足りない分を補うのは、自家消費米である「飯米」。それを可能な限り提供する「一俵供出運動」を展開した。当時の組合員は、こうして手元に届いた国産の米を、班の中で分け合いながら食べることができた。

この凶作による米不足を契機に、翌年、生活クラブと部会は、共同して基金を積み立てる共同開発米基金を創設した。自然災害発生時などに使われ、これまで、95年の高温障害による品質低下、2004年には台風15号の影響による塩害などで発動された。「さらに減農薬栽培や、減反田で野菜を露地栽培するなど、収入の減少が予想される時は、基金の存在は大きな支えとなっています」と、部会長の今野修さん。他の制度にはない保障があり、自分たち生産者に寄り添った制度内容だと言う。

1993年と同じように、米の収穫量が生活クラブとの契約量に届かない年があった。台風の影響があった2011年だ。その時も一俵供出運動を行い、供給を続けた。この年の3月には東日本大震災が発生し、原発事故が起きている。北関東や東北地方を中心に農産物の放射能汚染の影響を受け、風評被害も大きかった。栃木県では、生活クラブの提携生産者、JAなすのの黒磯米(現・那須山麓米)がその影響を受けた。出荷が滞っていることを知った部会のメンバーは、栃木県の稲作農家を応援しようと、黒磯米を購入することにした。一俵供出運動で飯米を提供した分を、黒磯米で補ったことになる。

今野さんも黒磯米を購入して家族で食べた一人だ。「稲作農家が飯米を買うなんて、普通では考えられません。それを自分たちが抵抗なくできたのは、生活クラブの組合員と話し合いながら米を作ってきた歴史があり、同じ米生産者として違和感がなかったからではないかと思います」。それは長い提携の中から生まれた信頼関係によるものだと言う。

遊佐町で、さまざまな活動に挑戦する米生産者の姿は、その米を食べる組合員をも勇気づけてきた。


撮影/田嶋雅巳 
文/本紙・伊澤小枝子

 『生活と自治』2022年2月号「新連載 ものづくり最前線 いま、生産者は」を転載しました。
 
【2022年2月20日掲載】
 

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