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2010年以降、日本の「海」は激変 漁獲量の公的管理強化で、水産資源は回復するのか?

全国漁業協同組合連合会 常務理事 三浦秀樹さんに聞く


日本の漁獲量は1984年をピークに減少を続け、2019年には最盛期の3分の1の水準まで落ち込んでいます。その要因が「沿岸漁業者による自主的な資源管理の緩さ」にあるとして、水産庁主導の「科学的資源管理の徹底」を求める報道もあります。その真相と日本の漁業の概況を全国漁業協同組合連合会(全漁連)常務理事の三浦秀樹さんに聞きました。

企業経営の遠洋漁業とマイワシの漁獲量の減少が主要因

――日本の漁獲量が減少を続けているのは水産資源の枯渇によるもので、その要因が「漁業者による従来の自主的な資源管理の緩さにある」との報道があります。

確かに日本の漁獲量は最盛期だった1988年の1,278万トンから、2019年には420万トンに減少しています。実際に3分の1の水準まで低下したわけです。しかし、その要因を沿岸漁業者による自主規制の緩さがもたらした乱獲にあると決めつけるような報道には、大きな誤解があると申し上げたいと思います。1970年代、世界各国が相次いで200カイリ経済水域を設定しました。以降、操業海域の規制が強化され、国際交渉での漁獲制限などの影響も受け、73年には399万トンだった遠洋漁業の漁獲量は2020年には10分の1以下の30万トンまで減っています。
 

マイワシの漁獲量も大幅に減少しています。1988年には449万トンだったマイワシの水揚げ量は、2005年に2.7万トンになりました。マイワシは「レジームシフト」と呼ばれる魚種交代の影響を強く受けるとされます。北太平洋の水温には数十年周期幅の変動があり、温暖レジームと寒冷レジームが交互に現われ、水温が冷たい寒冷期はマイワシなどの漁獲量が増え、温暖期にはカタクチイワシやスルメイカなどの漁獲量が増える傾向にあると水産庁の資料にもありますが、実際はマイワシが大きく減っただけで、カタクチイワシとスルメイカの漁獲量は比べるほど大きくは増えていません。

一方、沿岸・養殖漁業の漁獲量ですが、1988年から2009年まではゆるやかに減少しています。それが一変したのが2010年。この年に123万トンあった水揚げが2020年には74万トンまで減りました。沿岸漁業の漁獲量の4割を占めるのが定置網漁業(定置網)です。1988年から2009年まで定置網の漁獲量は20年以上も55万トン前後の水準を保ってきましたが、2010年以降は減少傾向が続き、2019年には32万トンに落ちています。

もともと定置網は乱獲とは無縁の「待ち」の漁法で、回遊してきた魚を海中に固定した網でとらえるものです。網に入るのは多く見積もって5割、少なければ1割程度に過ぎません。もちろん回遊する魚が多ければ漁獲量が増える確率は高まりますし、少なければ漁獲も減りますから、定置網は「水産資源のバロメーター」とも呼ばれます。また、沿岸漁業には釣り・刺し網などの漁法もありますが、どれも魚群を一網打尽に漁獲できるものではないのです。ここが大型の底引き網や巻き網との大きな違いであり、沿岸漁業が資源を枯渇させる可能性は低いと自信を持って言える理由です。

つまり、遠洋漁業における漁獲量の減少とマイワシの不漁が続いていた期間、沿岸漁業と養殖漁業は懸命に水揚げを維持しようと健闘してきたともいえるわけです。これまで沿岸漁業者は漁協を中心とする自主的な資源管理を継続しながら、公的な「漁獲量管理」にも取り組み、水産資源の回復を図ってきました。具体的には出漁回数を調整する、漁網の目を大きくする、禁漁時期を決める、漁獲して良い魚のサイズを決めるなどの資源管理を漁業者間での話し合いを重ねながら続けてきたわけです。こうした「共同管理」は先進性が世界的に評価され、イギリスの科学雑誌「ネイチャー」でも紹介されているくらいです。
 

なぜ、サンマ、スルメイカ、サケの漁獲が減ったのか?

――では、沿岸漁業における漁獲量の減少にはどんな理由が考えられるのでしょうか。

1960年代の高度経済成長期以降に沿岸部の開発が進められ、埋め立てや護岸工事などによって藻場や干潟の4割が姿を消してしまいました。魚が卵を産み、稚魚が育っていくためには欠かせない貴重な「海のゆりかご」の喪失です。これでは魚が増えるはずがありませんし、貝類にも深刻な影響が出ていて、特にアサリはひどいことになっています。また、東京湾ではシャコがいなくなっています。かつては江戸前の寿司ネタの定番でしたが、ほとんど見かけなくなってきました。そうした底生生物への影響が出てくれば、それらを餌にしている魚も生息できなくなってしまいます。やはり資源減少につながるといえます。これら諸問題がボディブローのように効き、生物多様性が失われている点に目を向ける必要があると考えます。

気候危機による海水温の上昇がもたらす環境変化の問題もあります。大気中と水中では温度の伝わり方が違うのです。海水温が数度上昇するだけで魚介類には計り知れない影響が出ます。かろうじて2010年までは海の回復力に守られていたのでしょう。そんな海の回復力が限界を迎えているのではないかという強い危機感を持っています。サンマやスルメイカ、サケの漁獲量の減少に大きく影響しているのも海水温の上昇とされています。

日本のサンマの漁獲量は1980年代から20年間は20万トンから25万トンありました。それが2012年から減少し、2020年には3万トンまで減り、2021年は2万トンしか水揚げされていません。かつて資源調査ではサンマの潜在的な資源量は400万トンとされ、実際の漁獲量が25万トンだから無尽蔵とまでいわれたくらいです。にもかかわらずサンマが激減したのは、黒潮の流れの変化で暖水塊が発生し、そこを回避しないと北海道の東部沖まで下りて来られなくなったなどの要因が考えられます。これまでサンマを獲ってこなかった大型外国漁船の公海操業の影響も大きいです。そこで2015年から北太平洋漁業委員会による国際漁業管理が開始され、2021年には各国の漁獲量を2018年の漁獲実績から40パーセント削減する合意ができました。しかし、どの国も割当量を下回る漁獲しかないのが実状です。

スルメイカもサンマ同様、1980年代から20年間は20万トンから30万トンと安定した漁獲があったのですが、2011年以降は減少傾向をたどり2020年には5万トンを下回る水準となりました。日本海の海水温の上昇で産卵可能海域が縮小し、回遊経路が中国寄りに変化したなどの原因が考えられています。サケもサンマやスルメイカの水揚げが比較的安定していた20年間は15万トンから25万トンの漁獲がありました。しかし、2009年の21万トンから減少を続け、2020年には6万トンに減ってしまっています。北太平洋や北極海では、海水温の上昇により、サケの夏季分布可能域が北にシフトし、その面積が1割も縮小したとされますから、やはり資源減少の主要因は海水温の上昇と考えざるをえません。逆に北海道では水揚げがなかったブリが豊漁になり、東北でも南方系のシイラやフグが漁獲されるといった現象が起こっています。

むろん、漁業者も私たち全国漁業協同組合連合会(JF全漁連)のグループである各地のJF(漁協)も資源管理の必要性は十分認識していますし、一層の努力を続けていきますが、私たち漁業関係者の力だけでは解決できない問題に直面していることを、ぜひ多くの方にわかってもらいたいと思います。
 

「科学的な公的漁獲量管理を強化」すれば回復するのか?

――2020年に施行された改正漁業法では、公的な総漁獲可能量(TAC)管理の強化が打ち出されています。

これまで私たち全漁連が漁業者と主に取り組んできたのは、漁船を大きくしないようにする、漁船のエンジンの馬力を決める、漁具の大きさを決める「インプットコントロール(入口規制)」、針をいくつ使うかを決めるといった漁具に関する規制や出漁する船の数・出漁日数などを制限する「テクニカルコントロール(技術的規制)」をはじめとする自主管理手法です。同時に、漁獲量を制限する「アウトプットコントロール(出口規制)」という公的な総漁獲可能量(TAC)管理を組み合わせて資源管理に努めてきました。こうしたなか、今回の改正漁業法では出口規制の強化に重きが置かれています。

ただ、必ずしも出口規制は沿岸漁業全般に向くとは限りません。なぜなら、大型漁船で特定の魚を追い、大量の水揚げが可能なのは企業型の遠洋や沖合漁業だからです。沿岸は待ちの漁業。季節ごとにやってくる多様な魚種を待ち、家族経営の漁業者が少量ずつ獲っています。今後、TAC対象魚種を拡大する方針が示されていますが、沿岸漁業者にとっては課題が横たわっています。ある特定のTAC対象魚種の漁獲量がTACの割当を超えてしまった場合、定置網漁業など複数の魚種が同時に入網する漁業では、全面的な操業停止に追い込まれる恐れがあるからです。これが「チョーク魚種」。チョークとは「窒息させる」という意味で、文字通り沿岸漁業者の首を絞めかねない問題といえるでしょう。

それでも沿岸漁業者は、従来の自主管理に基づく技術的規制と入口規制を続けながら、自らの課題として、新たなTACに取り組もうとしていますし、また、これまでの自主的な資源管理手法をベースとした資源管理計画を更に発展させ、資源管理協定の策定と実践に取り組むことにしています。ただし、同時に強い不安に駆られているのも事実です。科学的な分析に基づいた漁獲量制限の強化で資源は本当に回復する、豊かな海は戻ってくると確信が持てないくらいに環境が激変しているからです。また、科学的な分析といいますが、その精度も問われます。あえて繰り返しますが、サンマの漁獲量が年間25万トンの時代に資源量は400万トン前後と「科学的」に評価されていました。サンマに限らず、そうした科学と現実の乖離に漁業者は日常的に何度も直面しているのです。
 

撮影/魚本勝之 取材構成/生活クラブ連合会 山田衛




みうら・ひでき

1988年3月東京水産大学卒業後、4月に全国漁業協同組合連合会入会。
1988年5月販売部東京販売事業所、2000年1月販売事業部鮮魚事業推進チーム、2002年4月㈱全漁連フーズに出向、2007年販売・海苔海藻事業部、2008年㈱全漁連フーズ取締役で出向、2010年4月漁政部政策企画室室長、漁政部次長を経て、2014年4月水産物消費拡大対策部部長、2018年4月輸出・直販事業部部長(消費拡大対策室室長兼務)、2019年6月より常務理事となり現在に至る。

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