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安全性を支える放射能検査 「わかって食べる」ための情報公開

生活クラブ連合会では、2011年に東京電力福島第一原子力発電所の事故が発生した後、検査体制を整え、以後食品の放射能汚染状況の検査を続けている。11年9月からは自前の測定器を購入し、その後も随時、検査体制を強化してきた。22年1月現在、13万9千件以上の検査を実施し、結果は連合会のWEBサイトで公開している。原発事故から11年が過ぎ、放射能検査の意味をあらためて考える。

噴出した議論

「牛乳を飲んでも大丈夫ですか」「産地を指定して野菜の注文をしたい」。2011年3月の東京電力福島第一原発事故直後から、食品の放射能汚染に対し組合員からは多くの不安の声があがった。

1986年、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故の際、生活クラブ連合会は放射性セシウムの自主基準の数値を国の基準の10分の1である37ベクレル/キログラムと設定し、それを超えた消費材の供給を停止する措置をとった。影響の及ぶ対象品目を限定し、年間約60検体の検査を外部機関である「放射能汚染食品測定室」に委託して実施した対応だった。だが、福島第一原発の事故は国内で発生したもので、対策の前提がまったく違った。原料産地や対象品目は広範囲に及び、体制が整わない中、すべての食品を測定することは物理的に不可能だ。全品供給停止することは影響の及ぶ範囲を考えれば現実的ではなく、産地別の対応であっても測定ができない以上、自主基準の遵守(じゅんしゅ)とはいえない。当面は、国が新たに設定した基準、500ベクレル/キログラムに準じ、出荷の際の測定結果に基づいて供給を続けざるを得なかった。

組合員からは「これまでの自主基準で管理すべき」という意見が相次ぎ、生活クラブ連合理事会では議論が続いた。当時責任者として対策を担った連合会品質管理部の槌田博さんは、不安に思う組合員の気持ちは十分理解できることだったとしつつ、「被害者である生産者を切り捨てることでは解決しない。放射能対策や除染に共に取り組んでいく必要があった」と、この時の苦渋の決断を振り返る。

放射能検査のあゆみ

生活クラブでは、国の暫定基準に基づく運用を行いながらも、放射能汚染の状況を把握し続け、新たな自主基準作りにむけて動き始めた。事故同年の9月には、自前の放射能測定器(NaIシンチレーションカウンター)を2台導入し、毎週全品目検査を行った。「海外の事故は文献などで把握できるが、日本の土壌で日本の作物がどのように影響を受けるかは、測ってみないとわからず、順番に検査し続けた」と槌田さんは言う。

翌年4月には、その間の2万件近い検査実績を基に、新自主基準の暫定運用を開始し、各地域の生活クラブ会員単協や生産者との討議を経て、8月から正式運用を開始した。
新自主基準設定で最も留意したのは次の3点。
●組合員と生産者が共に納得できるものであること。
●基準値を超えて供給を停止した場合でも、きちんと生産者に費用を補償すること。
●単に“放射能の検査数値さえ低ければよい”という一面的な考え方に陥らないように、消費材の総合的な価値を広めることに留意すること。

12年4月に改定された国の基準は一般食品で100ベクレル/キログラムだったが、生活クラブの自主基準はその半分だ。槌田さんはその根拠について「国は飲食などの内部被ばくのみを基準とするが、体外からの放射線による外部被ばくの影響も考慮し、国の半分の値を目安とした」と語る。

自主基準の設定にあたって生産者からは、「厳しい基準を設けることで、組合員の安心感は強いものになる」と賛同の声がある一方、「放射能の影響、検査はいつまで続くのか」「自主基準を超えた場合はどうなるのか」という不安の声もあった。また、同時期に「放射性物質ゼロ」を目標に掲げる大手スーパーもあった。放射性物質が自然界に存在する以上、ゼロをうたうことはありえない。不毛な低設定競争に陥ることを危惧する意見もあった。
 
高精度な検査が可能なゲルマニウム半導体検出器
検体を細かく切って測定容器いっぱいに入れ計測する
 

測定を続ける意味

自主基準を超えて供給停止になっても、国の基準以下であれば国や東京電力の公的な補償制度の対象にはならない。生産者の損害が大きくなる恐れもあり、生活クラブでは、供給停止になった消費材の損失補償をする独自のしくみを検討、13年6月に「放射能汚染に立ち向かう生産者を支援する基金(生産者支援基金)」を設立した。基金は、組合員と生産者のカンパ、および単協の拠出金で造成され、震災復興支援カンパ2千万円とあわせて約7千万円が積み立てられた。

検査を続ける中、微量元素を多く吸収しやすいレンコンや生シイタケでは、自主基準を超えることもあった。供給停止となった生産者へは、支援基金から補償が行われた。だが、補償さえあればいいわけではなく、供給できない生産者の苦悩は大きかった。基金は、1日でも早く放射能の影響がなくなるよう、除染対策を進める生産者への支援金としても使われている。

その後も生活クラブでは、より精度の高い検査ができるゲルマニウム半導体検出器も導入し、6台の測定器で検査の質と量を拡充していった。そのうえで16年には、基準値をさらに2分の1以下に引き下げる自主基準の改定を行った。原発事故後11年を経過した現在も年間約8千件の放射能検査を続けている。

事故直後より放射能汚染は低減しており、年々多くの人の関心は薄れているが、自主基準以下とはいえ一定数の検出事例は続いている。

「たとえ不検出が続いたとしても、放射能測定機は常に動かしていないと、いざというときに役に立たない。再稼働する原発が増えれば、再び事故が起きる可能性も増えていく」と槌田さん。「何にどの程度検出されているのか、組合員にも生産者にも情報提供を続ける必要がある。結果をしっかりと見て、エネルギーの問題を考えてほしい」と語る。万が一、何かが起こっても「わかって食べる」ことが解決への第一歩となる。原発や放射性廃棄物の問題がある限り、放射能検査の必要性は続く。
 
国と生活クラブの放射能基準値
(生活クラブ連合会「自主基準書」(2021年度版)12ページより)
 

文/本紙・牛島敏行
★『生活と自治』2022年3月号 「生活クラブ 夢の素描(デッサン)」を転載しました。
 
【2022年3月30日掲載】
 

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