原発推進やGXに関連する4つの文書に対するパブリックコメントを提出
生活クラブは、1986年に起きた「チェルノブイリ原発」事故をきっかけに、生産者と連携し食品における独自の放射能基準を設けて取り組みを行なっている消費生活協同組合です。2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発の事故で深刻な放射能汚染が広がった以降は、提携生産者への支援、市民団体と連携して原発事故被害者救済や脱原発社会をめざす活動を展開しています。
2022年12月に原発のリプレース、運転期間の延長など、4つの原発推進やGX(グリーントランスフォーメーション)に関連する文書のパブリックコメントが募集されました。これに反対するため、生活クラブ連合会は原子力規制委員会、資源エネルギー庁、内閣官房ほか、原子力委員会にパブリックコメントを提出しました。
2022年12月に原発のリプレース、運転期間の延長など、4つの原発推進やGX(グリーントランスフォーメーション)に関連する文書のパブリックコメントが募集されました。これに反対するため、生活クラブ連合会は原子力規制委員会、資源エネルギー庁、内閣官房ほか、原子力委員会にパブリックコメントを提出しました。
原子力規制委員会 殿
2023年1月16日
生活クラブ事業連合生活協同組合連合会 「高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の概要(案)」に反対します。
私たち生活クラブ生活協同組合は、「高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の概要(案)」に断固反対します。 2022年12月21日に、政府の原子力発電所の運転期間について60年を超えて運転できるようにする方針案を巡り、原子力規制委員会が原発の老朽化に対応するための新しい制度案を了承したことは、原発を積極活用する政府方針を追認した形にあたります。 現在、「原則40年、1回に限り20年の延長可能」と規定されている原発の運転期間については福島原発事故の教訓として2012年に与野党合意のもと原子炉等規制法に盛り込まれた最低限の安全規制のはずです。それにも関わらず経済産業省は審査や裁判の判決などで原発が休止している期間を運転期間から除外できるように規定を緩める行為は大きな危険を伴います。運転により原子炉が中性子にさらされる劣化に加え、運転を停止していたとしても、配管、電気ケーブル、ポンプ、弁など原発の各施設・部品は劣化します。過去には配管破断の事故・トラブルも多く発生しています。交換できない部品も多く、電力会社の点検できる範囲も限定的です。また設計が古い事による構造的な欠陥も深刻な事故を引き起こす原因となります。全電源喪失により大事故を起こした福島第一原発の1号機は40年超えの特別な審査を通過したばかりでした。 福島第一原発事故後の2012年に改定された原子炉等規制法の運転期間原則40年ルール導入時の議論によると、細野元環境大臣は「圧力容器の中性子の照射による脆化、様々な機器の耐用年数を考慮して40年を導き出した」、また近藤昭一衆議院議員は「40年運転制限制度は経年劣化に伴う安全上のリスクを低減する観点から重要な制度」と述べました。更に参考人として国会に招致された初代原子力規制委員会委員長の田中俊一氏は「40年運転制限は古い原発の安全性を確保するために必要な制度である」と述べています。こうして与野党合意のもと原子炉等規制法の原発運転期間を原則40年とする規定が盛り込まれたはずです。運転期間の規程を緩める事は当時の国会審議や初代原子力規制委員会委員長の発言とも矛盾しています。また「規制」として導入された制度を、「利用」という立場の経済産業省主導で緩和し、原子力規制委員会がそれを容認するという事は大きな問題です。新たな運転期間の制度は、経済産業省が所管する「電気事業法」に盛り込まれるとみられており、これにより運転期間を認可するのは原子力を利用する立場の経済産業省となります。「規制」が「利用」に従属することになるのではないでしょうか。 高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の概要(案)では、原子力規制委員会は令和2年7月29日に「発電用原子炉施設の利用をどのくらいの期間認めることとするかは、原子力の利用の在り方に関する政策判断にほかならず、原子力規制委員会が意見を述べるべき事柄ではない」との見解を明らかにしているとの事ですが、政策判断ではなく安全性の確保に関わってくることであり、原子力規制委員会は意見を述べるべきです。 福島第一原発の事故は収束しておらず、事故の被害は継続しています。今回の政府の場当たり的な原発推進の方針転換は危険を伴い、本質的な電力需給逼迫の解決にはなりません。原子力規制委員会は厳しい目を向けるべきです。また生活クラブはこれら巨大なリスクを抱える原子力発電は直ちに廃止する事を求めます。2030年までにCO2の大幅削減を進めるためには、計画から運転開始までの期間が短い再生可能エネルギーの拡大とエネルギー利用の効率化をすすめるべきです。 以上
|
資源エネルギー庁 殿
2023年1月16日
生活クラブ事業連合生活協同組合連合会 今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)に反対します
私たち生活クラブ生活協同組合は「原子力への依存を可能な限り低減」としてきた従来のエネルギー基本計画から原発推進に舵をきったと言える「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」に、断固反対します。 原発の運転期間延長に関しては、原子力を推進する立場の経済産業省が、原発の運転延長に関して認可を行うことは、原発事故の教訓を踏まえて議論された「利用と規制の分離」を蔑ろにし、原発事故前の状況に戻ることを意味します。 「次世代革新炉」に関しては、現在、唯一現実的なのは「革新軽水炉」とよばれているものですが、何が「革新」なのかは明らかではなく、従来の軽水炉の延長線上です。放射性廃棄物をはじめとする、現在の原発の問題は基本的に解決できません。「次世代革新炉」開発に国が前面にたつことは、必要性と実現可能性に疑問がある投機的な研究開発に、税金をはじめとした巨大な公的リソースを費やすことになります。「夢の原子炉」と呼ばれ1兆円を超す国税が投じられながら、ほとんど動くことなく廃炉が決まった「もんじゅ」の失敗を思い起こすべきです。 原発を新設すれば、さらに数十年にわたり原発を動かして、解決不能な核のゴミを長期にわたって出し続けることになります。 「プルサーマルの推進」を打ち出していますが、プルサーマルは本来ウラン燃料を燃やすはずの炉で異質な核特性をもつプルトニウムを燃やすもので、通常のウラン燃料よりはるかに危険です。使用済みMOX燃料の熱量は高く、移動できるようになるまでに100年以上、原発敷地内のプールで冷却しなければなりません。また現在日本国内で使用済みMOX燃料を処分できる施設はありません。 「エネルギー供給における自己決定力の確保」をうたい、エネルギー安全保障の観点から原発を推進することを正当化しています。しかし、日本は原発で使うウラン燃料を輸入に頼っています。また、核施設は武力攻撃のターゲットにもなりえます。エネルギー安全保障の観点からも原発はやめるべきです。 原発は、事故やトラブルが頻発する不安定な電源です。ひとたび事故やトラブルが生じて停止すれば、その影響は広範囲に及びます。原発は電力の安定供給上も問題があります。 今回このような重大な政策転換を、原発産業の立場を代弁するような委員が圧倒的な多数を占める経済産業省の審議会(原子力小委員会)で決めてしまったことは大きな問題です。莫大な原発維持のコストを担うのは私たちであり、解決不能な核のごみ問題や原発のリスクやコストを次世代にも負わせるもので、将来に禍根を残します。各地での公聴会などを含む、国民的議論を行うべきです。 以上
|
内閣官房 殿 GX実行推進室 殿 経済産業省 殿 外務省 殿 財務省 殿 環境省 殿 2023年1月16日
生活クラブ事業連合生活協同組合連合会 「GX実現に向けた基本方針」に反対します
私たち生活クラブ生活協同組合は、「GX実現に向けた基本方針」に断固反対します。 「エネルギー安定供給の確保を大前提としたGXに向けた脱炭素の取組」の今後の対応の一つに「原子力の活用」と記載されていますが、「原子力への依存を可能な限り低減」としてきた従来のエネルギー基本計画から舵を切ったと言えます。 GX(グリーントランスフォーメーション)という名称を用いていますが、実際には化石燃料に依存した既存の産業や社会構造を維持するものです。持続可能なエネルギー社会への移行や気候危機への対応ではありません。 水素やアンモニアは現在、海外で化石燃料から生成し輸送してくることが想定されており、「脱炭素」からほど遠いものです。 CSS(炭素回収貯留)については、日本国内で実際に炭素を貯留する適地が少なくコストも高い為、CO2削減手段として期待できるものではありません。回収貯留をあてにし、排出を継続するのではなく、CO2排出自体を抜本的に減らすことを優先すべきです。 カーボンプライシングについては、導入について議論されたものの、多排出産業を中心とした排出量取引制度は2026年度からと、取り組み開始は遅いものです。 アジア諸国の脱炭素化を支援するとして「アジア・ゼロエミッション共同体」の実現が掲げられていますが、化石燃料由来の水素・アンモニア技術やCSS、LNG技術を輸出しようとするもので、むしろ排出を増加させてしまいかねません。 使用済み核燃料の最終処分に関しては、核のゴミを過疎にあえぐ地方自治体に押し付けようとするもので、現地での地域の分断を招く現状に繋がっています。 エネルギー危機への対応は、徹底的な省エネ、そして地域に根差した再生可能エネルギーをできる限り早期に主力とし、化石燃料や原子力と置き換えていくことこそ達成できるのではないでしょうか。既に世界では再生可能エネルギーのコストの低下が進んでいます。日本でも今後さらなる普及と合わせてコスト低下も進めることが必要であり、そこにこそ資源と投資を集中させるべきです。 以上
|
私たち生活クラブ生活協同組合は「原子力利用に関する基本的考え方」の改定に反対します。「エネルギー供給における自己決定力の確保」とし、エネルギー安全保障の観点から原発を推進することを正当化しています。しかし、日本は原発で使用するウラン燃料を輸入に頼っており、ウランを取り巻く国際的な情勢から無縁ではありません。核施設は武力攻撃のターゲットにもなりえます。エネルギー安全保障上も原発はやめるべきです。原発は、事故やトラブルが頻発しており、不安定な電源でもあります。ひとたび事故やトラブルが生じればその影響は広範囲に及びます。原発は電力の安定供給上も問題があります。「安全神話」から決別し、「東電福島第一原発事故の反省と教訓を真摯に学ぶ」とするのであれば、脱原発こそ目指すべきです。ALPS処理水などに関しては科学的に根拠のある情報発信を行っていくべきとしていますが、現在、国は「科学的な情報発信」と称して、巨額の予算を費やして処理水の海洋放出のために宣伝活動を行っています。トリチウム以外の放射性核種が、現在タンクの中にどのくらい残留しているのかなど基本的な情報については明らかにされていません。科学的な情報発信をいうのであれば、まずはそうした情報開示を行うべきです。昨年10月に第6次エネルギー基本計画が閣議決定され2030年、2050年にむけた国のエネルギー政策を決定しています。原子力発電所の新増設やリプレース(建て替え)などは計画に入っていません。「使用済み核燃料」の処理は破綻しており今後の見通しもなく、17基の原子力発電所を再稼働すると途端に「使用済み核燃料」の置き場がなくなります。 また、気温の上昇を一定の量に抑えるためには排出できる二酸化炭素(CO2)の量に限りがあり、産業革命以降の気温上昇を1.5℃に抑えるなら、2050年の排出量ゼロだけでなく、2030年までに大幅に減らさなければなりません。原発の新増設は計画から運転開始まで10年以上かかることから、2030年までの大幅なCO2削減には貢献しません。今回の場当たり的な原発推進の方針転換は危険を伴い、本質的な電力需給逼迫の解決にはなりません。2030年までにCO2の大幅削減を進めるためには、計画から運転開始までの期間が短い再生可能エネルギーの拡大とエネルギー利用の効率化をすすめるべきです。 |
※最後のパブリックコメントは、実施主体が原子力委員会の「原子力利用に関する基本的考え方」についてです。字数制限が1,000字と他のパブリックコメントより少ない為(他3文書のパブリックコメントの字数制限は6,000字)実施主体名、タイトル、日付は記載していません。
【2023年1月20日掲載】