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生協の食材宅配【生活クラブ】
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でんぷん工場をまん中に、資源はめぐる


 
北海道北東部の小清水町にあるJAこしみずは、ブロッコリーなど青果で提携する生活クラブ連合会の生産者だ。独自の気候を生かして、でんぷん原料用の馬鈴薯(ばれいしょ)、テンサイ、小麦、豆類、青果の輪作を行い、自前のでんぷん工場で出る副産物は、畑地や畜産に利用する。長年地域で研究、開発した独自の資源循環型農業だ。肥料や飼料の海外依存が問題となる今、地域で生み出される資源を無駄なく使うこの方式に改めて注目が集まる。

北の大地の豊かな土


砂糖の原料のテンサイ(右)と緑肥のキカラシ
 
北海道斜里郡にある小清水町は、オホーツク海に面した知床半島のつけ根にあり、畑作と畜産業が盛んな町だ。日照時間が長く、冷涼な気候の中で良質な農産物が生産される。水はけの良い火山性の土で育てられる馬鈴薯や小麦、テンサイは全国でも有数の生産量を誇り、ニンジン、ブロッコリー、アスパラガスなどの青果も生産される。「土は2メートルぐらい深く掘ってもあまり石が出てきません。ゴボウもよく育ちますよ」と、JAこしみずの販売部・青果課長、𠮷田隆さん。恵まれた土壌に加えて、30年以上も前から土づくりに力を入れてきたと言う。

高度成長期には、小清水町でも化学肥料を多投するようになり、生産量も高まったことからそうした農法が一般化していった。だが、やがて畑が痩せ、連作障害に悩まされるようになる。生産者からは、家畜と共に耕作していた頃の豊かな土を取り戻したい、という声が上がった。そこで小清水町とJAこしみずが協同して「土づくり対策推進協議会」を立ち上げる。堆肥や緑肥を使った土づくりをすすめる一方、それまでは臭いが強くて使えなかった家畜の尿を肥料に活用できないか、研究を始めた。

試行錯誤の末、大量の空気を送り込みながら、尿の中で微生物を培養することで、臭いを抑えた液肥をつくることに成功、これが小清水町の耕畜連携による資源循環の取り組みへのスタートとなる。 この液体は、現在、「尿ゆう水」と名付けられ、主に堆肥の熟成を早める目的で使われる。

NKゆう水誕生

小清水町でイモといえば、でんぷん原料用の馬鈴薯だ。でんぷんを多く含む品種で、「片栗粉」の原料となる。同町の農家の作付面積は約1万ヘクタール。そのほぼ5分の1がでんぷん原料用馬鈴薯の畑だ。 

9月に入ると収穫が始まる。毎日千500トンが「小清水町農協澱粉(でんぷん)工場」に運ばれ、次の日までには片栗粉に加工される。これが2カ月半ほど続き、処理される馬鈴薯は9万6千トン。そこから2万トンの片栗粉が生産される。

馬鈴薯をすりつぶし、食物繊維などを除いた搾り汁からでんぷんを取り出すが、残った水溶液はタンパク質やミネラルを含み、独特の臭いを発する。10年ほど前までは、秋にでんぷん工場が稼働する間中、付近の住民はその臭いに悩まされていた。それを解消するため、微生物を含む尿ゆう水を加え臭いをなくそうとしたが、完全に消えることはなかった。

その後、各方面の協力を得て、でんぷんを取り出した後の水溶液に酸を加えて臭いの原因であるタンパク質を凝固させ、遠心分離機で除く方法を考え出した。タンパク質を除去した液体はほとんど臭わなくなり、有機質の窒素やカリウムを豊富に含む。それを「NKゆう水」と名付け、畑に散布する肥料として使うことにした。NとKは、それぞれ窒素とカリウムの元素記号だ。

JAこしみずの販売部長、下山修治さんは、「小清水町の農産物の作付面積を見ても、でんぷん原料用馬鈴薯は重要な作物です。長い間課題だった臭いを解消しようと、みんなで力を合わせてたどり着いたのがNKゆう水です」。熱をかけてタンパク質を除く方法もあるが、熱エネルギーを使わず、コストを抑える方法を選んだ。
 
JAこしみず販売部長の下山修治さん(左)、同販売部・青果課長の𠮷田隆さん(右)と小清水町の農家、津野美奈さん。津野さんはブロッコリーの生産者。「収穫期は同じ畑に何度も入りますよ」

地域の資源は宝もの

「NKゆう水を畑で使うには、もうひと工夫あるのですよ」と𠮷田さん。でんぷん工場でできたNKゆう水は酸を含むため強酸性だ。これを畑で使うにはアルカリで中和する必要がある。カセイソーダは簡単に手に入るが高価だ。そこでまたみんなで知恵を絞った。

小清水町はテンサイの産地でもある。生産されたテンサイは、隣町の斜里町にある製糖工場で砂糖に加工される。純度の高い砂糖を作るためには不純物を石灰に吸着させる必要がある。そこで使われた石灰は、産業廃棄物として処理しなければならないが強アルカリ性だ。これを強酸性のNKゆう水に加えるとゆう水は中和されるうえ、肥料としての成分、カルシウムが増えることになる。
小清水町の農家のほとんどは、でんぷん原料用馬鈴薯、小麦、テンサイ、豆類、ニンジンやブロッコリーなどの青果を順番に栽培する4年サイクルの輪作を行っている。NKゆう水は、8月に小麦を刈った後や、10月に緑肥のキカラシなどを畑にすき込む時に使われる。その量は1年間に4万5千トンにものぼる。「肥料代節約への貢献は大きいですよ」と𠮷田さん。「地元の産物をどんどん生かすことが、一石二鳥にも三鳥にもなっているんです」と、でんぷん工場から出るもうひとつの副産物の利用方法を紹介する。

馬鈴薯をすりつぶして搾った後に残る搾りかすは、1年間に6千トン発生する。そのまま畜産の餌として利用しようとしたことがあるが、水分が多くて牛は食べたがらない。そこで、小麦の製粉の際に出てくるふすまを加え、乳酸発酵させた。そこにNKゆう水を作る時に分離したタンパク質を混ぜ、「でんぷん粕(かす)サイレージ」を作った。畜産農家は良質な餌を安価で手に入れることになる。

小清水町ではでんぷん工場を中心に、地域で生産される資源がちょうどよく循環される。生活クラブの組合員は、同町の青果や片栗粉を利用し、食べる側として耕畜連携循環の中に参加している。
「NKゆう水」の貯留槽。でんぷん工場から出る搾り汁からタンパク質を取り除いているため、ほとんど臭いがない
でんぷん工場の「貯留ビン」。1日に1500トンのでんぷん原料用馬鈴薯(ばれいしょ)が運び込まれる
馬鈴薯の搾りかす。良質な飼料に生まれ変わる

続く挑戦


大豆畑の向こうは、小清水町から眺められる斜里岳

JAこしみずと生活クラブ連合会が提携したのは2002年。ニンジンから始まり、ブロッコリー、アスパラガス、大豆など、取り組み品目を増やしてきた。

はればれ育ちブロッコリーは組合員の利用が多い野菜だ。ただ、1枚の畑で成長がまちまちで、花蕾(からい)が出荷できる大きさに育ったものから順番に、手摘みで収穫するから手間がかかる。同じ畑に1週間から十日間入り、腰を落として茎を切り、消費者の手元に届くまでに花蕾が傷まないように葉を整えなければならない。

小清水町も、ゆるやかではあるが農業人口が減少傾向にある。約1万ヘクタールの耕地面積は変わらないので、1戸当たりの面積が増えている。労力が減り、ブロッコリーのように手間のかかる野菜の栽培面積は減りつつある。

今年、JAこしみずでは冷凍加工を視野に入れたブロッコリーの試験栽培を行い、機械による収穫も試してみた。一斉に収穫するため大小が混じり選別が必要だが、農家には好評だった。「冷凍加工や機械収穫を取り入れながら、需要が多いブロッコリーの作付面積を維持していきたいと考えています」と𠮷田さん。

さまざまな課題を解決するために挑戦を繰り返し、進化しながらの今がある。それはこれからも続くと言う。

撮影/田嶋雅巳
文/本紙・伊澤小枝子

でんぷんの話

肉や魚の唐揚げの衣、酢豚や麻婆(マーボー)豆腐のとろみづけなど、片栗粉を使う料理は多い。本来はユリ科のカタクリの地下茎から作られるでんぷんだが、カタクリが希少になり、現在は馬鈴薯(ばれいしょ)でんぷんが片栗粉として定着している。トウモロコシからはコーンスターチ、サツマイモからは甘藷(かんしょ)でんぷんなど、でんぷんがとれる植物はさまざまあり、栄養面では炭水化物として、大切なエネルギー源となる。

でんぷんはコメやムギにも含まれる。漢字では「澱粉」という字が使われ、水の中に沈殿させて集めた粉、が由来だといわれている。水には溶けないが、水と一緒に熱すると糊化(こか)(アルファー化)して、コメが軟らかく炊け、パンがふっくらと焼きあがる。しかし時間がたつと、ご飯もパンもぼそぼそと硬くなってしまう。でんぷんから水分が抜けてしまうからだ。この「老化」というでんぷんの性質を抑え、食味を良くしたり賞味期限を延ばすために加工したものが、加工でんぷんだ。

冷凍うどんや和菓子、パン類には老化しにくい加工でんぷん、ソースやスープ、レトルト食品には液体の粘度が落ちないもの、ドレッシングやマヨネーズには乳化の役割があるもの、またそれらを使った総菜や菓子など、多様な加工食品の原材料として使われる。これらの活用により、賞味期限が長く、食感の良い、より安価な加工食品が普及するようになった。

加工でんぷんは製法により、3種類に分けられる。ひとつは熱や圧力など物理的な処理をするもの、もうひとつは酸や酵素を使い分解するもの、さらに化学薬品を使い、さまざまな性質を持たせるものだ。以前はこれらの区別はなく、いずれも食品の原材料とされていた。だが、化学的処理をした加工でんぷんについては食品としてのでんぷんとは区別した方がよいことから、2008年、食品衛生法の改定により新たに11種類が食品添加物に指定され、「加工デンプン」「加工でん粉」などと表示されるようになった。1964年にすでに食品添加物として指定されていた1種類を加え、全部で12種類だ。

とはいえ、この12種類についても、製造方法や使う化学薬品、働きはそれぞれに違う。欧州連合(EU)では、そのうちヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンとヒドロキシプロピルデンプンの2種類については、安全性の情報が不足しているとして、乳幼児向け食品には使用禁止しているが、日本では物質名での包材表示はされず、「加工デンプン」として一括表示されている。

生活クラブ連合会では、食品添加物使用について独自の自主基準がある。加工でんぷんについては、使わざるを得ない消費材もあり「許容」とするが、できるだけ別の原材料に切り替えるなどの対策を進めている。ただし、EUで使用が禁止されている2種類については、粉ミルク、離乳食、ベビーフードなど乳幼児向け食品への使用を禁止する。

消費材に、馬鈴薯からでんぷんを取り出しただけの片栗粉「北海道産馬鈴しょ100%片栗粉」がある。小清水町で生産した馬鈴薯を原料に、同町のでんぷん工場で作られる片栗粉が使われる。広大な農村風景の中から生まれる片栗粉だ。
 
撮影/田嶋雅巳
文/本紙・伊澤小枝子
 
『生活と自治』2022年12月号「新連載 ものづくり最前線 いま、生産者は」を転載しました。
 
【2022年12月20日掲載】
 

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