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「耕す市民」 食と農の距離を縮める第一歩

消費者が「食べて支える」だけでは食と農の持続的な循環が難しい時代。首都圏にある生活クラブ東京、神奈川、埼玉、千葉は、それぞれ独自の方針に基づき、組合員参加で都市近郊農業を守る事業を進めている。千葉商科大学人間社会学部の准教授で、「日本の食と農の未来『持続可能な食卓』を考える」(光文社新書)の著者でもある小口(おぐち)広太さんは、生活クラブ神奈川が運営する「生活クラブ・みんなの農園」の利用者だ。今年から生活クラブ神奈川の員外理事に就任した。利用者であり研究者でもある立場から、みんなの農園と「耕作する市民」の可能性を語る。

みんなでつくる農園

小口広太さん(中央)。撮影場所は川崎市麻生区内の中山農園。少量多品目を生産し、地域の意思ある生活クラブ組合員が援農活動を行っている。「みんなの農園」の一つ下のステップといえる
 
生活クラブ神奈川がJA横浜と連携して運営する農業体験農園「生活クラブ・みんなの農園」が横浜市泉区に第一農園を開園し、この秋5年目を迎えた。
「名前の通り、みんなで農地を守っていく。それが一番の特徴です」。小口広太さんはそう話す。

「生活クラブ神奈川が地元の農家から農地を借りて園主となり、そこで提携生産者が指導をします。約22アールと都市部としては広い農地を、みんなで耕し、『面』として守っていく点で共同農場に近い場ですね」

他にも一般の体験農園とは異なる特徴があると言う。一つは有機栽培で指導する点。農に関心のある市民は有機栽培を希望する人が多いが、そもそも有機農家が少なく指導できる人がいない。みんなの農園は一貫して有機栽培で指導し、病害虫への対応や栽培の管理方法について、指導者と一緒に利用者みんなで考える。土づくりもしっかり行い、食べきれないほどたくさんの収穫につながっている。

もう一つの大きな特徴は「世話人会」。利用者から世話人を募り、どういう作物を栽培したいか、どんな交流会をしたいかなどを話し合い、利用者が運営も担っている。農園にどの程度積極的に関わるかは、利用者ごとに異なる。そうしたニーズをうまくくみ取っている。さらに「自由度が高い」ことも特徴の一つだ。空いた農地には、意思ある利用者同士がチームを組んで大豆やひまわりを育て、有効活用している。今年からひまわりチームが発足し、育てて収穫したひまわりの種を福島県に送る予定だ。福島のNPO法人「シャローム」が主催する「ひまわりプロジェクト」の一環で、種は加工品の材料となり復興支援に役立てられる。

一般的な体験農園であれば収量や「キレイな」収穫物が重視される。体験料を受け取る農家としては、利用者にできるだけ良いものをたくさん持ち帰ってもらいたいと思うだろう。その点、みんなの農園では、病害虫の被害に遭ったり、収穫などにもまだまだ不安定さは残る。しかし、利用者は収穫物だけではなく、このプロセスを楽しみながら振り返り、何がいけなかったのか、どうしたらうまくいくか自分自身で考える。この体験こそが醍醐味(だいごみ)だと小口さんは言う。「そうした教育的な側面こそ、これからの体験農園の形ではないでしょうか」

地域に根づく

JAとの連携も新たな試みだ。今のところ、トラクターでの耕運などを依頼する程度で、利用者との直接的な交流はないが、都市部で農を身近に感じるためには、JAの役割は大きい。地域での信頼も厚く、みんなの農園が地域に根づいていくためのパートナーにもなり得る。

また、最近始まったのが、近隣の多世代交流スペース「宮ノ前テラス」に野菜を寄付する活動だ。ここで行われるこども食堂やフードパントリーで活用されるようにもなった。農園内のハウスに置いたコンテナに利用者が野菜をお裾分けし有志が運ぶ。世話人会で声が上がり、すぐにできた仕組みだ。

こども食堂やフードパントリーの課題の一つに、提供するものの質をどう高めるかがある。レトルト食品やインスタント食品は緊急的な支援として重要だが、健康面では生鮮野菜の提供が望まれる。地域で作った生鮮野菜を地域で分け合う。小口さんはそれを「食のセーフティーネット」と呼び、SDGsが掲げる「誰一人取り残さない社会」につながる実践だと言う。

「そもそも、生産者、消費者という概念は、高度経済成長期の大量生産、大量消費システムの中で生まれました。今の時代にそぐわない言葉です。生産者も消費者であり、消費者も生産できるという、生産と消費の相互循環にふさわしい言葉が必要です」と小口さん。その存在を「耕す市民」と表現する。農地は、農家のものでも消費者のものでも誰のものでもない共有地、「コモンズ」であり、これを広げ、みんなで耕せる社会をつくることこそ、みんなの農園のビジョンではないかと言う。

都市農業の多様な機能

とはいえ、「耕す市民」の存在はまだまだ小さく、限定的だ。援農ボランティアは時間に余裕がなければ難しく、体験農園の利用は時間に加え、経済的な余裕も必要になる。コロナ禍もあり、スーパーや直売所で近隣農家の農産物を買う人は増えた。だが、都市近郊の農地の維持は、自然環境や風景、生きものを守るという農業の多様な役割を、都市生活者がどこまで理解できるかにかかっている。食べるだけでなく体験してこそ理解できる機能、役割だ。

「みんなの農園は、第2農園をつくってステップアップを図っています。それも重要ですが、その一つ下のステップをつくっても良いかもしれません」と小口さんは言う。都市生活者がもっと気軽に農に触れられるようなメニューを増やす必要があるという指摘だ。

「都市農業は、バブル期には農家が土地を売らないから地価が高騰するなどバッシングを受け、ずっと息苦しさを感じてきました。少量多品目を生産する都市の農家は、都市生活者を招き入れ、一緒に作っていく方が経営として安定するのです」

都市の農地の減少は著しく、もはや農産物を生産するだけでは守れない。「地産地消や市民参加をベースとしつつ、さらに農地を空間として捉え、学ぶ場、遊ぶ場、楽しむ場にしていこうという視点が必要ではないか」。小口さんはそう提案する。子どもが生きものを目にする学びの空間として、高齢者がほんの少し収穫体験をする福祉的な空間として農地を捉え直せば、その可能性は大きく広がる。

では、何から始めればいいだろうか。
小口さんは、まず自分が住む地域にどのような農家がいるか関心を持つことだとアドバイスする。「近くに農地があっても、意外に知らずに通り過ぎてしまっていることが多いのではないでしょうか。農家が作業をしていたら何を作っているのかと声をかけてみる。自分の仕事を説明するのはうれしいものです」。スーパーや直売所で生産者名入りの農産物を購入しても、人と人との付き合いまでにはなかなか至らない。そうした付き合いができる農家との関係性をつくっていくうちに「自分には農作物は作れない」という決めつけを外すことができるのではないかと言う。

無理せず、地域の農業と関われるような食卓を作っていくことがポイントになりそうだ。

「生活クラブ・みんなの農園」概要
●参加対象:生活クラブ神奈川の組合員とその家族●区画:48(1区画当たり約22㎡)●利用期間:1年間●利用料金:4万9500円(税込み)
※指導料・農具・種苗代金等含む
撮影/魚本勝之
文/本紙・元木知子
★『生活と自治』2022年10月号 「生活クラブ 夢の素描(デッサン)」を転載しました。
 
【2022年10月30日掲載】
 

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