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生協の食材宅配【生活クラブ】
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土づくり半世紀 お茶は度会から


 
三重県度会町で、50年前、堆肥で土づくりをし、有機質肥料を使う茶の栽培が始まった。生活クラブ連合会が取り組むわたらい茶の生産者は、その栽培方法により、病害虫に抵抗力のある健康な茶の木を育て、この地域に、農薬を使わない茶畑を広げてきた。

茶葉からお茶まで

3月初め、生活クラブ連合会の提携生産者、「新生わたらい茶」の茶畑は、茶の木がきれいに整枝され、根元にはたっぷりの堆肥が施されていた。暖かくなり生えてきた雑草を刈る機械の音が響き、茶の新芽が出るのを待つばかりだ。

茶の生産地は、三重県の伊勢市より西南へ十数キロ入った山間地の度会町と、度会町に隣接する大台町にある。低山に囲まれた平地に茶畑が続き、奈良県との県境にある大台ケ原を源流として伊勢湾に注ぐ宮川が流れる。昼夜の気温の落差が大きい環境にあり、水はけが良い土壌と豊富な地下水が良質な茶葉を育ててきた。朝夕に宮川に発生する霧は茶畑を覆い温度の低下を抑え、茶を霜害から守っている。

茶葉の収穫は1年に数回できる。新生わたらい茶の最初の刈り取りは4月末。田植えが終わる頃から5月にかけて一番茶を刈り取る。その後出てきた新芽を刈り取った茶葉は一番茶刈下(かりした)。2カ月もすると新しい葉が伸び、6月中旬から下旬にかけて二番茶を、さらに夏を越して10月上旬から下旬にかけて秋番茶を刈る。
茶葉は刈り取り後放置すると、含まれる酸化酵素の働きにより発酵が始まるため、すぐに荒茶製造工場へ運び蒸気を当て発酵を止める。その後丁寧にもむ作業を繰り返しながら茶葉を柔らかくし、乾燥させ「荒茶」を作り保存する。

一般には、小売業者などが荒茶を仕入れ、仕上げ加工を加え販売用の製品にする。このとき、産地や品質の異なる茶葉を混ぜ、特徴ある製品に仕上げることが多い。しかし、茶の流通経路は複雑で、消費者が生産過程を確かめる方法はない。

新生わたらい茶は、四つの荒茶工場と、茶葉を生産する60人ほどの生産者のグループで成り立っている。1次加工でできた荒茶は、新生わたらい茶の倉庫へ運び冷凍保管する。その後一年を通して注文に応じ、煎茶、ほうじ茶、番茶、玄米茶などの「仕上げ茶」に加工し出荷する。

代表取締役の山口孝幸さんは、「私たちは、茶の栽培から1次加工の荒茶、2次加工の仕上げ茶の製造、袋詰めまで一貫して行います」と言う。こうして、原料も製造工程も明らかな茶が提供される。
 
新生わたらい茶の代表取締役、山口孝幸さん。
「農薬を使わないですむ、健康で丈夫な茶の木を育てています」
度会町と大台町を流れる宮川。奈良県との県境を源流に、伊勢湾に注ぐ清流だ

土づくりへ

度会町で有機栽培による茶づくりが始められたのは1973年。農業の近代化のもとに、収穫量を上げるため化学肥料を多投していた時代だ。肥料の成分バランスが崩れ茶葉に病害虫が発生しやすくなり、農薬の大量散布も行われていた。一方で、残留農薬による、人体や生態系への影響など、さまざまな問題が現れてきた時期でもあった。

ある時、茶を栽培する農家が、地下水に飲料水の基準を超える窒素化合物が含まれており、その汚染の原因が化学肥料であることを知った。そこで仲間を募り、堆肥を使い土づくりを始めた。最初は3人で始めたが、少しずつ仲間を増やし、農薬散布回数を減らしながら有機栽培の茶畑を広げていった。

堆肥は茨城県や長野県など遠方から運んでいたが、75年、38人に増えていた仲間が共同出資して、県道から1キロメートルほど山あいに入った場所に、240坪の堆肥製造場を建設した。堆肥の原料は近辺のシメジ栽培で使ったおがくずや米ぬかで作る培養土と養鶏場の鶏ふん。いずれも処分に困っていたものを無料で譲ってもらった。

二番茶の刈り取りが終わる頃、堆肥製造場に原料を搬入する。定期的に切り返し、6カ月をかけて約200トンの完熟堆肥を作る。この堆肥を入れた土が、病害虫に抵抗力のある茶を育ててきた。

現在は原料に、三重県志摩市でかつお節を作る山彦鰹(かつお)節の魚の煮がらも加える。有機質肥料には、埼玉県熊谷市の米澤製油の油かすを使う。いずれも生活クラブ連合会の提携生産者だ。
3月、きれいに整枝された茶畑は、新芽の刈り取りを待つばかり
 

健康な茶の木

「病害虫に対して抵抗力を備えるためには、土づくりをして健康な茶の木を育てることが一番大切ですよ」と山口さん。樹勢が強いと、虫がついて食べられてもすぐに新しい芽が出るそうだ。また、夏に二番茶を刈った後、残った茶葉を残らず刈り取り、日光を株の内部まで当てる。それは木を休ませ、勢力を取り戻すためでもある。さらに、草刈りを頻繁に行い風通しを良くし、病害虫をみつけた時は、早急に木を刈り込んだり葉を摘み取り、被害が広がらないようにする。「畑の状況をよく観察する、という平凡な行為が、病害虫から木を守りますよ」。こうして、生き物である茶の木が気持ちよく育つ環境をつくっていると言う。

10年前から従業員であり、営業を担当する前川大介さんは、「作業の中では、夏の草刈りが一番大変です。最近は暑さが異常です」と、環境の変化を感じている。それでも、放っておくと病害虫の発生の原因になり、草刈りは欠かせない作業だ。

新生わたらい茶の営業を担当する前川大介さん。
「病害虫を防ぐためには、草刈りが欠かせません。これから暑くなる季節は雑草との闘いです」

農薬不使用が当たり前

度会町はもともと茶を栽培するための自然条件に恵まれている。そのうえ、長い間農薬を使わなかったため自然の生態系が守られ、カマキリやナナホシテントウムシ、たくさんのクモ類が害虫に対する天敵の役割を果たしている。

「今、環境の変化にそれほど左右されず、農薬を使わないで茶葉を生産できるのは、長年の経験の積み重ねがあり、それができる条件がそろったからです」と山口さん。50年前、堆肥を使う土づくりを始め、2019年に死去した父の壽(ひさし)さんと共に、1995年より茶の栽培に携わってきた。山口さんにとって、農薬不使用、有機栽培は当たり前のことだ。

現在、市場に流通している茶のうち、有機栽培茶が占める割合は5%ほどにすぎない。山口さんはそういった農法で作る茶を、消費者や次の世代の生産者にも伝え、地域で広げていきたいと言う。

茶のうま味は含まれる窒素の量が多いほど増す。化学肥料を使わず、堆肥や有機質肥料を施し健康的に栽培した茶葉を原料とする茶は、うま味よりもさっぱりとした渋味が感じられるのが特徴だ。

急須に茶葉を入れて湯を注ぐ。ふたをしてしばらく蒸らし、湯飲みで香りを楽しみながら淹(い)れた「お茶」を飲む。家庭でも職場でも、会議の場でも当たり前だったこの風景があまり見られなくなった。山口さんは、「茶葉を使うと、淹れ方で香りや味が変わります。それを楽しんでください」と、茶葉で淹れる茶の魅力を語る。そんなゆとりのある時間を大切にしたいと思わせる、新生わたらい茶の茶づくりだ。
堆肥と有機質肥料によって育てられる茶の木。50年以上にわたり、1年に数回、茶葉を収穫することができる
 
山間地につくられた堆肥製造場。シメジの培養土や鶏ふんを材料に、半年をかけて質の良い堆肥が作られる
撮影/田嶋雅巳
文/伊澤小枝子

「お茶」の楽しみ

「夏も近づく八十八夜」と、「茶摘み」の歌にもあるように、節分から数えて88日目に当たる5月初め頃、茶畑では一番茶の収穫が始まる。

その年に最初に出る新芽は柔らかく、冬の間に養分をたっぷり蓄えている。「新生わたらい茶」では、荒茶に加工した後、保管することなくすぐに仕上げ加工をして「新茶」を作る。新茶は一年に一度だけ、独特のさわやかな香りと味を楽しむ茶だ。

季節が進むに従って、一番茶、一番茶刈下、二番茶、秋番茶を刈り取る。それぞれを荒茶に加工し冷凍保管後、発注に応じて仕上げ加工し出荷する。一番茶と二番茶は煎茶に、一番茶刈下は番茶とほうじ茶に加工する。秋番茶は、一番茶刈下より深く煎(い)るほうじ茶と、番茶の原料に。二番茶は、度会町で生産される玄米とともに玄米茶の原料にもなる。

早い時期に収穫する茶葉ほど、うま味成分が多く含まれ、日に当たる時間が長くなるにつれ渋味成分が増え、スッキリした味わいの茶ができる。茶に含まれる渋味成分のカテキンは、血圧調整や血糖値改善の効果があり、抗ウイルス、抗菌の働きがあると知られている。

日本で生産される茶はほとんどが緑茶だが、世界では80%が紅茶で、残りの20%がウーロン茶と緑茶。いずれも原料は、学名をカメリア・シネンシスというツバキ科の「チャノキ」だ。

チャノキの茶葉には酸化酵素が含まれ、刈り取ると酵素が働き発酵が始まる。発酵が進まないように、刈り取り後すぐに熱を加えて酵素の働きを止めるのが緑茶。不発酵茶で、鮮やかな緑色が残る。刈り取り後そのまま酵素を働かせて十分に発酵させる発酵茶が紅茶、ウーロン茶は発酵を途中で止める半発酵茶だ。

チャノキは中国種とアッサム種の2種類がある。中国種は寒さに強く発酵が進みにくい茶葉で、緑茶の原料になる。うま味成分を多く含み渋味が比較的少ない。繊細でさわやかな味わいの茶ができる。一方、熱帯や亜熱帯のインドやスリランカで育つアッサム種は発酵が進みやすく、紅茶やウーロン茶が作られる。渋味や香りが強く、濃厚な風味を持つ。

日本で栽培されているチャノキはほとんどが中国種で、緑茶の原料となる。新生わたらい茶では二番茶を原料に、煎茶の製造工程を工夫し茶葉の酵素を働かせ、「有機和紅茶 ティーバッグ 憩」を作る。渋味が少ないまろやかな味わいだ。

「和紅茶」は、日本で生産される茶葉で作る紅茶のこと。明治時代に政府が奨励し、盛んに生産されたこともあったが、輸入の自由化や、国内で栽培される中国種は紅茶用には向かないなどの理由により、生産は衰退した。それでも製法は農家の間で受け継がれ、味や香りが穏やかな和紅茶として飲まれている。農薬不使用、有機栽培の茶葉で作られる新生わたらい茶の、希少な和紅茶を楽しみたい。
 
撮影/田嶋雅巳
文/伊澤小枝子
 『生活と自治』2023年5月号「新連載 ものづくり最前線 いま、生産者は」を転載しました。
 
【2023年5月20日掲載】
 

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