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「ALL北海道びん循環システム」を実現 札幌市内4者が連携、生活クラブ北海道のしょうゆびんリユース

左から生活クラブ北海道の消費委員会担当理事の泉屋めぐみさん、同じく高橋諒子さん、石黒真理さん、サステイナブル委員会担当理事の伊藤弘子さん。これまでは利用中心の声かけだった消費委員会メンバーが「びんも返してね」と使ったあとのことも口にするようになった。委員会を越えた連携が生まれている
 

「リサイクルするからいいよね」。そう思って手軽にペットボトル入り飲料を購入する人は意外に多い。だがリサイクルには、分別、仕分けの他、いったん原料に戻してから製品化する工程が必要だ。その手間とエネルギーは膨大で、回収して洗うだけのリユースとは比べものにならない。生活クラブ連合会は、30年以上前から調味料や飲料の容器を数種類のびんに統一し、回収して繰り返し使うシステムを確立してきた。生活クラブ北海道も、本州とびんのやりとりをしながら共にこれを実践するが、昨年新たなしょうゆ生産者と提携したのをきっかけに、札幌市内で完結する独自のびんリユースを開始した。

苦渋の選択、ペット容器

発端は2021年7月、これまで提携していたしょうゆ生産者から設備の故障で生産継続が困難になったとの報告を受けたことだった。苦労の末、北海道産の大豆や小麦を使い原料から仕込む、札幌市内の生産者、福山醸造株式会社を探し当てた。だが容器はペット素材。生活クラブ連合会が定める自主基準で、防災用品以外への使用が禁止されているものだった。

「理事会は大激論でした」と消費委員会担当理事の高橋諒子さん。それでも暮らしに欠かせないしょうゆの供給を途絶えさせないことを優先、自主基準を一時的に緩和しびんへの切り替えを要請したと言う。苦渋の選択だったが、同じく消費委員会担当理事の泉屋めぐみさんは「福山醸造さんは切り替えを決断、準備を始めてくれました。移行までの間という約束だったから決断できたこと」と話す。

決めたからには、確実に利用することで生活クラブへの信頼を高め、容器の切り替えを促していこうと、消費委員会は活動を開始した。びんの登場に期待を込め、新たなラベルのデザイン案を三つ用意し、組合員の投票でこれを決め、オンラインでの学習会も重ねた。

こうして「自分たちのしょうゆ」をつくっていこうという機運は高まり、22年11月、500ミリリットルびんでの供給が始まった。

将来を見据えた決断

びんでの製造とそのリユースについて、福山醸造の事業部長、茂又忠通さんの第一印象は「相当にハードルが高い」というものだった。それでも明治時代から地元に続く老舗の業者だ。ものづくり会社としての自負があった。ちょうどその頃、国連の持続可能な開発目標、SDGsにどう取り組むか話し合っていた時期でもあった。

「具体的に何から始めたらよいのかを模索していたところに、びんリユースの話をいただいた」と茂又さん。生活クラブとの交流を通し、その活動や姿勢に触れ、社内で議論を重ねる中「チャレンジしてみよう」と社員の意見が一致していったと言う。「将来を見据えた時、地元とつながり環境を重視することは、会社にとって大きなチャンスになる」との思いが茂又さんの原動力となった。

しかし、同社はびんでの製造を30年以上前にやめていた。設備もなければノウハウもない。一社だけではとても無理と、地域のつてをたどり数社に相談したところ、市内の酒造会社、日本清酒株式会社がびんの洗浄を検討してくれることになった。これが「実現に向け大きくかじを切る契機になった」と茂又さん。ペット容器で供給を始める一方、洗びん実験を重ね、新たな設備投資もして準備した。「この助走期間があったから実現できた」と振り返る。
 
福山醸造株式会社の事業部長、茂又忠通さん。福山醸造は1891年創業、今年で132年を迎える。社内には、明治時代の製造器具や当時の写真などが展示されている

地域で共に考える仕組み

生活クラブ、日本清酒、福山醸造、3者の間のびんの運搬を担ったのが、市内の有限会社、ひがしリサイクルサービスだ。生活クラブ北海道とは立ち上げの頃からのつきあいで、今も消費材のリユースびんを回収してコンテナに詰め、本州に送る役割を担っている。生活クラブ北海道・事業推進課長の多田健介さんは「ひがしさんがいなければ今回の取り組みは、実現できなかった」と信頼を寄せる。

ごみの問題が社会の注目を集めるようになった1990年代に設立された同社は、多様な業務を担いながら、この間のごみ問題の推移を現場で見てきた。代表取締役の山本富美夫さんは「洗って繰り返しびんを使う習慣は、昔からの日本の優れた文化。それなのに、容器包装リサイクル法施行以降はリサイクルが中心になりこの30年で激減してしまった」と振り返る。それに伴い、びん問屋や洗びん工場も減った。現在札幌には、数カ所しか洗びん工場がない。山本さんは今回のしょうゆびんリユース実現を「ギリギリのタイミングだったのではないか」と見る。「資源を循環させるには、その地域にどんな機能があるかが重要。そもそも、製造の段階からどう使い処理するか、全体を見通して製品をつくらなければ難しい」と山本さん。今回の取り組みは、地域に残っている機能をうまく生かし、利用者が製造業者に働きかけて、製造段階から組み立てたからこそ実現できたこと、と評価する。
 
ひがしリサイクルサービスの代表取締役、山本富美夫さん。「このびんは何回も使うことを想定し、丈夫につくってある良いびん。丁寧に扱えばより長く使えますよ」

びんはみんなのもの

「災い転じて福となす」。前出の高橋さんは、この間の活動をそう表現する。「最初はペット容器だったけれど、結果として本州に送らず、地域内で循環させる仕組みができました」。いくらリユースとはいえ、遠くに運べば二酸化炭素の排出量も大きくなる。市内で完結させることでより環境負荷の少ない仕組みとなった。何より「最初から100点満点の物を探すのではなく、情報公開してくれる生産者と提携し学び合いながら問題を解決していくのが生活クラブの原点」と高橋さん。今回の活動を通し、委員会の枠を超えてみんなでこれを体験、その意義を実感したことは大きいと言う。
とはいえ、リユースびんが円滑に循環するかは、今後の回収率にかかっている。洗びん、運搬の単位は3000本。不足すれば新びん購入も必要になる。常時80%以上の回収ができなければ、国から自主回収業者と認定されず再製品化のための費用を支払う義務も課せられる。回収率がコスト、価格に直結する仕組みだ。「今はぎりぎり。なんとか調整しています」と多田さん。組合員活動と事務局が連携し、回収の呼びかけを徹底していくと言う。

先日はサステイナブル委員会が「返してね、シール」を作成した。配達するびんのキャップに貼り返却を促していく予定だ。「中身は自分のものだけど、びんはみんなのもの」と担当理事の伊藤弘子さんは言葉に力を込める。誰もが返却の仕方をわかるように、動画も制作中だ。サステイナブル委員会メンバーの熱演は見ものだと言う。

自らつくった新たなシステムを育てていこうと、委員会それぞれが意欲的な活動を計画している。
「返してね、シール」はびんのキャップ一つ一つに貼り付ける予定。福山醸造が生産する焼肉のたれ、ポン酢、めんつゆも、しょうゆと同じ容器に統一。使い回ししやすく、製造や在庫管理の効率もアップする
撮影/工藤 了
文/本紙・宮下 睦
★『生活と自治』2023年7月号 「生活クラブ 夢の素描(デッサン)」を転載しました。
 
【2023年7月30日掲載】
 

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