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子どもの甲状腺検査活動・保養活動(2021年度)の報告会を開催


生活クラブでは組合員からのカンパをもとにした「災害復興支援カンパ基金」を通じ、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故(以下、福島第一原発事故)で被災した方々への支援活動を続けています。そのひとつとして、2012年度から生活クラブ独自の甲状腺検査を毎年行なうとともに、保養活動へのサポートも行なっています。

2021年度の活動内容を共有する報告会を、2022年12月17日に開催。新型コロナウイルス感染拡大の影響から、一昨年、昨年に続きオンラインでの開催となり、組合員など83名が参加しました。

震災後から続ける独自の甲状腺検査活動

福島第一原発事故によって放射性物質が拡散されたことから、甲状腺がんの発生が懸念されています。年齢が低いほどかかるリスクが高いとされていますが、医学的にまだわかっていないことが多い状況です。

生活クラブでは、原発事故のときに福島県にいた子どもだけでなく、他地域の子どもにも甲状腺検査を実施しています。福島県は、「甲状腺検査で見つかったがんと、原発事故による被ばくとの関連は認められない」という見解をしめしていますが、生活クラブは「福島の子どもと知る権利を守る活動」として取り組みを継続。福島県と他地域との比較や、全国各地での実態を調査することで、甲状腺がんの早期検診を実現し、ひいては脱原発活動にまでつなげようと活動しています。

2019年度以降、コロナ禍で検査活動が計画通りに進まず、「病院での受診を見送りたい」という人もいました。しかし、希望者の「検査を続けたい」という声にできる限り応えるため、2021年度は17地域の生活クラブで甲状腺検査を実施。331人の子どもが受診し、活動には29ヶ所の医療機関が協力しました。

早期発見のために引き続き検査を

報告会は、生活クラブ連合会の福住洋美連合理事のあいさつから始まり、2021年度の検査活動の報告が行なわれました。報告に続き、生活クラブの甲状腺検査を監修する、社会医療法人 道北勤労者医療協会・ながやま医院院長の松崎道幸医師が講演しました。

福島県と国の甲状腺検査に対する考えは、これまでと変わらず「甲状腺がんによって亡くなるリスクがある人は少なく、基本的に検診は不要。無症状の人たちへの検診は過剰であり、デメリットのほうが大きい」というものです。

松崎医師はその考えに異論を唱え、「自然発生型の甲状腺がんの場合、命への影響は限定的ではあるものの、再発率が高く、早期の診断・治療が必要だという研究事例が増えている」と指摘。再発率が高い人の条件として、男性であること、診断時の年齢が若いこと、診断時の腫瘍が大きいことなどを挙げ、放射線被ばくがある場合はさらにがんの進行が早まる恐れがあることを示しました。

また、被ばく量と甲状腺がん発生率との関連性について、前回の検査から2年以内といった早期にがんが発見される事例が数多く見られることにも言及し、次のように語りました。
「甲状腺がんのようながんの場合、前回の検査から大人なら5年、子どもなら2~3年後にがんを発症するというのがこれまでの医学常識でした。ところが、福島では、被ばく量の多い地域ほど1~2年後に甲状腺がんを発症している子どもが多かったことから、今一度この常識を疑ってみる必要があります。たとえ命への影響は少なくとも、合併症によっての不安を考えると、“検査はしなくてもいい”という議論自体を考え直さなければなりません。被ばくへのリスクを身近に感じている人たちには、継続的にしっかりと検査を行ない、早期発見・治療につなげていくことが大事だと思っています」
社会医療法人 道北勤労者医療協会・ながやま医院院長の松崎道幸医師

これからも実態に即したサポートが必要

続いて、「NPO法人3・11甲状腺がん子ども基金」事務局長の吉田由布子さんによる講演がありました。

当団体は、甲状腺がんと診断された子どもと、その家族を多方面から支える団体です。2016年7月より、療養費給付事業「手のひらサポート」を設置し、福島第一原発事故以降、甲状腺がんと診断された事故当時18歳以下の方のうち、1都15県に居住されていた方に療養費を給付。さらに支援を拡大し、療養費の増額や、手術後の通院交通費助成、妊娠・出産された方へのサポートも実施するなど、給付実績は福島県で129人、県外で65人、合計194人(2022年9月末現在)に広がっています。

福島県では、「県民健康調査」の一環として、事故当時18歳以下だった38万人を対象に甲状腺検査を実施しています。ところが、その検査システムでの不備が明らかになったほか、県の検討委員会では、検査のしすぎを疑う議論がされるなど、甲状腺がんへのリスクを身近に感じている若者たちには逆風となる状況が続いています。吉田さんは、これらを問題であると指摘します。
「検査を受けた人たちにアンケートを行なったところ、『死につながることが少ないからといって検査が過剰と言われるのは心外』『自分の身体の状態を知ることができるため、検査を行なってほしい』といった意見がありました。松崎先生の報告と同様に、私たちの活動でも、若い男性の再発率が高いという傾向が出てきています。彼らへのサポートは、本来、実態に即してきちんと行政が行なっていくべきですが、現状では十分とはいえません。福島県以外もカバーしている生活クラブの甲状腺検査活動は、これからもぜひ続けてほしいです」
NPO法人3・11甲状腺がん子ども基金事務局長の吉田由布子さん

不安や恐怖を共有できるコミュニティーが大切

続いて、「福島ぽかぽかプロジェクト」を展開する、国際NGO団体、FoE Japanの矢野恵理子さんの講演がありました。

このプロジェクトは、福島の子どもたちに野外で思い切り遊んで保養してもらうことと、お母さん方が不安や心配を共有できる場を提供することを目的としています。放射線量の低い福島県猪苗代(いなわしろ)のシェアハウスで年間8~10回開催し、毎年多くの子どもたちが参加。生活クラブは消費材を食材として提供してきました。

2021年度は、コロナ禍の影響により、予定していた活動を中止に。ところが、その間、過去の参加者から「10年前の放射能におびえる日々を思い出して、辛くて夜眠れない」などの声が寄せられたことから、2022年8月、感染対策を行なった上で少人数での保養活動の再開に踏み切りました。

参加者からは、次のようなコメントが寄せられました。
「今はコロナ禍で、全国のみなさんがつらい思いをしていると思いますが、福島の私たちは10年間そんな中にいるのです」
「県外の多くの保養団体が、保養の中止や延期をしました。これを機に辞めてしまう団体があるのではと不安です」
矢野さんは、「福島では、原発事故や放射能に関して、話ができない状況にあります。コロナの影響に関しても同様で、何かあったときに、不安や恐怖を共有できるコミュニティーのある人が、意外に少ないのです」と強調、希望者がいるかぎり、保養を続けていくことが必要であると訴えました。
FoE Japanの矢野恵理子さん

組合員のともに寄り添える関係を絶やさない

生活クラブでは、2011年より各地の生活クラブで集まった復興支援カンパをもとに、福島県や栃木県の組合員の子どもと家族を、保養の目的で招くリフレッシュツアーを開催しています。

コロナ禍の影響で中止していた期間もありますが、受け入れる側として参加した生活クラブ北海道からは、「放射能の恐怖や日常が制限されるなかで、心の安心、身体の安心を感じてほしい」という思いから、安全を最優先にして開催、『北海道でどんなことをしたいか』」といった事前の聞き取りをオンラインで行ないました。

準備を担当した富塚とも子さんは、
「初めは、オンラインでどの程度交流ができるのか不安でしたが、やってみたら意外とスムーズでした。参加者の皆さんは、自分の家で安心した状態で参加されるので、いろんな話をしてくださり、本音でいろいろな話ができたのはよかったです」と発言。「これからも、“安心できるツアー”として、準備を整えていきたい」との思いを語りました。

一方、送り出す側として参加した生活クラブ栃木からは、個人の判断で参加を決めてもらおうと募集を再開し、9組31人が参加したとの報告がありました。

担当した稲井公美さんは、「コロナ禍でのリスクはありつつも、保養を希望する方はいて、10年以上経った今でもニーズはあります。ただ、新規の参加者が少ないことから、近年は新規の組合員への情報の周知が少ないと感じます」と発言。今後、この活動についてどう伝えていくかが課題であることを示唆しました。
 

2023年1月 猪苗代スキー場の鐘撞台で

震災から11年 これからも検査活動と保養活動を続けていきます

最後に福住連合理事より次のように話し、報告会を締めくくりました。

「甲状腺の検査活動報告では、あらためて生活クラブが取り組む価値や大切さを感じましたし、保養活動報告では、不安や恐怖を共有できるコミュニティーの必要性を痛感しました。未来を担う子どもに対して、私たちは何ができるかという視点を大切にしながら、これからの活動につなげていきたいです」

福島第一原発事故から、まだ11年あまりが経過したにすぎません。今後も新たな被害が明らかになる可能性もあります。生活クラブでは引き続き組合員と共に力を合わせ、子どもたちの未来のために検査活動と保養活動を続けていきます。
【2023年2月1日掲載】

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