「多様性を求める多様な女性たち」インド・デラドゥン市で国際イベント 世界各地から約150名 生活クラブの活動を報告しました
バンダナ・シバさん(中央)
3月初旬、インド北部ヒマラヤ山脈の麓の都市・デラドゥンで「多様性を求める多様な女性たち」の集会をはじめとする一連のイベントが開催されました。
環境活動家のバンダナ・シバさんから生活クラブ連合会が招待を受け、伊藤由理子さん(生活クラブ連合会顧問)と生活クラブ事務局メンバー含め3人がイベントに参加、生活クラブの活動を報告しました。
大地の恵みと生きものの多様性を祝福
集会で発言する伊藤由理子さん
生活クラブは「もう一つのノーベル賞」と言われる「ライト・ライブリフッド賞」を1989年に受賞しました。1993年に同賞を受賞したバンダナ・シバさんは、科学者・哲学者で環境活動家でもあり、その著作や活動が世界的に評価されています。人々の安心なくらしと権利を損ねる環境破壊や食の問題など、シバさんの思想や活動から学ぶことは大きく、同じ「ライト・ライブリフッド賞」の受賞をきっかけに、生活クラブは長年にわたってバンダナ・シバさんと交流、情報交換を続けています。
ライトライブリフッド賞40周年バンコク会議に参加(活動レポート 2020年4月)
今回のイベントの会場は、シバさんが運営する「ナブダニア生物多様性保全農園」です。一連のイベントのなかでも一番の盛り上がりを見せたのが、3月4日に開催された「多様性を求める多様な女性たち」(DWD)による「地球が立ち上がる、女性が立ち上がる、地球を再生し、未来にタネをまく(Earth Rising Women Rising Regenerating the Earth, Seeding the Future)」と題される集会でした。
DWDは、1980年代なかば、グローバル化と自由貿易によって生物多様性や伝統的な食べ物が破壊されることに抵抗する女性たちによって作られたグループで、数年おきに集会を開いています。今年の集会には、インド各地の農村から女性たちが100人以上、海外からの参加者を含め150人ほどが参加し、大地の恵と生きものの多様性を祝福しました。
持ち寄った苗やタネを農園に植えるセレモニーに始まり、インドからの参加者からは農作業の際にみんなで歌う母なる大地への賛歌が披露されました。
参加者からの報告では、メキシコでの遺伝子組み換えトウモロコシ反対運動、コスタリカの海洋生物の多様性を守る取組みなどが報告され、生活クラブからは「消費者と生産者の連帯で遺伝子組み換え食品を排除し、生物多様性を守っています」と報告しました。
多様性を守るためのマニフェストづくりに参加
マニフェストづくりのワークショップ。多様なメンバーで討論
集会に先立つ3月2日~3日、インド国外からの参加者たちを中心に「多様性を守るためのマニフェスト(宣言文)」づくりに取り組み、生活クラブのメンバーは3月3日から作業に加わりました。
「食、環境、健康」「生物多様性と気候」など8つのテーマのワークショップが開かれ、生活クラブは「生物多様性・種子・食と生命の織り成すもの」のチームに参加。FAO(国連食糧農業機関)で働いたナディアさん(Nadia El-Hage Scialabba)が進行役となり、メキシコ、バングラデシュ、インド、オーストラリア、カナダから参加したNGOのリーダーや農家、パン屋など多種多様なメンバーと討論しました。生活クラブは「生物多様性と消費者の責任」という観点から、「消費材10原則」や「2030行動宣言」の内容を報告しました。
こうしてつくられたマニフェストは、3月4日の集会で概要が報告され、おおぜいの参加者で共有されました。その後「環境の日」である6月5日にシバさんの団体がイタリア・ローマで開催した集会でマニフェスト文としてまとめられ披露されました。
『多様性、相互関係、非暴力、ケアを通して地球とともに平和を構築する』と題されたマニフェストの中では、1ページを使って生活クラブの活動が紹介されています。
生活クラブのマニフェスト『多様性、相互関係、非暴力、ケアを通して地球とともに平和を構築する』
いのちを中心に考える社会・経済にむけて
チャルパの村で歓迎を受ける
3月5日には、デラドゥンの近郊、チャルバ村の女性たちと交流しました。チャルバ村では進出してきたコカ・コーラ社の工場が地域の人々の労働力で商品を生産し利益を上げるという経済状況に反対し、村長らのリーダーシップで工場を村から撤退させ、有機農業で自立していく道を選んだ経緯が報告されました。村では換金作物の生産に頼るのではなく、住民自身の自給用の作物の栽培と種子の販売で自立した生計をたてているということです。
バンダナ・シバさん(右から二人目)ら参加者たちと
6月6日、生活クラブ東京本部で組合員含め約20人が集まり報告会が開かれました。訪問メンバーの前田さんが現地の様子をスライドで紹介しながら、一連のイベントやナブダニア農園での暮らし、農園にある種子銀行などについて報告しました。またバンダナ・シバさんらが提唱する「エコフェミニズム」と生活クラブの理念との共通点についても解説し、国を超えた人々の交流の意義を再確認できました。
*エコフェミニズム:「女性の抑圧と環境破壊には関連がある」と考える思想・運動。自然や人間のつながりを壊し、すべての価値を「市場価値」に還元することで起こる暴力・破壊に対して問題提起し、価値の中心に「いのち」をおいて考える必要があると考える。バンダナ・シバさんはエコフェミニズムの思潮を開拓した先導的な思想家として広く知られています。
【2023年7月14日掲載】