酪農家を支援する政策提案を農林水産大臣に提出 生活クラブの提携生産者や酪農家とともに、国に酪農家の窮状を伝えました
昨今、気候危機や国際情勢の影響によって飼料費や燃料費が高止まりし、生乳の生産コストがあがっています。また、2015年にバター不足が起き、生乳の増産に国も力を入れてきたものの、コロナ禍によって一転して生乳が余る事態となりました。生活クラブの「パスチャライズド牛乳」の生乳を生産する酪農家も例外ではなく、かつてないほどの危機的な状況に立たされています。
この事態を受け、生活クラブ連合会は2023年4月17日に農林水産省にて、酪農家への支援に向けた政策提案を農林水産大臣に提出。さらに、牛乳や乳製品の提携生産者である新生酪農株式会社や酪農家も参加し、窮状を直接伝えるとともに農林水産省 畜産局の担当者と意見交換をしました。
この事態を受け、生活クラブ連合会は2023年4月17日に農林水産省にて、酪農家への支援に向けた政策提案を農林水産大臣に提出。さらに、牛乳や乳製品の提携生産者である新生酪農株式会社や酪農家も参加し、窮状を直接伝えるとともに農林水産省 畜産局の担当者と意見交換をしました。
酪農業の危機的状況を脱するための政策提案
生活クラブ連合会は2023年4月17日に農林水産大臣に、「食料安全保障を進めるための酪農家への支援に向けた政策提案」を提出しました。これは気候危機や飼料・燃料費の高止まり、牛乳の消費量減少など、酪農業が抱える昨今のさまざまな問題を受け、牛乳や乳製品の生産を続けていくために、緊急的かつ持続的な支援を国に求めるものです。
政策提案の提出には生活クラブ連合会の役職員をはじめ、牛乳や乳製品の提携生産者の新生酪農株式会社や酪農家の南信酪農業協同組合(以下、南信酪農協)組合長の三村誠一さん、農事組合法人新生酪農クラブ(以下、新生酪農クラブ)組合長の大塚優さんも参加しました。
政策提案の提出には生活クラブ連合会の役職員をはじめ、牛乳や乳製品の提携生産者の新生酪農株式会社や酪農家の南信酪農業協同組合(以下、南信酪農協)組合長の三村誠一さん、農事組合法人新生酪農クラブ(以下、新生酪農クラブ)組合長の大塚優さんも参加しました。
右から南信酪農協の三村誠一さん、新生酪農クラブの大塚優さん
国の緊急支援策に対し、酪農の現状にあった支援を求める
農林水産省からは、畜産・酪農経営を緊急的に支援するための対策として「畜産・酪農緊急対策パッケージ」について説明がありました。この緊急対策では、配合飼料(※1)価格の高止まりを受けた期間限定での補填金の交付や、独自に飼料を配合している畜産・酪農家が、主な飼料となるトウモロコシを国内で調達する際の支援金の交付などが盛り込まれています。さらに酪農家への緊急対策として、国産の粗飼料(※2)を利用拡大した場合にも補填金が交付されます。
これに対し南信酪農協の三村さんは、「飼料代を少しでも抑えるために、トウモロコシやふすまなど各自が配合した飼料を、牛のエサ箱に直接手でまいてあたえている酪農家もいます。今回の緊急対策の補填の対象は機械で配合することが前提となっているため、実態とはあっていません。粗飼料については自家栽培そのものに対する補助を検討すべきでは」との指摘を投げかけました。
また、新生酪農クラブの大塚さんからは、「国内で自給できる粗飼料に切り替えたくても、必要な機械がない。また、つくりたくても畑がないという状況です。粗飼料の自給を希望する酪農家と、使用可能な耕作地とのマッチングを期待したいです」との発言がありました。
さらにお二人から、子牛の育成に関わる課題について農林水産省の担当者に説明がありました。三村さんは、「子牛が成長して乳を出すようになるには、約2年の月日がかかります。この子牛の育成にかかる費用にあえいでいる酪農家が多くいます。また、子牛を海外や北海道から導入すると、新たな疾病を持ち込む可能性も考えられます。そのため産まれた雌の子牛をその酪農家の元で育てるという、酪農の基本である自家育成を忠実に守る農家への補助を検討してほしい」と語りました。さらに、大塚さんからは「子牛を育成する費用は生乳を販売した売上げから出していますが赤字となっています。こうした事態を受けて、子牛の育成数を減らす農家が増えていますが、2年後の反動がおそろしいです」との発言がありました。
※1:トウモロコシや大豆かす、大麦などを配合した、牛や豚などの家畜が食べる飼料のこと。飼料メーカーが配合したものを購入する
※2:乾牧草やサイレージ(牧草を乳酸発酵させて貯蔵性を高めたエサ)のこと。草食動物である牛にとっては消化機能を安定させるため、生理的に必須の飼料
これに対し南信酪農協の三村さんは、「飼料代を少しでも抑えるために、トウモロコシやふすまなど各自が配合した飼料を、牛のエサ箱に直接手でまいてあたえている酪農家もいます。今回の緊急対策の補填の対象は機械で配合することが前提となっているため、実態とはあっていません。粗飼料については自家栽培そのものに対する補助を検討すべきでは」との指摘を投げかけました。
また、新生酪農クラブの大塚さんからは、「国内で自給できる粗飼料に切り替えたくても、必要な機械がない。また、つくりたくても畑がないという状況です。粗飼料の自給を希望する酪農家と、使用可能な耕作地とのマッチングを期待したいです」との発言がありました。
さらにお二人から、子牛の育成に関わる課題について農林水産省の担当者に説明がありました。三村さんは、「子牛が成長して乳を出すようになるには、約2年の月日がかかります。この子牛の育成にかかる費用にあえいでいる酪農家が多くいます。また、子牛を海外や北海道から導入すると、新たな疾病を持ち込む可能性も考えられます。そのため産まれた雌の子牛をその酪農家の元で育てるという、酪農の基本である自家育成を忠実に守る農家への補助を検討してほしい」と語りました。さらに、大塚さんからは「子牛を育成する費用は生乳を販売した売上げから出していますが赤字となっています。こうした事態を受けて、子牛の育成数を減らす農家が増えていますが、2年後の反動がおそろしいです」との発言がありました。
※1:トウモロコシや大豆かす、大麦などを配合した、牛や豚などの家畜が食べる飼料のこと。飼料メーカーが配合したものを購入する
※2:乾牧草やサイレージ(牧草を乳酸発酵させて貯蔵性を高めたエサ)のこと。草食動物である牛にとっては消化機能を安定させるため、生理的に必須の飼料
生活クラブのつながりを活かして大切な牛乳を未来につなぐ
生活クラブでは牛乳をはじめ、肉類や米、野菜など、毎日の食卓に欠かせない食材を安定して生産し続けるために、組合員と提携生産者がともに国内自給力の向上をめざしています。
そうした自給力アップをめざす取組みの一つに、米や野菜を育てる農家と、牛豚を育てる畜産農家・酪農家とをつなぐ「耕畜連携」のしくみがあります。たとえば米農家が栽培した飼料用米や飼料用イネを、牛や豚の飼料として畜産農家や酪農家が活用します。その飼料を食べた牛や豚の排せつ物は堆肥にして、再び飼料用の農作物の生産に使うという循環のしくみです。
そうした自給力アップをめざす取組みの一つに、米や野菜を育てる農家と、牛豚を育てる畜産農家・酪農家とをつなぐ「耕畜連携」のしくみがあります。たとえば米農家が栽培した飼料用米や飼料用イネを、牛や豚の飼料として畜産農家や酪農家が活用します。その飼料を食べた牛や豚の排せつ物は堆肥にして、再び飼料用の農作物の生産に使うという循環のしくみです。
このように地域の中で生み出される資源をうまく循環させ、産地とともに持続可能な地域をつくる「ローカルSDGs」を推進し、生活クラブの牛乳を未来へつないでいこうとしています。
【提案の要旨】
食料安全保障を進めるための酪農家への支援に向けた政策提案
1.農家の個別所得保障制度の確立
食料安全保障の視点に基づき、農家の戸別所得保障制度(生産費が販売費を上回った際の差額を補填することや、単価固定方式などの制度)を確立してください。アメリカ農業法で運営されている「酪農利幅補償(Dairy Margin Coverage・DMC)プログラム」など優れた海外のしくみを参考に持続可能な生産が危ぶまれている酪農業については早急な対応が必要です。
2.カレントアクセスの運用見直し
脱脂粉乳の在庫が過剰となっています。カレントアクセス(13.7万トンに及ぶバターや脱脂粉乳などの指定乳製品の輸入量)の運用見直しをすすめるとともに、加工時に発生する脱脂粉乳の保管施設の建設やアフリカなど飢餓が深刻な国々へ輸出できるような製品製造の費用負担をすすめてください。
3.国産粗飼料100%に向けた具体的な支援を
2030年国産粗飼料100%に向けた粗飼料生産の推進、みどりの食料システム戦略の推進に向け耕畜連携への支援を具体化してください。スイスでは、糞尿を堆肥とし土壌に閉じ込めることでCO2排出量が削減できるという研究結果が出ています。
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【2023年5月10日掲載】