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生協の食材宅配【生活クラブ】
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時を超えて伝えられる 本場のパスタ


麦本来の持つ香りと甘みや、弾力のある独特の食感。パスタは、生活クラブ連合会が扱う消費材の中でも、他にはない味わいを持つ、人気の消費材だ。提携生産者のニューオークボは、デュラム小麦を100%使い、約90年も変わらない製法でスパゲティやマカロニを作る傍ら、国産原料のパスタ作りにも挑戦してきた。国産のデュラム小麦との出会いもあり、2022年からは、新たなパスタの供給が始まっている。

パスタとの出会い

「ニューオークボ」の前身は、1933年(昭和8年)創業の「大久保マカロニ」だ。創業者の大久保仙七さんは、国内でパスタがあまり知られていなかった時代に初めてスパゲティを食べた時、あまりのおいしさに感動する。ヨーロッパでパスタを食べ歩きし、その経験をもとに、千葉県柏市で、日本で初めてのパスタ製造会社をつくった。

原料はデュラム小麦。日本では気候が合わず栽培できないため、米国やカナダからの輸入品だった。練る工程に時間をかけ、成形してからは自然乾燥に近い低温乾燥をする。イタリアで古くから行われている製法だ。

生活クラブ生協が大久保マカロニと提携したのは1977年。当時、デュラム小麦は輸入量も少なく高価だったため、市場では、強力粉を加えた原料で作ったパスタが安価で売られていた。生活クラブが日本生協連を通して取り組んでいたスパゲティも、原料は50%ずつブレンドしたものだった。

独自にパスタ類の生産者を探していた時に、取引があった製粉会社を介して出会ったのが大久保マカロニ。大久保マカロニは、デュラム小麦100%の原料を使い、低温乾燥することなどを知り、スパゲティとマカロニの取り組みを始めた。

引き継ぐ味

その後、安い輸入パスタが市場に出回り大半を占めるようになると、原料や製法を守ろうとした大久保マカロニは経営が立ち行かなくなり、82年に工場を閉鎖する事態となった。しかし生活クラブや、パスタ料理専門店から製造の再開を求められ、「ニューオークボ」と社名を改め、ほそぼそとスパゲティを作り始める。一方で、イタリア産のパスタを輸入販売する「オオクボ・マカロニ」も別に設立される。当初、ニューオークボで生産できる量は少なかったため、生活クラブでは一部の地域でこれを扱い、他はオオクボ・マカロニを通して輸入スパゲティを供給することとなった。

だがその矢先、86年にチョルノービリ(チェルノブイリ)原発事故が起きる。輸入スパゲティからは、国が設定した基準には満たないが、生活クラブの基準を超えるセシウム134と137が検出され、供給停止となった。

この危機を打開するためニューオークボは、パスタの製造設備の増設を決意し、急ぎ生活クラブ全体に供給できる態勢を整えた。カナダなど放射能の影響のない国の小麦を使ってパスタを生産することで安全対策についても合意し、87年、ニューオークボ製造のスパゲティの供給がようやく本格的に始まる。

こうして約90年前の、創業者の「本場イタリアの、本物の味のパスタを作りたい」という思いが込められたパスタが、今も私たちの手元に届いている。

90年続く製法で

左より、営業部統括部長の篠原眞樹さん、生産管理部部長の髙橋圭夫さん、営業部主任の中島祐典(よしのり)さん。「約90年続くパスタの味を守っています」
 
黄色くざらざらしたデュラム小麦のセモリナ粉を手のひらにのせ、「これが私たちのパスタの原料ですよ」とニューオークボの生産管理部部長の髙橋圭夫(いさお)さん。柏市増尾にある工場の工場長も務める。

デュラム小麦はタンパク質含有量がとても多くて硬い。その中心部を粗びきにした粉がセモリナ粉だ。麦はカナダから輸入する。「収穫前に使う農薬の残留を抑えるために、なるべく芯の部分をひいてもらいます。粒子の大きさも指定していますよ」。製粉業者に製粉の条件を指定するメーカーは、他にはないそうだ。

セモリナ粉からパスタを作る方法も独特だ。デュラム小麦のセモリナ粉と水を混合した後、時間をかけて練る工程に入る。大久保マカロニの創業時より変わらず行ってきた作業だ。「実は3年前まで大切に使っていた機械が故障して使えなくなり、一時はもう同じようなパスタを作ることはできないのではないかとあきらめかけました」。しかし独自に設計をして今の技術を駆使し、以前の練り機と同じような生地を作る機械を完成させた。
十分に練られた生地は、プレス機で圧力をかけて押し出される。パスタは太さや断面の形によって、スパゲティ、リングイネ、フィットチーネなど、さまざまな種類がある。その形のパスタにするのが、プレス機の先に取り付けられているブロンズ製の「ダイス」という金型だ。ダイスには、生地が通る穴が開いていて、その穴の形状によってパスタの形が変わる。ブロンズ製のダイスから押し出された生地の表面はざらざらとしている。

効率よく大量生産するメーカーでは、生地がダイスを通りやすくするため、テフロン加工を施したピースをつける。出てきたパスタの表面はツルツルだ。
「テフロンなどない時代は、イタリアをはじめどこでも、パスタはざらざらとしていたと思いますよ」と髙橋さん。ソースがよくからむそうだ。

ダイスから出てきた麺はさおにかけられる。従業員は、麺に風を当ててさばきながら匂いや色つやを確認し、硬さをみる。必要があれば、最初に加える水の量や練りを調整する。

乾燥は、乾燥室の空気を入れ替えながら、パスタの種類により48時間から72時間をかけて行う。オートメーションの工場では、高温で短時間に乾燥させるが、熱によるダメージで小麦の風味が損なわれるため、低温で時間をかけるのがニューオークボの特徴だ。

麦の香りが活(い)きた、独特の弾力性を感じるパスタは、こうして人の五感をフルに使って作られている。
 
1.試験機用のダイス。穴の形により、パスタの形状が変わる  2.パスタの生地は、ブロンズ製のダイスを通して押し出される  3.練った生地をロール状に巻いてプレス機にかける  4.デュラム小麦のセモリナ粉

国産原料に挑戦


兵庫県加古川市八幡町で、日本で初めて栽培されたデュラム小麦「セトデュール」

ニューオークボはカナダ産のデュラム小麦でパスタを作るが、国産の麦を原料に使うパスタの開発にも挑戦している。「国産原料を求める消費者の声に応えたいと作っています」と、営業部統括部長の篠原眞樹さん。岩手県産のナンブコムギで作ったこともあったが、タンパク質含有量が少なく、うどんのようになってしまったそうだ。

2015年からは、デュラム小麦と同程度のタンパク質を含む、北海道産の「ゆめちから」を原料に作る「国産小麦スパゲティ」を取り組み始めた。

さらに、国内では栽培が不可能と言われていたデュラム小麦の生産が、兵庫県加古川市で始まったことを知り、20年よりそのセモリナ粉を取り寄せ、パスタの開発に当たり、22年2月に「国産デュラムリングイネ」として生活クラブに供給を始めた。リングイネは断面が楕円(だえん)形で、円形のスパゲティよりものびにくく弾力が保たれるパスタだ。
日本で初めて栽培され、「セトデュール」と名付けられたデュラム小麦は、加古川市の八幡営農組合による契約栽培だ。「まだまだ生産量が少ないですが、国内で生産され、安心して食べることができるセトデュールの栽培が広がることを期待しています」と篠原さん。「さらに、素材の味を活かすための、五感を駆使した製法を、これからも守り続けていきますよ」。ニューオークボが作るパスタは、ますます魅力を増していく。
 
撮影/田嶋雅巳
文/伊澤小枝子

初めての国産デュラム小麦

兵庫県加古川市八幡町にある八幡営農組合の米澤直人さん
 

 
6月初め、瀬戸内海沿岸に位置する兵庫県加古川市の北部、八幡町では、デュラム小麦「セトデュール」が収穫の時季を迎えていた。

デュラム小麦を粗びきにしたセモリナ粉で作るパスタは、独特の弾力のある食感が特徴だ。デュラム小麦は乾燥した高温の地域が生育に適し、主に地中海沿岸やアメリカ大陸などで栽培されている。

日本でも小麦は栽培されるが、高温多湿なうえに梅雨があるため、梅雨の前に刈り取ってしまえるような性質を持つ小麦が主流だ。デュラム小麦は熟成期が遅く赤カビ病に弱い。高温多湿な状態が続くと赤カビ病を発症し、雨に濡れると、実った穂が発芽してしまうこともある。そのため国内で栽培されることはなく、この間ずっと輸入に頼ってきた。

しかし国産デュラム小麦を原料としたパスタ類の要望は根強くある。農研機構西日本農業研究センターと製粉会社のニップンは、温暖で降雨量が少ない瀬戸内地域なら栽培が可能ではないかと、品種改良をすすめ、2011年より試験栽培に入った。

デュラム小麦の試験栽培を始めたのが、加古川市八幡町の農事組合法人「八幡営農組合」だった。八幡営農組合は、農家が離農や規模縮小のため手放したほ場を借り受け、米や小麦、大麦、大豆などを作る会社だ。現在は株式会社となり、さまざまな事業を展開している。
 
デュラム小麦の栽培は10アールから始めた。八幡営農の総務・勤労部課長、米澤直人さんは、「以前から大麦や小麦を作っていたので、麦を栽培するノウハウは持っていました。それを活(い)かせると思ったのですが、デュラム小麦は別の種類の麦であるため、病気への対応や、品質の向上に苦労しました」。5年ほどの試験栽培の間に赤カビ病で全滅したこともあったそうだ。「でも、日本で初めての純国産デュラム小麦栽培を成功させたいと思い、施肥体系や防除体系を見直して、栽培方法を確立しました」

こうして16年、セトデュールが誕生した。「セト」は、栽培される温暖な瀬戸内地域、「デュール」はラテン語で「硬い」を意味し、「デュラム」の語源ともなっている。セトデュールのセモリナ粉100%を使用して作る「加古川パスタ」は、地元JAの直売所やスーパー、百貨店で販売される他、地域のレストランや市内の学校給食にも採用されている。

生活クラブのパスタの提携生産者、ニューオークボは、セトデュールを、断面が平たいロングパスタのリングイネで提供する。クリームソースやジェノベーゼソースなど、味のしっかりしたソースがとてもよく合うそうだ。
 
撮影/田嶋雅巳
文/伊澤小枝子
 『生活と自治』2022年9月号「新連載 ものづくり最前線 いま、生産者は」を転載しました。
 
【2022年9月20日掲載】
 

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