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生協の食材宅配【生活クラブ】
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立野から、野菜を届けて40年

たちのから、やさいをとどけて40年 立野園芸出荷組合
 
生活クラブの野菜の取り組みは、東京、神奈川などそれぞれ地域ごとに地元の生産者と提携し独自に始まった。次第に輸入農産物が増大し国内産地を圧迫し始めたため、2000年、生活クラブ連合会を軸に全国規模での産地との提携を開始する。農薬や化学肥料を減らす栽培方法を話し合い、他にはない生活クラブ独自の栽培基準を作ってきたが、その原点は、地域の畑、生産者とのつながりにある。信頼関係を築いてきた生産者のひとつが、立野(たちの)園芸出荷組合だ。提携を始めてから40年を数える。

変わる気候

立野園芸出荷組合は、千葉県のほぼ中央にある八街(やちまた)市の、立野という集落で農業を営む17軒の農家の集まりだ。

8月初め、関東地方では最高気温が36度前後で雨が降らない日が続いていた。取材当日、八街市では久しぶりに朝に雨が降り気温が下がったものの、時折雷が鳴る不安定な空模様だった。

立野ではちょうどニンジンの種まきの時期。ここで20年以上農業を営んできた下田正裕さんは、「昨日、ニンジンの種まきの予定でしたがやめました。種をまいた後大雨が降ると、畑の表面の土が固まってしまって発芽しにくくなるんです」。幸いに、この日は大雨にはならず、むしろ、それまで半月以上、毎日行っていた散水から解放される、恵みの雨だった。

吉野宏一さんは、長年、トマト、サトイモ、メロンなど多くの品目を栽培してきた。「雨の降り方が以前と変わりましたよ。降る時は集中して降り、大雨となることが多くなりました。子どもの頃は夕方になると、決まって夕立がありましたが、ここのところ、かなり減っています」

暑い一日の終わりに降る夕立は、農作業に一区切りをつけ、疲れをいやすひとときだ。今のような雨の降り方では、そんなリズムもなくなっていくのではと思っている。
雨の様子ばかりではなく、明らかに暑くなっていると、気候全体の変化を感じると言う。「トマトは、葉っぱが茶色に焼けたようになることがあります。作物の生育が早まり、出荷もその分前倒しになっています」
9月、10月は、台風にも悩まされる季節だ。今年は早くも、8月中旬に伊豆半島に上陸し、千葉県を通過した。2019年、千葉県や茨城県は、立て続けに上陸した台風の暴風や豪雨により壊滅的な被害に見舞われた。立野では、サトイモの茎が折れて葉がなくなり、骨組みだけになったビニールハウスもあった。「一晩で景色が変わっていました」と、代表の増田貴之さん。トマトは赤くなり収穫が始まっていたが、それ以降、出荷ができなくなってしまった。

暑さに対しては、地面の温度が上がり過ぎないように、資材を入れたりなど、さまざまな対策をとる。また、メンバーはそれぞれに、年間20種類以上の野菜を作る。保谷智之さんは、ニンジン、ブロッコリー、サトイモ、ゴボウ、チンゲンサイと数え上げる。「その年の気候によって収穫のよしあしが変わりますから、いろいろな野菜を作れるようにしていますよ」
落花生の収穫は9月中旬

自分たちの農業

立野園芸出荷組合がある八街市は、スイカや落花生の生産地として全国的に知られている。1940年代、立野でもスイカの栽培が盛んだった。そこの生産者が集まって、スイカの共同出荷を始めたことが立野園芸出荷組合の設立につながる。

トマトや落花生、麦、サトイモなども作っていたが、1983年、生活クラブ千葉との提携をきっかけに、ニンジン、ネギ、ダイコン、葉物類など少量多品目の生産へと移っていった。生活クラブの栽培基準では、使える農薬は限られ、化学肥料はできる限り使わない。

化学肥料使用を避けるため、長年、自家製堆肥を使い、土づくりに取り組んできた。「堆肥を入れたからといって、すぐに大きくて立派な野菜ができるとは限りません。5年、10年と入れ続けて、やっと化学肥料に頼らないで野菜を育てる土壌ができるのです」と下田さん。

使う農薬を減らすためには、同じ畑に同じ作物を栽培し続ける連作による障害を避け、輪作体系を工夫してきた。6月にメロンを収穫したあと、トマトを植え付けたり、スイカの出荷が終わったあと、その畑にニンジンの種をまくなどだ。

また、下田さんは、「あっぱれ育ちほうれん草」を栽培する。あっぱれ育ち野菜は、栽培期間中に化学肥料や化学合成農薬を使わないで作る、生活クラブ独自の栽培基準だ。10月に種をまいて年明けに収穫して出荷する。「病気や害虫によるリスクがない寒い時期にあえて作るようにしました」。ホウレンソウは冬の寒さにさらされ、甘みを増し、肉厚に育つ。改めてホウレンソウの旬は、寒い時期だと気づかされる。

「これが立野園芸出荷組合の野菜作りであり、これからも続けていけるグループだと思っていますよ」。下田さんの言葉が心強い。
立野園芸出荷組合の代表、増田貴之さん。生活クラブとの提携は1983年。「私は学生でした。仲間と協力して農業を続けています」
下田正裕さん。「まわりの人が作らないピーマンやレタスなど、新しい野菜作りにも挑戦しています」
保谷智之さん。「立野でスイカを作る農家は減り、小玉スイカやメロン栽培に移っています」
福田祐司さん。グループでは一番の新人。落花生を乾燥する時は、掘り上げた株を円筒形に積み上げて「ぼっち」を作る
吉野宏一さん。「生活クラブとの提携では、価格が安定し持続可能な農業ができます。安定した消費を期待していますよ」

立野で80年

現在のメンバーは、立野で代々土地を受け継ぎ、農業を続けてきた農家だ。畑はおよそ1キロメートル四方に集中する。出荷場に野菜を運んだ時は、メンバー同士で情報交換が始まる。生育状況や使っている農薬、新しい品種、今どんな作業をしているか、などだ。農協などに出荷する場合、このように他の農家と話し合う機会は少ない。「私たちにはいろいろな情報が入ってきて、伝わるのが早いです。その後の作業に役立つものもあります」と増田さん。個人の農家とは違い、話し合いながら互いに技術を高め合ってきた。
しかし立野園芸出荷組合にも課題はある。どこの産地でも直面していることだが、メンバーの高齢化と後継者が育たない現状だ。「元気な若い人もいますが、60代後半から70代の私たちの年代は、子どもがいても、将来農業に就くかどうかわからなく不安もあります」。一軒の農家が農業をやめた場合、その土地を他のメンバーでカバーすることは不可能だと言う。「これからは新規就農者の受け入れも含めて、受け継いだ土地を守り、野菜を作っていく方法を考えるのが急務だと思っています」
 

変わらない風景

北総台地にひろがる野菜畑。野菜を生産する農家と、それを食べる消費者が作ってきた風景だ

ゆるやかな起伏のある北総台地にある立野は、東京都心部から約60キロメートルの距離だ。落花生やサトイモなど、季節によってさまざまな野菜が大地をおおう。かつては大都市近郊でも同じような風景が見られていたが、宅地化が進み、大型商業施設が建設され畑地は少なくなった。暮らしのそばで農業を知る機会がどんどん減っている。

時間をかけて土をつくり、農薬や化学肥料に頼らないで作られた野菜は、安心して食べることができる。このような野菜を40年にわたり作り続けてきた立野園芸生産組合は、生産地の変わらない風景をも守っている。
 
撮影/田嶋雅巳
文/本紙・伊澤小枝子

身近にある農業

立野園芸出荷組合の下田正裕さんは、3人の小学生の父親だ。子どもの頃は、1学年に約100人の子どもがいて、その3分の1が農家の子だった。今は子どもが減り、農家も少なくなり、農作業を知る子は当時の半分以下だ。

現在、小学3年生は社会科で農家の仕事の勉強をする。下田さんは、学校へ出向き、子どもたちといっしょに落花生を育てたり、サツマイモの苗を植え付けたりする。社会科見学の授業では、畑に来てもらい、作物や農機具、農作業を見てもらう。「子どもたちのリアクションはおもしろいですよ」。化成肥料と配合肥料のにおいをかいでもらったり、野菜の種を見てもらったりする。「一粒の種が1本のニンジンになり、小さい種から大きなハクサイの株ができることを知ると、子どもたちはとてもびっくりしますよ」

下田さんがこの役割を受け継いで6年になる。「八街市の小学生は、まだ、身近で、農産物が生産される現場を知る環境にあります」。農家の子や家庭菜園を手伝う子は、買ったピーマンはきらいでも、家で作ったピーマンならおいしいと食べるそうだ。

8月初め、福田祐司さんの畑では落花生が黄色い花を咲かせていた。福田さんは農業に就いて2年もたっていないが、メンバーの中でも落花生の生産量が多い農家だ。畑では花がしおれ、花の根元から伸びた子房が土の中に入っていくものもあった。子房の先はゆっくりとふくらみ、さやになる。豆が土の中で育つと知った時はびっくりした。
9月中旬になると、落花生は株ごと抜きとられ、畑の1カ所に集められる。覆いをかぶせて2週間から3週間、そのまま乾かし、脱粒した後出荷するが、福田さんをはじめ、立野園芸出荷組合のメンバーは、掘り上げた落花生で「ぼっち」を作り乾燥する。

落花生の株を、さやを内側にして高さ170から180センチメートル、直径2メートルぐらいの円筒形に積み上げたものがぼっちだ。1カ月ぐらいをかけてゆっくり乾燥した豆はうまみを増す。手間がかかるぼっちを作る農家は少なくなったが、落花生の生産地、八街市付近では晩秋の風物詩だ。

落花生は鮮度が落ちやすく、一般には乾燥して炒(い)った豆が流通している。一方、生産地では、9月になると生落花生が短い旬の時期を迎える。手に入ったらすぐに茹(ゆ)でてみよう。多めの塩を入れて、殻ごと水から茹で、沸騰してから40分から50分ほど。乾燥豆とは全く違う、ほくほくとした食感を楽しむことができる。
 
落花生の花
撮影/田嶋雅巳
文/本紙・伊澤小枝子
 
『生活と自治』2022年10月号「新連載 ものづくり最前線 いま、生産者は」を転載しました。
 
【2022年10月20日掲載】
 

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