本文へジャンプする。
本ウェブサイトを利用するには、JavaScriptおよびスタイルシートを有効にする必要があります。
生協の食材宅配【生活クラブ】
国産、無添加、減農薬、
こだわりの安心食材を宅配します。
ここからサイト内共通メニューです。

産地と消費地で補い合い、暮らし続けられる地域をつくる

飼料や原油価格が現在と同じように高騰した2008年頃、生活クラブ連合会は複数の生産者がいる主要産地に対して、飼料や加工食品原料の地域内自給や資源循環ができないかと呼びかけ、これを検討する地域協議会の設置を提案した。こうして結成された四つの地域協議会は今、生活クラブや提携生産者同士はもちろん、行政や地域の団体などとも連携して、将来も生活し生産し続けられる地域を目指し活動を展開している。「ローカルSDGs」、地域循環共生圏の先駆的事例だ。

持続できない産地

生活クラブ運動は、生産者と提携し、直接話し合うことで産地や食べる側の課題を発見し、消費材の共同購入を通じてその解決を目指してきた。

しかし昨今は、気候危機や高齢化の影響で、農産物や水産品など加工原料にもなる第1次産品が取れなくなっている。たとえば梅干しの原料の梅は、冷害で収穫量が減少した。実ったとしても生産者の減少で取る人が少ない。梅干しの生産者である㈲王隠堂(おういんどう)農園の王隠堂誠海(まさみ)さんは「人口が減り地域に学校や病院がなくなれば暮らしていけないので、生産を続けるのはむずかしい」と話す。このままでは将来、和食の基礎的な食材の梅干しの原料を、海外産に頼るという事態になりかねない。

このように消費者と生産者のつながりだけでは解決できない問題が各地で起こっている。生活クラブ連合会利用政策推進部の鵜澤義宏部長は「生活クラブは生産者と地域協議会を設立し、行政や地域のステークホルダー(利害関係者)と連携して、『ローカルSDGs』といえる持続可能な地域づくりに取り組んでいます」と話す。

再エネが新事業を支援

山形県庄内地方は、生活クラブとの提携が50年以上におよぶ生産者が多くいる地域だ。1996年度から米生産者のJA庄内みどり遊佐町共同開発米部会が転作田を活用して飼料用米を栽培し、同地域の豚肉生産者の㈱平田牧場が豚に与えて自給力の向上に取り組んでいる。庄内協議会はこれを発展させ、タンパク質含有量の高い飼料用米作りを進めている。ねらいは二つ。一つは輸入に依存している大豆かすに替えて、飼料用米を家畜のタンパク源にすること。もう一つは飼料用米を水田の転作作物ではなく、正式な作物として確立することだ。品種改良には山形県農業総合研究センターが参加、栽培方法はJA全農の協力を得て今年から試験栽培を行う。

「夏場に肥料を追加するとタンパク値が高まるかをテストで確認します。暑い時期の農作業は大変で、肥料代も高騰しているので、庄内自然エネルギー発電基金の助成を受けました」と鵜澤さん。

庄内自然エネルギー発電基金は、生活クラブや庄内協議会の参加生産者が中心となって山形県遊佐町に設置した「庄内・遊佐太陽光発電所」の収益の一部を、同県酒田市に寄附して造成されたものだ。基金は庄内の持続可能な地域づくりのために活用されている。

行政などと連携して太陽光という資源で発電事業を創出し、生み出された資金で高タンパク飼料用米という新事業を支援する。地域で資源や資金を活用、循環させる庄内協議会の取り組みだ。

また生活クラブと酒田市が連携して進める移住事業に、庄内協議会も積極的に参加している。安心して移住するためには、転居後の生活がイメージできることが鍵となる。庄内協議会の生産者は、移住を希望する人たちに仕事や援農のニーズがあることや、地域の紹介などを行う。今春にも住居と交流施設が完成し、希望する組合員が移住する予定だ。

生産者と出会う企画

昨年、「えのき茸(だけ)茶漬」などの消費材を生産していた長野森林組合が食品加工事業から撤退することになった。製造地の鬼無里(きなさ)地域は長野県北部の山間地にあり、年間を通じた事業は貴重な存在だった。生活クラブや「ぐるっと長野地域協議会(以下、ぐるっと長野)」に参加する生産者は、事業の維持が鬼無里の持続性のためにも必要と考え、2022年8月に新会社「㈱鬼無里の杜」を設立。雇用も継承して消費材を製造している。

また、生活クラブ連合会は防災用飲料水の取り組みをきっかけに、長野県の塩尻市と包括協定を結んでいる。将来的には庄内協議会のような移住事業も視野に入れながら、現在はぐるっと長野と連携して組合員が市内の生産者を訪れたり、歴史や文化にふれるツアーを実施する。

そのほか生産者間の連携としてぐるっと長野では、JA上伊那と鶏卵生産者の会田共同養鶏組合が、高タンパク飼料用米の試験栽培を進めている。
栃木県の生産者が集う「まるごと栃木提携産地協議会(以下、まるごと栃木)」では、「生産者出会いの旅」と銘打った組合員との交流に力を入れている。22年度は1日企画で、生活クラブ栃木と東京の組合員が那須箒根(なすほうきね)酪農協同組合や栃木県開拓農業協同組合を午前に視察。午後は米生産者のJAなすの・どではら会などの生産者とオンラインでつないで交流した。

「オンライン企画には2生協以外の組合員も加わり、100人以上が参加して交流を深められた」と鵜澤さんは成果を語る。
まるごと栃木には農畜産物と牛乳・乳製品、米の生産者、そして冷凍米飯を製造する全国農協食品㈱が参加する。これら生産者が連携して栃木県産の特徴を生かした新たな消費材の検討を行っている。また、まるごと栃木内に自給飼料推進チームを結成し、22年度から子実トウモロコシを生産して家畜に与える活動も始めている。

対等互恵でつながる

奈良県、和歌山県、三重県にまたがる紀伊半島にはミカンなどの生産者がいるが、いずれも山間地帯で、冒頭に紹介した梅干しの生産者、王隠堂さんが指摘したように過疎が深刻な地域課題だ。紀伊半島協議会は地域の主産業である林業者の参加を得て、持続可能な地域づくりに取り組んでいる。

22年度は紀伊半島の実情を組合員に知ってもらおうと、林業の視察や果樹の援農などの交流企画を実施。山間部で水に恵まれている環境を生かした小水力発電の調査を行い、新事業や資金の創出を検討する。

生活クラブは全国21の都道府県で共同購入やたすけあいの活動を行っている。それぞれの地域でも資源循環型の地域づくりを進めているが、活動エリアは都市部が多く、自分たちの地域だけでは食もエネルギーも十分に賄うことができない。他方、前出の四つの地域協議会を設置した地域もまた、作り続けられる地域を目指してさまざまな試みに取り組んでいる。両者が互いに対等な関係でつながり、補完し合うことで共に持続可能となる社会を目指していくことがこの先、ますます重要になるだろう。
 

イラスト/星 雅美
文/本紙・橋本 学
★『生活と自治』2023年3月号 「生活クラブ 夢の素描(デッサン)」を転載しました。
 
【2023年3月30日掲載】
 

生活クラブをはじめませんか?

42万人が選ぶ安心食材の宅配生協です

生活クラブ連合会のSNS公式アカウント
本文ここまで。
ここから共通フッターメニューです。
共通フッターメニューここまで。