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[本の花束2022年3月]ガラパゴスは進化の袋小路ではなく進化の最前線

ダーウィンが英国の軍艦、ビーグル号に乗ってガラパゴスに到着したのは1835年、日本では江戸時代のことでした。
そのルートをたどってガラパゴス諸島の船旅に出た福岡伸一さん。進化論で説かれた突然変異と自然淘汰とは少し異なる再発見、再認識を伺いました。

生物学者 福岡伸一さん
●ようやく実現したダーウィンの足跡をたどる旅でしたね。

私は虫が大好きな昆虫少年で、同時に読書少年でした。航海記や冒険記を読んで空想の旅をしたわけです。なかでもダーウィンの『ビーグル号航海記』は愛読書で、実際の旅としての再体験は少年時代からの願いでした。

進化論が育まれた現場として、ガラパゴス諸島を私自身の目で見て確かめたいという思いもありました。ダーウィンが打ち立てた進化論は、マルクスの資本論と並んで19~21世紀を貫く大きな思想、一つのパラダイムともいえるセオリーですが、200年近く経ち、生物を見る視点として改訂や修正が必要になっているとも思うんです。
 
●島の動物たちはずいぶん人なつこいようですね。ガラパゴスのような場所なら、生物は遊びたくなるのでしょうか?

そこが今回いちばん強く印象づけられ、再発見、再認識したことです。生命自体は自由に世界と切り結べるはずで、生物は本来、自由だし、遊ぶものなんです。けれども環境のなかで長い時間を経て様々な種が誕生してくると、せめぎ合ったり、喰う喰われる関係ができます。縄張りを持ったり、天敵を恐れたり、せめぎ合いのなかで生存するしかなくなるわけです。

ガラパゴスのような新天地で自分たちの生活圏を徐々に広げていこうとしたときは、基本的には天敵もいません。そこでは、生物は‟本来の自然”、私は本のなかで‟ピュシス”という言葉を使っていますけれども、ピュシス的に行動できるのではないか。闘争ではなく友好、警戒ではなく好奇心、争いではなく共存というふうな、生物のよい面が強調された生活ができる。ガラパゴスはそういう場所だと感じました。

●本のなかの‟利他性”という言葉が気になりました。余裕があれば総取りせずに他に譲るのだと。

私は生物をそう捉えるべきだと考えています。他の生物のいのちを食べ物としていただいて、自分の生命のなかに取り込み、またそこから他者に何かを手渡しています。植物ならあり余るほど光合成をして、葉っぱや木の実や穀物をつくる。太陽の光を受け止めて過剰に生産し、惜しげもなく他者にあげるわけです。

例外はヒトです。過剰なものを得れば、全部自分のものにする。利己的に行動するようになりました。地球環境は本来、物質もエネルギーも情報もすべてフロー、流れとしてあって、常に誰かに手渡され続けながら、ぐるぐる回って循環しています。

でもヒトはフローをストックに変えて、自分のものとして貯めはじめた。地球環境にとって、ヒトは最凶最悪の外来種でしょう。ヒトの特殊性を考えざるを得ないし、生物が本来持っている利他性を他から学ばなければいけないと思いますね。

●なぜヒトだけが、利己的に振る舞うようになったのでしょう。

『生命海流GALAPAGOS』に通奏低音として書いた、ピュシスとロゴスの問題です。人間だけがロゴス的な生物、つまり言葉を生み出して世界を整理したり、概念化したりできるようになり、ピュシスの掟から自由になれました。ピュシスの掟では、まず種の保存があり、個体のいのちはそのためのツールです。けれどもそうではなくて、個の生命の自由度、あるいは個の生命自体に価値がある。だから自由に生きていいし、子孫を残さなくてもいい。そうしたことをロゴスという言葉を持って、相互に約束できた唯一の生物がヒトです。ヒトという生物を自由にしたことが、ロゴスのもたらした素晴らしい点です。

ただ、ヒトはロゴスを持って利己的に活動するようになりました。考えたいのはピュシス本来の自然の生命であるにもかかわらず、ロゴス的に生きるようになってしまった生物としての人間のあり方です。ロゴスを尊重しつつ、いかに生命本来のあり方、自然というものを回復していくか。それはロゴスの力によってしかできないので、私はこれからも書き続けていこうと思っているのです。

●『生命海流 GALAPAGOS』には続編があるそうですね、刊行を楽しみにしています。
インタビュー:新田穂高
著者撮影:阿部雄介
取材:2021年12月

ふくおかしんいち/1959年、東京生まれ。京都大学卒業。青山学院大学教授、米国ロックフェラー大学客員教授。『生物と無生物のあいだ』で2007年サントリー学芸賞受賞。著者に『動的平衡』『ナチュラリスト』、訳書に『ドリトル先生航海記』など多数。
書籍撮影:花村英博

『生命海流GALAPAGOS』
福岡伸一 著 朝日出版社(2021年6月)
21cm×14.8cm 253頁
(高校~大人)
図書の共同購入カタログ『本の花束』2022年3月2回号の記事を転載しました。

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