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響き合う、若者おうえんの鐘(カリヨン)

虐待や放置(ネグレクト)、病気など、さまざまな理由で保護者と暮らせず、社会的養護のもとで育つ子どもたちは少なくない。彼らが社会に出て自立していくにはどんな支援が必要なのか。生活クラブ連合会が参画する、民間の支援ネットワーク「首都圏若者サポートネットワーク」では、寄付による助成活動の他、他団体とも連携して法改正に向けた政策提言などにも取り組む。22年6月には、自立支援の年齢制限の撤廃などを反映した改正児童福祉法が国会で可決、24年度施行に向けて、具体的な策定が始まった。今、支援の現場で必要なことは何か。私たちには何ができるのか。

制度のはざまで

庭のカキの木がたわわに実をつけている。国立市(東京都)内の一軒家「カリヨンとびらの家」(以下、とびらの家)は、社会福祉法人「カリヨン子どもセンター」が運営する自立援助ホームだ。さまざまな事情で帰る場所をなくした10代後半の男子が、就労あるいは進学し、自立することを目指して生活している。

カリヨン子どもセンターが全国初の子どもシェルターを開設したのは2004年。当時も現在も、虐待や貧困など過酷な養育環境にある18歳未満の子どもは児童福祉法により保護されることになっているが、公的な一時保護所やマンパワーの不足などから、特にハイティーンの子どもの支援は十分ではなかった。制度のはざまに陥った10代後半の子どもが安心して避難できる場所を確保したいと、子どもの権利擁護に取り組む弁護士、児童福祉関係者、市民の三者が協働しNPO法人「カリヨン子どもセンター」を設立(後に社会福祉法人化)。関係者の熱意と寄付を支えに事業を開始した。

心身を休める短期的な避難場所(シェルター)だけでなく、自立していくための生活の場所(ホーム)も必要との考えから、翌年、開設したのがとびらの家だ。家事やコミュニケーションなどの生活スキルを身に付けられるよう、職員が共に暮らしながらサポートする。高校生や大学生もいれば、すぐに就労して経験を積む子、働きながら進学を目指す子もいる。

自分で選ぶ、決める

「首都圏若者サポートネットワーク」が造成する「若者おうえん基金」は、社会的養護出身者など困難な環境にある若者の自立をサポートする人や団体を対象に助成を行っている。とびらの家は第3回の基金の助成を受け、昨年、大学進学を目指す子どものさまざまな準備費用にこれを充てた。
親が決めた進路以外は許されず、身体的、精神的暴力で勉強を強要することを「教育虐待」と呼ぶことがある。一方で、勉強をしてはいけない、勉強したくても時間や経済的な余裕のない環境で育つ子どももいる。主体性が全く認められない点で、これも虐待だ。そうした環境と決別したいと、自らとびらの家に入居した子どももいる。とびらの家で勉強に目覚め、この9月から海外の大学に通い始めたという。国内の難関大学を目指し予備校に通ううち海外留学を希望するようになり、支援する団体の奨学金給付に自ら応募、合格した。

「私たちは『こうした方がいいのでは?』とは初めからは言いません。本人の意思決定を待ちます。ずっと親から指示されてきた子どもたちですから」と、職員の當麻主光(とうまかずみつ)さん。「入居当初、大人の様子をうかがっていた子どもが、『こうしたい』と自分で言えるようになった。だから私たちも国内大学から海外大学進学へ方向転換しました」と話す。

子どもの考えは状況によって揺れる。若者おうえん基金は、子どもの声に耳を傾け、揺れに寄り添いながらサポートする職員たちの応援にもなる。

當麻主光さん。「ホームの子どもたちとのコミュニケーションは、私自身の勉強になっています」

アフターケアが大事

こうした若者は、自立生活を始めたとしてもすぐに支援を必要としなくなるわけではない。コロナ禍では多くの非正規労働者が、シフトを減らされる、解雇されるなど収入を失い困窮した。特に、社会的養護を離れ自立を目指す若者は、経済的、精神的な大人のサポートがなければ命が脅かされる事態に陥りかねない。自立後のアフターケアは必須だ。こうした状況に対応するため、若者おうえん基金も緊急助成を行った。

とびらの家も退居者のためにこの緊急助成を受けた。當麻さんたちスタッフは物資を送ったり、自治体のサポート申請に付き添うなどを行うが、既存の助成は、家賃や税金、公共料金、生活必需品の購入代金などを対象としない場合が多い。この緊急助成が金銭的援助に役立った。「公的な就学支援は手厚くなり、就労支援も良くなりつつあります。であれば、就労できず苦しんでいる人、自立の手前でもがいている人たちのサポートにももっと光が当たるといい」(當麻さん)

大人に何度も裏切られ孤立した子ども・若者も、人と関わり、ふとしたきっかけで変わることがある。関心を持って関わってほしいと當麻さんは訴える。私たちにまずできることは、社会的養護を離れた子ども・若者、そして彼らをサポートする人たちを、知って大いに話題にすることではないか。一方で、お金はいろいろなことを解決できる道具だ。若者おうえん基金への参加も関わりの一つだ。
 
夕飯の準備を始める當麻さん。食費、水道光熱費を含むホーム寮費は月3万円(就労者のみ)。必要経費以外は貯金をするようにアドバイスする

社会的養護経験者の自立を後押し「若者おうえん基金」

児童養護施設や里親家庭など、「社会的養護」と呼ばれる公的な支援のもとで育った子どもたちの自立をサポートする「若者おうえん基金」。生活クラブ連合会は、この活動をすすめる「首都圏若者サポートネットワーク」の運営に参画し、組合員へカンパ(寄付)を募ることで「若者おうえん基金」を応援しています。社会的養護のもとで育つ子どもたちは、原則として18歳になると施設や家庭を出て自立することが求められます。しかし、大人のサポートなしに自立するには経済面や精神面など多くの壁があり、挫折してしまう若者も少なくありません。

当事者である若者に対して、継続的な支援(伴走型支援)を行う人たちを「伴走者」と呼びます。里親や児童養護施設の職員、自立援助ホームの職員など、伴走者の支援内容は多岐にわたり、既存の制度では対応しきれていないのが実情です。若者おうえん基金は、そうした「伴走者」たちの活動に助成金を給付し、若者たちが信頼できる大人と共に自立に向けて歩む後押しをしています。2021年度生活クラブに寄せられた寄付金は2279万3593円にも上りました。総額は4900万円ほどですので、生活クラブだけで半分近くの寄付が集まったことになります。

また、自立援助ホームなどにいる若者の自立に向けて、東京都のエリアで体験就労の場を提供しています。関連団体が連携し、21年度は生活クラブ東京の配送センターや運動グループで体験就労を受け入れることができました。5日間の体験就労の中で、多くの人が応援していることを感じ、仕事への意欲につながればと考えています。また、受け入れた団体にとっても社会を知ることやさまざまな人たちが共に働くことの学びになるなど成長の機会になっています。22年度はあらたに神奈川県と埼玉県での受け入れを目指した活動が始まりました。

22年度の寄付は11月で終了していますが、来年度以降も継続して行う予定です。引き続き寄付にご協力ください。


生活クラブの仕組みを通じて寄付ができるのは、生活クラブ東京・生活クラブ神奈川・生活クラブ埼玉の組合員です。他の地域の組合員はクラウドファンディングの他、クレジットカード・振り込み等でも寄付が可能です。
★『生活と自治』2022年12月号 「生活クラブ 夢の素描(デッサン)」を転載しました。
 
【2022年12月30日掲載】
 

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