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利用者の生活と「介護の社会化」を守る 介護保険制度の改定を押し戻したい

東京都と神奈川県の生活クラブ運動グループが22年12月に開催した緊急集会には50人以上が参加した

介護事業などを手がけ、地域でのたすけあいの仕組みづくりを進める東京都と神奈川県の生活クラブ運動グループは、2024年に向けた介護保険制度の改定に対し「このままでは介護崩壊を招く」と、22年12月に緊急集会を開催した。改定の問題点や介護の現状、今後の活動について、都内で活動するNPO法人「アビリティクラブたすけあい(東京都中野区)」に聞いた。

食事は生きる基盤

生活クラブ東京の運動グループのNPO法人「アビリティクラブたすけあい(以下、ACT)」は、誰もが住み慣れたまちでいつまでも自分らしく暮らせるよう、地域でたすけあいの仕組みづくりを進めている。ACT会員有志でつくる「たすけあいワーカーズ」は都内各地で介護保険や子育て支援などの事業を行う。

「新型コロナウイルスが流行しだした頃は、介護保険の在宅介護サービスなどの利用控えが見られました。2022年くらいからは利用が戻っています。最近は介護施設を選ぶ人が増えています」と、ACT副理事長の伊藤裕重(ひろえ)さんは話す。

介護保険制度が始まって23年。特別養護老人ホームや介護老人保健施設以外にも、サービス付き高齢者向け住宅やグループホーム、小規模多機能型居宅介護など新たな施設ができた。
居宅介護支援事業としてケアプランづくりを行うNPO法人「ACT・人とまちづくり(東京都東久留米市)」理事長の香丸(こうまる)眞理子さんは「施設の選択肢が増えるのはよいこと」としたうえで、「働きながら介護をする人が多いのですが、コロナ禍でみなさん疲弊しています。介護か仕事をやめるかと追い込まれる介護者もいて、施設を選ぶ人が増えているのでは」と語る。

ACTは生活クラブ東京の組合員内のたすけあいを、地域に広げていこうと1992年に設立された。「いざ地域に出てみると、子育てや障害者、高齢者のケアといった社会的ニーズがたくさんあることを知りました」と、香丸さんは振り返る。ACT設立の目的のひとつには、調理や掃除、洗濯、そして介護といった女性が主に担ってきた家庭内労働の社会化があったという。

住み慣れたまちで暮らせるよう、ACTは介護保険の中でも訪問介護を大切にするが、たすけあいワーカーズの経営は厳しいと伊藤さんは次のように明かす。
「訪問介護には主に身体介護と生活援助があるのですが、大手の事業者の多くは生活援助をほとんど引き受けません。介護報酬が身体介護に比べて約半分だからです。しかしたすけあいワーカーズは、調理や掃除は利用者にとって生きるうえで欠かせない基盤だと考え、事業的には厳しくても生活援助を行っています」
NPO法人「ACT・人とまちづくり」理事長の香丸眞理子さん
NPO法人「ピッピ・親子サポートネット」理事長の若林智子さん
ACT副理事長で、NPO法人「アクト練馬たすけあいワーカーズエプロン(東京都練馬区)」理事長の伊藤裕重さん

調査をもとに緊急要望

2024年の介護保険制度改定に向けて、社会保障審議会介護保険部会の議論が進められている。論点のひとつには「要介護1・2の生活援助サービスの総合事業への移行」がある。総合事業は介護保険制度と違い、自治体が主体となって高齢者を支えていく取り組みだ。この改定が実施されると、介護が必要な人にとっては生活援助を利用できる回数が減るなど不利益が見込まれる。そこで、たすけあいの地域社会づくりを進める生活クラブ運動グループのうち、ACTなど、東京都と神奈川県の8団体が「介護の崩壊をさせない実行委員会」を結成。22年12月には衆議院議員会館で、「大ピンチ!介護保険」と題した緊急集会を開催した。集会には国会議員も参加し、実行委員会からの要望に厚生労働省が回答する場を設けた。

神奈川県横浜市で子育てや介護を支援するNPO法人「ピッピ・親子サポートネット」理事長の若林智子(ともこ)さんは、21年8月に東京都と神奈川県の自治体に実施した総合事業に関するアンケート結果を発表。「総合事業でも住民参加型の訪問型サービスBや通所型サービスBは、担い手不足などを理由に実施できていない自治体が多くあります。地域では受け皿が整っておらず、総合事業をさらに展開できる状況ではありません」と指摘。総合事業への移行に反対を表明した。

香丸さんは、所属する団体が介護事業者を対象に22年1月に行なったケアプラン有料化に対するアンケートをもとに要望した。

事業者は「費用負担が増えると利用控えが起こり、介護の重度化や孤立が進む」「利用者や家族の意向が強まり、過剰なケアプランになる懸念がある」などを理由に、「回答のあった305事業者のうち約7割が反対でした」と述べた。さらに「ケアマネジャーは生活に問題を抱えている人の相談にのり、介護保険に限らず解決に導いています。ソーシャルワークのひとつである相談に利用者負担はそぐわないと考えます」とした。

実行委員会は他に、利用者の原則2割負担への反対、福祉用具のレンタルから販売への変更の見直しを要望したが、厚労省の担当者の回答はいずれも「現在審議中で丁寧に検討を進めていく」と、一様に態度を明確にしなかった。ただ「ケアマネジメントは介護サービスと同じか」との香丸さんの質問に対し、厚労省は「まったく同じとは考えていない」との姿勢を示した。

「介護の家庭化」を阻止

ACTなど実行委員会は、24年の改定で検討されている議論を押し戻し、「介護の社会化」を後退させてはいけないと考えている。

前出の伊藤さんは「万が一、要介護1・2の生活援助が総合事業になっても、生活の基盤を支えるために私たちは事業を行う」と話す。しかし、このままでは介護保険料は支払っても、望む介護サービスがなかったり、費用が高くて介護サービスを受けられない可能性も出てくる。国民の生活を守るために、国が介護にかかる財源を増やすべきと言う。

香丸さんは「誰もがいつかは家族が介護サービスの利用者になったり、自分が利用者になります。今回の改定を機会に介護保険に関心を持ち、一緒に反対してほしい」と話す。

生活クラブ東京は、暮らしを支える社会の仕組みを学ぶ場として「生活クラブの学校」を開催しているが、その中でACTは地域福祉の連続講座を共催する。「ぜひ参加して介護を知ってほしい。そしてできれば、地域でケアを支える人が増えてくれればうれしい」と伊藤さん。

24年に向けた介護保険制度の改定は、介護にかかる費用負担を増大させ、「介護の家庭化」への回帰につながる。介護サービスの利用控えはもちろん、介護離職を防ぐためにも、今回の改定に歯止めをかける必要がある。
 
撮影/笠原修一
文/本紙・橋本 学
★『生活と自治』2023年2月号 「生活クラブ 夢の素描(デッサン)」を転載しました。
 
【2023年2月28日掲載】
 

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