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誰もが豊かに生きる関係性を創り出すために ~第6回 生活クラブ 福祉・たすけあい研究交流集会~

3月28日に「第6回 生活クラブ 福祉・たすけあい研究交流集会」をアートホテル日暮里ラングウッド(東京都荒川区)で開催しました(主催:生活クラブ共済連 福祉事業政策推進会議)。生活クラブグループの会員生協の組合員や職員、ワーカーズ・コレクティブのメンバー、福祉団体の役職員など、約300人(オンライン含む)が参加しました。ワーカーズ・コレクティブの意義についてあらためて確認するとともに、誰もが豊かに生きる関係性を創り出すためにできることについて考える良い機会となりました。

基調講演・基調報告に続き、4つの分科会が行われました。全体を通じて、「行き過ぎた利潤追求が貧困格差の拡大、環境破壊など現代社会にもたらした弊害はあまりにも大きい。それに立ち向かい誰もが生きやすい共生社会をめざすために市民が主体となる活動や事業が期待されている。地域に小さな協同を多様につくり出し、事業化してきたワーカーズ・コレクティブの価値に着目することは、協同組合の閉鎖的な共同(共益)を超え、地域に開かれた「共に生きる」(公益)を広げることにつながる」ことなどを学ぶことができました。
以下に、各講師からお話しいただいた内容を要約してお伝えします。

基調講演

生協で培った協同の文化を、もっと社会に拓くために
田中 夏子さん(長野県高齢者生活協同組合理事長、農園Vento e Terra園主、日本協同組合学会元会長)

ワーカーズ・コレクティブは、食や生活に自ら関与する意志を持った生活クラブ生協の組合員がこの精神を引き継ぎ、地域で働き続けられる仕事を生みだしました。お互いの状況に配慮する働き方をつくり出し、社会とつながる中で働くことが困難な人の支援を始め、さらには「共に働く」事業体を発足させました。そこで培った協同労働の理念に基づく働き方は、支援する/支援されるの立場を超え、誰もが働きやすいしくみとなりました。また、介護に携わるワーカーズは介護保険事業に参入するとともに、制度に乗らないニーズに対応し、独自のたすけあいの文化を追求し、自分らしく活躍できる地域コミュニティを育ててきました。しかし、国が進めようとしている「支え合い」は「公助」を細らせながら「共助」に依拠する方向に動いています。それに対抗し、「共益」に留まらない「たすけあい」の関係を存続するには、ワーカーズの自己努力だけではなく、生協や市民の応援が必要です。


田中 夏子さん
 

基調報告

ワーカーズ・コレクティブでまちづくり
藤井 恵里さん(ワーカーズ・コレクティブネットワーク ジャパン代表)

ワーカーズ・コレクティブは全国に30業種・340団体ほどあります。地域のニーズに根差し、問題解決のための事業を、無償労働でも雇用労働でもない働き方を全員参加型で行っています。誰もが暮らしやすいまちづくりと地域貢献をしながら働く取組みである。例えば、たすけあいワーカーズはきたるべき自分たちの老いのために今から必要なサービスを生み出し、誰もが頼れる市民社会にしておこうと事業をつくりだしています。地域の「困りごと」に対応するだけでなく、それを未然に防ぐための事業にも着目した事業も展開します。

ワーカーズは対話を基礎に合意形成しながら働く協働労働が特徴です。民主的な組織運営は時間もかかり面倒なことも多いですが、その「簡単でないからこそ、オモシロイ」がワーカーズの醍醐味です。メンバー一人ひとりに経営的視点が求められ、効率や利益追求の結果で評価するのではなく、事業の目的達成のために何をするかのプロセスを大切にしています。
ワーカーズは「働きがい」が「生きがい」につながる幸せな生き方の選択肢の一つです。地域に多種多様なワーカーズをつくりつながることで、たすけあい・支え合いのある豊かな地域社会を実現します。
 
藤井 恵里さん

分科会

【第1分科会】組合員の資源とワーカーズの事業性をいかして就労支援
岡田 百合子さん(はたらっく・ざま代表、神奈川県座間市)
就労支援の実績をもつワーカーズ・コレクティブ協会が地域の生活クラブと連携した共同企業体として、座間市就労準備支援事業を受託しています。引きこもりなどの相談者は生活する力をつける生活支援プログラムからスタートします。その活動を支えるボランティアの生活クラブ組合員であり、体験就労の場を提供するのは地元の事業所です。誰も断らない就労支援は地域を巻き込んで広がっています。

岡田 百合子さん
【第2分科会】小規模な事業所を身近な地域にたくさんつくりたい
浅川 悦子さん(NPO法人コンチェルティーノ代表、東京都世田谷区)
重度知的障がいのある子どもの働き場を探していた人からの相談がきっかけに、掃除の仕事を通して障がいを持った人が地域で暮らし続けられる働き場をつくりました。対価は障がいの有無にかかわらず同一賃金。働くことで精神的に安定し、対価を得ることで生活が安定し、コミュニケーション力も高まります。カフェ事業やグループホームづくりなどの事業も展開。地域の中に中間的就労の場を増やしていきたいと考えています。

浅川 悦子さん
【第3分科会】地域の子育て支援ワーカーズと協同労働のネットワーク
加藤 智恵さん(NPO法人北海道子育て支援ワーカーズ代表理事)
個々の活動している子育て支援ワーカーズが集まって法人格を取得し、ユニットを組みことで委託・協働事業に取組むことが可能になりました。緊急サポートネットワーク事業は子どもの病気や急な残業などが生じたときに対応します。また、研修やイベント、子育て情報活動も合同で行なっています。一方で、地域に密着した子育て支援は個別に展開し、「この街で子育てしてよかった」の活動を継続しています。
加藤 智恵さん
【第4分科会】産地とつながり、参加する暮らし・まちづくり
伊藤 由理子さん(生活クラブ連合会顧問)
生活クラブは、山形県庄内地方の酒田市と連携して「住まい」と「地域と交流する場」などの機能・施設をつくる「TOCHiTO」プロジェクトを進めてきました。地域のニーズと組合員のニーズをマッチングさせ「産地で暮らす」が実現しました。今後は移住者と地域をつなぐ居場所づくり、仕事づくりを進めていきます。また、庄内自然エネルギー発電基金を活用し、移住者が持続可能な地域社会づくりに参加することが期待されます。
伊藤 由理子さん
【2023年5月12日掲載】

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