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生協の食材宅配【生活クラブ】
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佐賀発、ひんやりスイーツロード


 
短い周期で流行が入れ替わるスイーツ業界。近年、大手コンビニ各社が流行を先読みし安価な洋菓子を次々に開発している。それを可能にするのは合成添加物の力が大きい。「丸きんまんじゅう」は、使わずに済む添加物は使用せず、どこでどう作ったかがわかる原材料を使い、和洋菓子を製造する提携生産者だ。さまざまな工夫と努力で、新たなスイーツとの出会いを求めやすい価格で提供する。

まんじゅうと洋菓子

長崎(長崎市)と小倉(北九州市)をつなぐ全長57里(約228キロメートル)25宿の長崎街道は、江戸時代、西洋や中国との貿易による珍しい品々を九州から日本各地へ運ぶ重要な輸送経路だった。特に当時希少だった砂糖が街道沿いの地域にもたらした影響は大きく、オランダやポルトガル由来の菓子にならって独自に作られ受け継がれてきた銘菓も多い。

シュガーロードとも呼ばれるこの街道沿いで、1950年、丸きんまんじゅうは「マルキン屋の餅饅頭(まんじゅう)」の看板を掲げ和菓子製造を創業した。翌年、自家製こげ蜜を使ったまんじゅうを開発、「丸きんまんじゅう」と銘打ち、以降、着実に販路を広げてきた。包あん機の導入による量産化など、時代に即して設備投資し、83年には冷凍餅、冷凍まんじゅうの開発に成功。その後、自社の冷凍技術を生かして販路を全国に拡大した。

97年、新工場建設を機に冷凍洋生菓子の量産を開始した同社は、ロールケーキ、シュークリームを皮切りに各種の洋菓子製造に注力する。現在、製造品目全体の約6割を洋菓子が占める。

加工デンプンを使わずに

「消費材として初めに作ったカスタードクリームは大失敗でした」。統括部長の下田祐次さんはそう振り返る。生活クラブ連合会との提携は2008年から。正月用の上生菓子の取り組みを働きかけていたところ、撤退した他社に代わってシュークリームとエクレアを製造するよう依頼された。もとの提携生産者が使用していた原材料をそのまま使うよう指定され、カスタードクリームのとろみには遺伝子組み換えでないトウモロコシでん粉(コーンスターチ)を使った。新規デビューしてすぐ、「ボソボソする」とクレームが来た。

トウモロコシや馬鈴薯(ばれいしょ)、サツマイモなど、でん粉はさまざまな植物に含まれている。こうした植物由来のでん粉は水分と一緒に加熱すると分子同士が鎖でつながれたような状態になる。この性質を利用したのが中華料理やクリームのとろみ付けだ。ところがこの鎖は冷凍や解凍によって簡単にほどけてしまう。コーンスターチを使ったカスタードクリームが解凍時にボソボソしたのはこのためだ。

市販品のカスタードクリームには、冷、解凍しても滑らかさを保つよう化学的な処理をした加工デンプンを使用することが多い。食品添加物として認可されている加工デンプンには、でん粉に物理的な処理をしただけのものから化学薬品を使い多様な性質を持たせたものまでいくつかの種類がある。だが、食品表示法では「加工デンプン」と一括に表示され、その製造方法や使用する化学薬品は消費者にはわからない。同社は加工デンプンを使わなくても滑らかさを保つカスタードクリームを完成させようと試行錯誤を繰り返した。

「トウモロコシの次は馬鈴薯でん粉、そして甘藷(かんしょ)でん粉と切り替えましたがまだ納得できず、問屋さんや原料メーカーに聞いて回ってたどり着いたのがコメでん粉。ようやく納得のいくものができました」と下田さん。「苦労はしましたが組合員さんにずっと愛し続けてもらえる消費材になった。ありがたいですね」
ティラミスの製造ライン。たくさんの職人がそれぞれの責任を果たす
 
包材の最終点検
冷凍保管庫からオペレーターが菓子類を移動させる
 
コンピューターで制御する冷凍保管庫の庫内

手作りするように

冷凍設備により量産体制を整えたとはいえ、大手メーカーのように単一品目を大量生産し効率を上げるまでの生産規模ではない。さらに、産地や流通経路が明らかな原材料で多品目を生産する同社では、品目ごとに使用する機械や器具が異なる。独自に改良した機械類も多く、担当の職員が不具合の点検や調整を行う。工場内では、その日製造する品目に合わせて毎日製造ラインを組み立てては片付け、洗浄する。家庭で手作りする菓子と手間は変わらない。何より手作りに近いのは添加物の有無だ。中には使わないと成り立たないものもあるが、使わずに済むものであれば使用しない。消費材の包材に書かれた原材料名はシンプルだ。
いま、大手コンビニが盛んに手ごろな価格のスイーツを開発している。もちもち感やふわふわ感といった食感を出したり、賞味期限を長くしたりと、消費動向を先読みし、安価なスイーツを次々に開発するには添加物が欠かせない。営業課係長の森孝弘さんは、市販のケーキ類に使われる主要な添加物の特性を次のように説明する。

「まず保存料。細菌の増殖を抑える働きがあり、甘みを付ける甘味料として使われることもあります。次に膨張剤。ガスを発生させて生地をふっくらとさせます。中にはアルミを含んでいるものがありますが、表示からはわかりません。そして乳化剤。水と油など混ざりにくいものを均一に混合します。生活クラブでは、こうした添加物の多くを禁止あるいは推奨しないとしているため、その基準を順守しています。簡単ではないけれど、やりがいがありますね」

原材料の仕入れも一苦労だ。書類の作成や保管に不慣れな産地もある。品質管理課長の岡村ゆかりさんは、「どんなに良い原料があっても、生活クラブの基準に合うことを証明する書類がないものは使いません」と話す。
 
営業課の森孝弘係長

自社冷凍保管庫から直送

6年前、敷地内に冷凍保管庫が新設された。この冷凍保管庫から、生活クラブの飯能デリバリーセンター(埼玉県)と関西物流センター(大阪府)に向け、和洋菓子を載せたトラックが走る。コンピューター制御された庫内のレーンから、翌週の発注に合わせて必要な品を必要な数取り出し、トラックの冷凍庫に直接搬入できるようになった。以前は冷凍用の営業倉庫に預けていたため、年間数千万円の保管料がかかっていた。もともと関東、関西の取引先が多く、他社に比べ物流費がかかる。せめて保管料だけでも抑えて、できるだけ手ごろな価格で提供したいとの思いから決断した。

これまで見直せる経費は見直し、さまざまな企業努力をしてきたが、この1~2年の原材料やエネルギーの高騰は収まる気配がない。「鳥インフルエンザも発生し、国産原料が入手できなくなる可能性すらあります。大手物流会社は10%の値上げを公表し、今後他社も追従するでしょう。原料面だけでなくさまざまな課題が出てくるのが23年。自社だけで乗り越えるのは難しい」と森さんはため息をつく。「でも、まだまだ丸きんまんじゅうを知らない組合員の方がいらっしゃると思います。食べたくなるような物語性のあるもの、しかも安心して購入してもらえるものを開発し提供すれば、道は開けると考えています」
世の中の動向を見逃さないよう、森さんは行列ができるスイーツ専門店やデパート、話題のスイーツがあるカフェなど、全国に足を運ぶ。まんじゅう屋の看板を守りつつ、新しい技術、珍しい品を見つけては取り入れる進取の気風は、外国由来の菓子が盛んに作られたシュガーロードの歴史、文化と無縁ではないのかもしれない。

添加物の力に頼らず人気のスイーツに近づける。一過性のブームで終わらず長く愛され続けるスイーツにする。それを共通の目標に掲げ、丸きんまんじゅうのすべての製造工程で新たな試行錯誤が今後も繰り返されていく。
左から、岡村ゆかりさん、森孝弘さん、金村康弘さん、下田祐次さん
撮影/大串祥子
文/本紙・元木知子

いまや希少な自社製あんこ

北海道産の小豆(奥)と粒あん
丸きんまんじゅうは、使用するあんこをすべて自社で製造する。和菓子会社があんこを作るのは当たり前のように思うかもしれない。しかし、実は、全国展開している和菓子会社のほとんどがあんこを自社では作らず、製あん会社から仕入れている。

家庭で小豆を煮るのは決して難しいことではない。ただし時間がかかる。水洗いした小豆を鍋に入れ、水を加えて強火にかけ、沸騰したら湯を入れ替える。再び沸騰したら弱火にし、時折鍋底からかき混ぜる。水を足しながらあくを取り、豆が軟らかくなるまで煮る。砂糖を加え、水分を飛ばしながら煮詰めていけば、自家製あんこの完成だ。ふつふつと小豆の煮える音や香りを楽しむ時間にもなる。
けれど、製あん会社はそうはいかない。一度に大量のあんこを失敗することなく、かつスピーディーに仕上げる必要がある。ここでも添加物が力を発揮する。小豆を短時間で煮るためにはリン酸塩(軟化剤)を投入する。煮沸時の泡を消すのはシリコーン樹脂製剤(消泡剤)だ。だが、商品の原材料名に表示されるのは「あん」であり、そこに使われた添加物は表示されない。どんな製造工程を経たあんこなのか、消費者にはわからないままだ。

リン酸塩もシリコーン樹脂製剤も食品衛生法に基づき食品添加物として使用が認められている。リンはもともと体内にもあり、骨や歯の形成に必要なミネラルだが、リン酸塩を過剰に摂取すればカルシウムや鉄の吸収が阻害され、骨がもろくなるおそれがある。丸きんまんじゅうは、あんこにも添加物を使わない。手間と時間さえ惜しまなければ使わずに済むからだ。毎日、700~800キロの北海道産の小豆を小分けにし、丸一日かけてあんこにしていく。水洗い5分、蒸し煮約60分、煮沸時の泡を水で流し、砂糖を加えて練り上げること40分。手作りを再現した粒あんが仕上がる。手間と時間はあんの種類によって変わる。
使わずに済む添加物は使わない。けれど、中には使わなければ成り立たないものもある。「素精糖のこげ蜜まんじゅう」は、生活クラブで扱う素精糖を使った昔ながらの素朴なまんじゅうだ。素精糖は沖縄県産の粗糖(砂糖の元)の精製を抑え蜜分を残す製法で作られている。ミネラル豊富で風味がよいが、吸湿性が高く、これを使って毎回規格通りのまんじゅうを作るのは難しい。水を加えた素精糖を鍋でじっくり煮詰め、一晩寝かせて米粉と練り合わせる。生地を膨らませるためには重曹が必要だ。生活クラブと話し合い、安全性の高いものを選んでいる。原材料が少ないだけに、製造工程でのちょっとした違いが仕上がりに影響する。「今日は少し焼き具合が良くないわよ!」と、包装ラインのベテラン担当者が指摘することもある。

日本で認められている食品添加物(天然香料、一般飲食物を除く)は831品目。このうち生活クラブが許容する添加物は93品目だ。似たような和洋菓子の市販品と消費材とで、包材に記載された原材料名を比較してみてはどうだろうか。
小豆を煮る機材にも独自の工夫がされている
撮影/大串祥子
文/本紙・元木知子
 
『生活と自治』2023年4月号「新連載 ものづくり最前線 いま、生産者は」を転載しました。
 
【2023年4月20日掲載】
 

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